民主党政権の新しい試みとして賛否両論に評価が分かれる行政刷新会議



医療仕分け人が語る、事業仕分けの裏側 
長 隆(東日本税理士法人代表社員)日経メディカル オンライン2009. 12. 4 


民主党政権の新しい試みとして賛否両論に評価が分かれる行政刷新会議。 
医療に関しても、薬価や診療報酬の引き下げなどを結論付け、日本医師会や中央社会保険医療協議会をもあわてさせた。 
今回、厚生労働も担当する第2グループで仕分けを行った、長隆氏に話を聞いた。(編集部) 

私は政府の行政刷新会議の仕分け人を委嘱され、厚生労働省の所管事業を担当する第2ワーキンググループで作業を行った。 
評価員の内示を受けたのは10月25日。私は民主党との関係が強いわけではない。 
唯一の接点は、今年5月27日に「医療再生議員懇談会」という民主党の勉強会に呼ばれ、その場で公立病院の経営の問題点についてレクチャーしたことくらいだ。 
その場に現在行政刷新担当大臣の仙石由人氏もおられ、「しかるべきときには力を貸してほしい」と言われてはいた。 

今回、仕分け対象として挙げられた事項は、民主党と財務省から示されたもので、われわれが考えたものではない。 
取り上げた項目を問題視する声もあるが、私自身も時間があればすべての予算項目について考えていくべきだと思う。 
「類似のものは同様に切り込んでいく」とされているものの、今回の仕分けでさえ、関連するステークホルダーがそれぞれ自分たちの正当性を主張している。 
まして類似性を訴えて作業を進めようとしても、簡単にはいかないだろう。ただ、来年度予算を年内に成立させるためには、今からすべての項目を洗い出すのは不可能だ。 
また、最終的に予算を取りまとめるのが財務省である以上、財務省がある程度主導権を握るのも仕方がない。 
今できる範囲としては十分評価できるのではないか。 
少なくとも国民に審議過程を公開したことは大きな意味があったはずだ。 
また、多くの方が誤解されているようだが、仕分け作業の議論がすべて1時間で行われたわけではない。 
われわれは10月30日から内閣府に集まり、関係各省に連続してヒアリングを行っていたし、問題点はあらかじめ各省庁に伝えてあった。 


参議院議員の蓮舫氏が声を荒らげる場面が何度もテレビに写された。 
私も何度か声を荒らげる場面があった。 
これは、あらかじめ質問内容を示していたにもかかわらず、質問に対して明確な答えが返ってこないことがあったためだ。 
「公開処刑のようだった」という批判は認めるし、決を採る行為の是非は、正直なところ分からない。 
だが、素人が予め投げていた質問に答えられないことに「恥を知れ」と思うのは当然のことではないだろうか。 


“プロ集団”中医協は何をしてきたのか? 
「素人が何をいう」「中央社会保険医療協議会(中医協)を無視しており、ルール違反だ」との意見もあっ 
た。 
われわれは確かに医療の素人だ。 
だが、プロの集団のはずの中医協はこれまで何をしてきたか。 
中医協は汚職で逮捕者まで出した。 
だからこそ、その後の中医協では国民の目線に立って抜本的な医療の改革を行い、位置付けが変わったことを示す必要があったのではないか。 
だが、あいもかわらず再診料1点のような話に終始してきた。 
それをどのように言い訳するのか。 
もちろん、われわれには医療技術は分からない。 
その点については、専門家が正々堂々と意見を発信していけばいい。 
われわれはただ国民にも分かる話を、公開の場で取り上げただけだ。中医協の委員が「何の権利があって、このような話をするのだ」というならば、中医協は厚生労働大臣の諮問機関にすぎない。 
行政刷新会議の評価員(仕分け人)は内閣総理大臣から委嘱され、閣議で了承された人事だと反論したい。 

われわれは今回、多くの国民が苦しむ中で毎年1兆円以上の利益を上げ、開発に対して税務上の優遇もある製薬会社に、メスを入れた。 
15年の特許が切れた医薬品について半額にすべきとた。 
医療費の1/3を占める薬剤費を大幅に減額するという、中医協が遠慮してできなかったことに切り込んだことを評価してほしい。 
仕分けの翌日、関連する企業の株価が10%近く下落したと報道されていたが、それだけのことを中医協はしてきたのか。専門家は、程度には差があれ、配慮すべき相手がでてくる。 
族議員による圧力もあっただろう。今回の仕分けでは、それらのしがらみをすべて排除できたのだ。 

診療報酬の引き下げに関して私は反対したものの、財務省に押し切られた点もあることは認めざるを得ない。 
日本の医療制度は技術料が著しく低い。仮に病院と診療所の再診料の11点の差を、病院の点数を引き上げる形で埋め合わせたとしても500億円の予算で済む。 
財務省にとって長年の懸案だった医薬品と医療材料の「聖域」に切り込むことができたことを考えると、最終的には再診料引き下げにまでは口を出さないのではないだろうかと思っている。 

仕分け結果と異なる予算措置となる場合は、国民が納得できる説明責任が果たされるべきである。 
来年度以降も事業仕訳は国民の期待に添って早ければ4月ごろから再開されるようである。 

(聞き手:山崎大作=日経メディカル オンライン)