どうする高機能病院/総務省有識者懇座長・長氏に聞く/「国に判断を仰げ」/派遣アドバイザー活用も



『どうする高機能病院/総務省有識者懇座長・長氏に聞く/「国に判断を仰げ」/派遣アドバイザー活用も』 

2009.01.24長崎新聞社 
  
  総務省の公立病院改革ガイドラインの策定で有識者懇談会の座長を務めた長隆氏(67)が二十三日、東京都内で本紙のインタビューに応じた。新長崎市立病院と日赤長崎原爆病院の統合問題の論議について、「病院の再編・ネットワーク化の行司役(調整役)となるべき県が自ら相撲を取っている構図はおかしい。国に判断を仰ぎ地元の利害関係者を除いた有識者に検討させるのが望ましい」との見解を示した。

 統合問題は、一昨年十二月の総務省によるガイドラインの公表を受け、県と長崎大が長崎市に新市立病院と原爆病院を統合して高機能病院を建設するよう要望。市は職員でプロジェクトチームを発足させ、県側の計画と、新市立病院建設計画の検証を進めており、その結果が近く示される見通し。 

 長氏は「市が自らの計画を自己評価しても客観性は担保されない」とも指摘。総務省がガイドラインの「Q&A」に改革プラン策定時のアドバイザー派遣に「極力対応したい」と明記していることを挙げ、「県、市、長崎大が総務省、厚生労働省、文部科学省に有識者や医療関係者の派遣を求め、指定されたメンバーに検討させてはどうか」と提言した。 

 その場合、地元の利害関係者の意見は聴取するが、客観性を担保するため検討メンバーから外すという。長氏は「二月から検討に入り三月末までに病院設置者の市長に答申する。それを基に市長が最終判断し、それには誰も異議を唱えないと決めればよい」と話した。 



対論/どうする高機能病院/高比良元県議(56)・改革21/野口健司県議(45)・自民・県民会議
2009.01.25長崎新聞  
  

 長崎市は市民病院の現在地に市成人病センターを統合して新市立病院を建設する計画について、医師や病床を増やすグレードアップ案を市議会に示した。県と長崎大は長崎原爆病院を含む3病院の統合を提案しているが、おひざ元の県議会でも賛否が分かれ、今のところ市が県案を採用する可能性は低いとみられている。新病院問題を論議してきた県議会厚生環境委員会の委員に考えを聞いた。(報道部・徳永英彦)


◆高比良元県議(56)・改革21/県案は市への責任転嫁/修正での対応が現実的 

 -県案の問題点は。 

 県民、市民に高度医療を提供する高機能病院を開設する、医師をはじめとする医療資源を確保するため魅力ある病院をつくる-という総論においては賛成。だが▽建設場所は長崎駅裏▽指定管理者で運営▽三病院の統合-という「三点セット」の提案では、市が受け入れられない。 

 市は利用者にとって最適と判断して現地建て替えを選択した。また、公立病院改革が必要との認識で二病院統合を決めたのに、県はそれが三病院でなければならない理由を説明していない。市案、県案は病院規模の違いはあるだろうが、長崎地域医療圏の中核病院であることに変わりはない。県は枠組みだけを示し、それを実現するための条件整備については市に責任を押しつけている。 

 
-具体的には。 

 三病院を統合した場合、百人の看護師が余って解雇される恐れがあり、残った看護師も給与水準は日赤並みに下がる。看護師数と給与は「市の実質的財政負担がゼロとなる」とする県提案の前提条件だが、これを実行するかどうかは指定管理者となる日赤と市が協議することとして、県は責任を回避している。 

 
-新病院の規模については、市自ら県案の方が望ましいと認めている。 

 ひとつの病院だけが優れていても地域医療は確立できない。民間病院、大学を含めた役割分担を明確化し、相互に連携することが必要。県と大学がその調整役を果たすべきだが、現在は何もしていない。 

 市は与えられた条件、経緯において現計画をまとめた。二〇一三年度開業の期限が迫る中で、それを抜本的に見直せというのは無理。計画の枠組みにおいて県案の方が望み高いものだとしても、現実的に優れているとはいえない。 

 
-市のグレードアップ案では医師を約百人確保するとしているが、その根拠は示されていない。 

 より多くの医師を確保するのが望ましいが、絶対に百人必要ということではない。市単独で不可能なら県、長崎大が加勢すべきだ。 

 県案においても、医師の数はともかく、当初から高機能医療を担う技術力の高い医師を集められるとの保証はない。また、医師不足対策としての研修医確保が県提案の主な目的だが、研修医を不足する地域に配置できるのかについて、県は「病院の手腕と医師の自由意思」としか言わない。数を確保すれば自然に地域に流れていくだろうとの見込み、期待でしかない。 


 -問題の打開策は。 

 県の提案をきっかけに、市に現計画を改善しなければならないとの意識が生まれたのは良いこと。市が主体的に市民ニーズに応えようとしているのだから、県と長崎大は市の計画を検証し、足りない部分を補ってやることが時間が限られている中での現実的な対応だ。 

 
-仮に計画が破綻(はたん)した場合、市が責任を問われることにならないか。 

 市の計画でいくのなら、県の提案の意味を市が体現できるかが問われるだろう。 

◆野口健司県議(45)・自民・県民会議/医療の現状認識すべし/市長の政治決断に期待 

 
-県案を全面的に支持する理由は。 

 まず、医療の現状を認識すべきだ。国民医療費の増加に伴い、国民の保険料負担も増している。一方、各自治体の国保財政は危機的状況で、本県では二〇〇一年度から赤字が続き、長崎市では赤字を補てんする基金が底をついた。高齢化や医療の高度化に対処するには、医療機関の適正配置、効率的運用が不可欠だ。 

 長崎市における人口十万人当たりの医師数、一般病院数、病床数はいずれも全国平均を大幅に上回っている。このため病院間で患者の奪い合いが生じ、空き病床を抱えて経営難に陥るばかりでなく、一次医療から三次医療までを円滑につなぐ医療機関の連携に支障をきたしている。 

 
-市の事業に県が口を出すべきでないとの指摘をはじめ、市医師会など各方面から批判がある。 

 県は医療法に基づき県内の医療体制を確保するための計画を定め、その責任を負う。離島・へき地の医師確保を含め、一人でも多くの患者により良い医療を提供するために効果的な病院の機能や配置を考えるのは当然。 

 三病院統合で病床が三百五十減ることが問題視されるが、その患者はすべて周辺の病院に吸収されるので経営上はプラス。私の知る医師は全員が県案支持なのに、なぜ市医師会がこぞって反対なのか理解できない。 

 県案では、白血病や心筋梗塞(こうそく)など被爆特定疾患はこれまで以上に優れた専門医療が受けられる。現在の原爆病院は耐震性が低く、耐用年数も残り十年ほどしかないが、将来的に被爆者が減少する中で、建て替えは容易ではない。 

 市南部地区の住民は現在より少々不便にはなるが、電停から無料シャトルバスを運行するなどにより交通アクセスの確保は可能。 

 市医療関係職員の給与は国の公立病院改革ガイドラインを受けて本年度引き下げられたが、それまでは全国平均より大幅に高く、健全経営に向けた不断の努力をしてきたのか疑問。市案は今後も一般会計からの繰り入れを予定しており、市の実質財政負担がゼロとなる県案と比較して市民の理解が得られるだろうか。 


 -県案は大村市の国立病院機構長崎医療センターをモデルとしている。 

 センターには救命救急とそれを支えるすべての診療科が配置され、住民に安心を与えている。たとえば周産期医療だと産婦人科だけでなく、未熟児の場合は小児科、骨折している場合は外科の対応が必要だが、常時その態勢が整っている。 

 旧大村市立病院は似たような機能、規模の周辺病院に埋没し、経営難に陥った。長崎市民病院がそうならないとはいえない。新病院でそれが回避できるというなら、新臨床研修制度の下で、長崎市が独自に約百人もの医師をどう確保するのか具体的に示すべきだ。 

 
-県案が採用される可能性は低いとみられるが。 

 最終的には田上市長が自らの責任で政治決断すること。レベルの高い指導者として英断を期待したい 


公立病院:市民・原爆病院統合 市、現在地に通常型--「新市立」見直し案 /長崎 
2009.01.23毎日新聞 )  
  

◇田上市長が最終判断 

長崎市の新市立市民病院と日赤長崎原爆病院の統合問題で、市病院局は22日、現在地で通常型の救命救急センターの設置を盛り込んだ新市立病院見直し案を市議会厚生委員会で報告した。市のプロジェクトチームはこの案に加え、市の前計画案、県案の計3案を検証し、問題点などを田上富久・同市長に報告。その上で市長が最終判断する。見直し案提案で同局は改めて現地建て替えを主張した形だが、病院統合を求める県は、経営や医師確保の面から「かなり困難な案」と受け止めている。【下原知広、宮下正己】 

 ◇県「かなり困難」 

 見直し案は昨年10月末から同局が検討。国からの「救命救急センターの設置が望ましい」との指摘や、臨床研修指定病院として国が病床数500以上を条件として検討し始めていることなどを踏まえて最終的にまとめた。 

 新たな案では、病床数506床、医師数142人(研修医含む)で、医師5人以上を配置する通常型の救命救急センターを整備する。 

 この日の委員会では、採算面や医師確保について委員から疑問が上がったが、同局は「患者1人当たりの1日平均入院単価を前計画より4000円増やし、病床数も増加させるなどして採算面では安定している。都会に出る学生を確実に確保したい」と話した。 

 一方、県は、長崎市の見直し案では病院経営が成り立たないと分析。救命救急や小児救急の医師教育など不採算部門も抱えるため、500床では規模が小さく赤字経営に陥る可能性が高いとしている。また高度医療を支える医師を市独自で確保するのは困難との見方だ。