医療法人の本質」について 厚労省官僚の論理や事実認識の矛盾点を鋭く指摘した「官の詭弁学」日本経済新聞出版社刊から抜粋して4回に分けて紹介します。

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「医療法人の本質」について 厚労省官僚の論理や事実認識の矛盾点を鋭く指摘した「官の詭弁学」日本経済新聞出版社刊から抜粋して4回に分けて紹介します。 

著者である 福井秀夫政策学院大学教授からご献本いただきました。 過去政府規制改革会議委員として 今回の事業仕分けと同様の厳しい追求には脱帽です 
福井秀夫教授は行政刷新会議 分科会評価員でブラックボックスをこじ開ける先頭に立って 会議をリードしてくださいました・・・・ 

(第1回)(二〇〇二年十月二日総合規制改革会議特区WGでの議事概要より) 
患者本位の治療は医療法人と個人開業医のみなしうるのか・・・「である」論理と「する」論理福井秀夫政策学院大学教授 

日本の医療法人の約七割は赤字財政であり、毎年数十件の病院が倒産している。 
また病院施設や医療設備の近代化が困難であることが医療の質を向上させる上での障害となっている。 
この点は、医療法人という仕組みが持つ資本調達の制約によるところが大きい。 
民間病院の大部分は、「持分のある医療法人」によって占められているが、これは出資者の持分が保全される法人形態であって、寄付行為に基づく非営利社会福祉法人などと異なって、税法上の扱いも営利事業者と同じである。 

また、医療法人への個人出資分が相続税課税対象となるため、出資者の高齢化に伴い、医療法人に対する出資分の返還をめぐる紛争も生じている。 
これでは経営の安定など成り立たない。 
本来、巨額の資本を必要とする医療機関が、零細な個人企業と同様の法人形態を取っており、不動産を担保とした銀行借入に全面的に依存せざるを得ないという現在の医療法人の仕組みは、日本の医療を合理化・近代化していく上での大きな制約となっている。 

現在の医療法人については、病院規模の大小を問わず、個人の出資額いかんにかかわらず、一人一議決権という仕組みとなっている。 
また株式会社は、医療法人に出資することはできても、社員となることはできない旨の厚労省による規制が存在する。 
このような規制を残したままでは、医療法人の経営近代化は絶望的であり、資金調達や設備更新をより容易にするような経営方式への転換が求められている。 

具体的には、健全な医療法人による経営の悪化した医療法人への出資を容認すること、医療法人の社員の議決権は出資額に応じて配分すること、株式会社を含め、あらゆる出資者が社員となることを認めることなどである。 

このような方向を推し進めた典型的な法人形態が、株式会社形態である。 
医療法人の株式会社化の意味は、このような資本調達の容易化、経営近代化という文脈で理解しなければならない。 
ところが厚労省や日本医師会は、株式会社のような形態で経営近代化を図ることは、過剰診療や金持ち優遇になるとして、断固反対している。以下にその言い分を検証してみよう。 

福井秀夫専門委員(著者)  
従業員主体の病院は会社支配で従業員のためだから真面目にやるのでよいと言いたいようだが、そうでない病院はどれで、その病院でどれだけ弊害があったか調べていただいたら一目瞭然ではないか。 
それを今日の時点で把握しているか。 

榮畑潤厚生労働省医政局総務課長 
数年前のデータはあるが、直近では整理して調べないとない。 
福井専門委員 
今このタイミングで医療分野に株式会社を参入させるかどうか、正に国政上の大きな争点として議論をしている時に、サンプルとして数年前のがあったかもしれないとか、あるいは一般診療がどれ位かわからないというような、そういうあやふやな事実認識のもとに株式会社はけしからんというのは、あまりに恥ずかしい主張だと思わないか。 
榮畑課長 
現在の六十八病院の評価の話もあるが、一方で医療機関を経営することを主目的とした株式会社の参入の是非を議論している。その企業の主目的は違うところであるものと同じ 
座標軸で……。 
福井専門委員 
そうはおっしゃっていなかった。株式会社という組織自体が利潤最大化だからダメだということを一貫しておっしゃっていた。 
株式会社であるにもかかわらず支障がない病院がほとんどだというのなら、それは経緯を持ち出したり、従業員との関係を持ち出したりするのはそもそもおかしい。 
百歩譲ったとしても、これらの病院がどのくらい従業員を診療しているのか分ってから主張するのが、政策論議の出発点でないか。 

八代尚宏主査((社)日本経済研究センター理事長) 
今の医療法人は利潤最大化して患者無視の医療を全くしていないか。 
現にある医療法人はグループを作って正に企業と同じことをしている医療法人もある。 
また、医療ミスなどを起こして患者の利益を犠牲にしているような医療法人もたくさんあるわけだが、株式会社、医療法人を含めての違いにかかわらず、そういう点をチェックしなければいけないということについてはどう考えるか。 
榮畑課長 
確かにいろいろな医療事故がある。安全対策を講じてきているところであり、カを入れているところであり、株式会社、医療法人についても当然同じである。企業は最大収益を 
目指すものであり、医療法人とは原理が違う。 
福井専門委員 
個人開業医は収益を追求してはいけないのか。 
榮畑課長  
当然個々の医者の倫理に従って行われるべき。 
福井専門委員 
倫理に沿って行われるのは当たり前であって、個人開業医ができるだけお金持ちになりたいとか、できるだけはやるようになりたい、したいというマインドを持ってはいないというのか。 
榮畑課長 
マインドではなく、基本的な原理原則の問題である。 
福井専門委員 
株式会社は利潤最大化するのが問題というから、では個人開業医は利潤最大化しないのかという単純な質問である。 
榮畑課長 
過剰診療など不当な利潤を追求した場合は処分を受ける。 
福井専門委員 
それは当然のこと。それは株式会社であってもそうでなくても処分を受けること。 
そうではなくて正当な利潤追求でも患者を害するというので、だったら個人開業医とはどう違うのかということが全く分らない。 
榮畑課長 
処分の対象になるかならないかは大きな違いである。 
八代主査 
処分の対象とすればよい。