近江八幡市立総合医療センターのPFI契約解除後の課題



近江八幡市立総合医療センターのPFI契約解除後の課題 
直営化による経営改善計画も、外部の専門家を交えるなど綿密なチェックが必要ではないか。当初の収支計画は市長の諮問機関から「どんぶり勘定」と批判された。近江商人の街でどんぶり勘定の繰り返しは許されない。』          
     
 

取材ノートから 八幡支局 北島寛之 病院PFI契約解除 失敗原因 徹底究明を 
2009.01.20京都新聞   
  
近江八幡市立総合医療センターのPFI(民間資金活用による社会資本整備)契約解除に、市と同センターを運営する特別目的会社(SPC)が昨年末、合意した。PFI解約は破たんした例を除き全国初だが、SPCが市からの補償金額をめぐり全面譲歩する代わりに、市はPFIやSPCの非を問わない条件をのんだ。しかし、PFIが失敗に終わった原因の検証を妨げるような合意内容には、疑問が残る。 

 市とSPCは合意により交渉経過を明らかにしていないが、SPCは補償金として六十五億円を提示したといわれる。市は二十億円が限度と主張し、結局、市の提示額で合意に至った。合意書には「解約はSPCが市の財政的事情を勘案して合意した」「SPCやPFI事業に起因するものではないことを相互に確認する」「市とSPCは、それぞれ一切の誹謗(ひぼう)中傷と不利益になる行為をしない」との文言が盛り込まれた。 

 同センターと市財政の破たんを避けるため解約を急いだ市と、PFIのイメージ悪化を恐れるSPCの妥協の産物だろう。しかし、合意内容は、市が公平な立場で事態を検証するのが難しくなったことを意味する。冨士谷英正市長は「名を捨てて実を取った」と説明するが、調印前日の市議会総務委員会で合意内容を批判された正木仙治郎副市長は「市には選択の余地がない」と弁明するしかなかった。 

 市はもともと、PFI契約自体に問題があるとして解約を主張してきた。市病院事業管理者職務代理者の槙系院長は昨年六月の市議会で「今のPFI契約は現実に沿っていない」と答弁、PFI契約とSPCへの失望をあらわにしていた。 

 同センターのPFIが失敗した原因について、外部の専門家も多くの問題点を指摘している。 

▽経営状態を問わずSPCの収益が確保される仕組みにより、民間活力を引き出せなかった 

▽サービス向上に欠かせないモニタリング体制を、市は整備しなかった 

▽低利の公債を使わず、SPCを通して整備運営費全額を調達したため、金利負担が重くなった-などだ。 

市が第一の原因に挙げる収支見通しの甘さによる経営悪化以外にも、検証すべきことは多い。 

 冨士谷市長は「内部で分析し、総括を三月定例市議会で報告したい」と述べている。PFIを採用した川端五兵衛前市政の見通しの甘さだけに責任を押し付け、PFIを生かし切れなかった冨士谷市政とSPCの努力不足を不問にするような総括であってはならない。 

失敗の原因をあいまいにしたままでは、二十億円の支出に市民の理解は得られない。問題の本質に踏み込む検証が不可欠だ。 

 同センターの直営化による経営改善計画も、外部の専門家を交えるなど綿密なチェックが必要ではないか。当初の収支計画は市長の諮問機関から「どんぶり勘定」と批判された。近江商人の街でどんぶり勘定の繰り返しは許されない。 

 きたじま・ひろゆき 2000年入社。彦根支局、ニュース編集部、京田辺支局を経て、08年5月から八幡支局勤務。近江八幡市政などを取材している。