レセプトのオンライン請求義務化



レセプトのオンライン請求義務化 

義務化撤回訴訟 原告団の幹事長、入澤彰仁さん(神奈川県保険医協会副理事長)は、「訴訟の目的は義務化を止めること」と述べる一方で、「時代の流れとして、オンライン化は避けられない・・・・ 



レセプトオンライン請求に関する省令改正及び告示(案)について  厚生労働省保険局総務課保険システム高度化推進室(平成21年10月) 
1 趣旨 
(1)請求省令の改正 
平成23 年度から原則オンライン化するという方針は維持しつつも、小規模・高齢などの理由によりオンライン請求が困難である医療機関、薬局に対し配慮する観点から、請求省令(※1)を改正し、オンライン請求義務化の例外措置等を定めるもの。 
(2)告示の制定 
本年5月の省令改正(※2)により、オンライン義務化期限を猶予されている医療機関等について、具体的な義務化期限を、厚生労働大臣告示(※3)により定めるもの。 

※1:療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令(昭和51 年厚生省令第36 号) 

※2:療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令(平成21 年厚生労働省令第110 号) 

※3:療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令附則第4条第2項に規定する厚生労働大臣が定める日を定める告示(案)(仮称) 

2 告示及び改正省令の概要 
(1)療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令案の概要 

① レセプト件数が少なく、かつ手書きで診療報酬請求を行う医療機関・薬局について、オンライン請求義務を免除する。 

※ 医科医療機関・薬局は年間3600 件以下、歯科医療機関は年間2000 件以下のものについて義務化免除。 

【第4条(療養の給付費等の請求の特例)を新設】 
<理由> 
レセプト件数が少ない保険医療機関等は、継続的に費用対効果が見合わないものであると考えられるため。 



保険薬局におけるレセプト請求のオンライン化(2009年10月14日 山梨県薬剤師会) 

平成21年5月請求分より義務化とされていますが(レセコンがない場合を除く)、同期限までに対応できない施設についても引き続き費用請求できるよう、緊急に関係省令が一部改正され、義務化期限の猶予措置が講じられています。 
また、同措置につきましては、その実態を調査・把握した上で、半年以内を目途に期限を設定するとの方針が示されていたところです。 
 今般、その時期を告示するとともに、関係省令を一部改正し、オンライン請求の義務化の例外措置を設けることとなり、パブリックコメントの募集が開始されました。 
  
このうち、調剤については、 

①レセコンがなく(すなわち、手書き)、かつ、レセプト件数が年間3,600 件以下の薬局はオンライン請求の義務を免除、 

②常勤の薬剤師がすべて65歳以上の薬局はオンライン請求の義務を免除、 

③義務化期限が猶予された薬局のうち、レセプト件数が年間1,200 件以下の施設はリース期間等の終了時(最大、平成22年度末)までオンライン請求の義務を猶予、 

④オンライン請求が困難な場合の個別事情を明確化(電気通信回線設備の機能障害、レセコン業者や通信設備業者による納入・工事等の対応遅れ、改築工事中のため仮施設での営業、概ね1年以内の廃止・休止計画ほか)、 

⑤猶予措置期限を平成21年11月30日と定めること(猶予措置の終了。すなわち、同12月調剤分、翌年1月請求分からオンライン請求の実施義務)-などが示されています。 
 意見募集の期限は平成21年10月23日(金)とされています 



レセプトオンライン化には「太陽政策」を 
医療介護CBニュース(11月7日) 
入澤彰仁さん(神奈川県保険医協会副理事長) 
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02g.html 

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495090172&OBJCD=100495&GROUP= 

 レセプトのオンライン請求義務化をめぐり、神奈川県保険医協会の会員らが結成した原告団が今年1月、義務化撤回を求め横浜地裁に提訴した。 
原告団の幹事長、入澤彰仁さん(神奈川県保険医協会副理事長)は、「目的は義務化を止めること」と述べる一方で、「時代の流れとして、オンライン化は避けられない」と言う。 
それでも、高齢の医師らが廃業しないためには「原則化」にして、請求方法を選べるようにすべきと主張する入澤さんは、オンライン化を進めるには童話「北風と太陽」の北風のような強制力ではなく、医師自らがオンライン請求にしたくなる状況をつくる「太陽政策」が必要と考えている。(高崎慎也) 

■目的は義務化を止めること 

-レセプトのオンライン請求義務化の撤回を求める訴訟までの経緯を教えてください。 
 厚生労働省は2006年4月に省令を改正して、11年4月以降のオンライン請求義務化を決めました。 
最初はこの省令改正が何を意味するのか分かりませんでしたが、吟味するうちに、大変なことだと分かりました。 
神奈川県保険医協会が06年8月に会員5000人以上に実施したアンケートでは、12.3%が「義務化が決定するなら廃院する」としました。 
また、京都府保険医協会が60歳以上の開業医を対象にしたアンケートでは、3割以上が「辞めて引退する」と答えました。 
 これを受けて07年3月に厚労省と交渉を行ったところ、「オンライン請求でなければ診療報酬を支払わない」との回答を得ました。 
この時からわたしたちは訴訟を念頭に置いて、医療訴訟に詳しい弁護士や、民主党などの国会議員と質疑を重ねてきました。 
 横浜地裁に提訴したのは今年1月です。 
これは画期的な裁判だと思います。 
これまでの医療訴訟では、医療ミスなどで患者側が医療機関を訴えるケースが圧倒的に多く、医者が原告になるとしても、診療報酬の支払いをめぐって国保連合会や診療報酬支払基金との間で訴訟を起こすものでした。 
医師が全国から1000人規模で集まり、国を相手に政策をめぐって訴訟を起こすのは、初めてのことです。 
 どこを相手に、何に関する訴訟にするかはよく話し合いました。 
最も確実なのは、オンライン請求義務化後に、紙レセプトで請求して支払いを拒否された医療機関が、損害賠償を求めること。 
しかしこれでは、義務化そのものを変えることはできません。 
われわれの目的は、あくまでも義務化を止めること。 
弁護士と相談して、「法改正ではなく省令改正で定めた義務化には、従う義務がない」ことを証明するための訴訟にしました。 

―オンライン請求の義務化には、どのような問題がありますか。 
 一つは、高齢の医師が廃業すること。 
もう一つは、患者の個人情報の漏えいがあります。 
国は、個人情報が漏えいした場合の責任は医療機関にあるとしています。 
紙レセプトが郵送中に紛失しても医療機関の責任ですが、紙レセプトの場合は万が一紛失しても回収できます。 
オンラインの場合は回収できないし、一瞬で全世界に広がります。 
原告の一人に糖尿病の患者を診ている先生がいるのですが、県外から政治家が来ることがあるそうです。 
近くの医療機関を受診して持病が発覚することで、政治活動に不利になる恐れがあるからです。 
オンライン請求で、こうした患者のプライバシーを本当に守れるのでしょうか。 

■オンライン請求でなければIT化していないのか 

―厚労省はオンライン請求のメリットの一つに、「事務手続きの簡略化」を挙げています。 
 1000床以上ある大病院では、紙レセプトでは段ボール何十箱にもなるので、事務効率は非常に良くなると思います。 
原告団の幹事長としては言いにくいのですが、うち(入澤クリニック)でも紙レセプトが月1200-1300枚にもなりますので、フロッピーで送っています。 
 ただし、わたしは一度紙に印刷して確認しています。1300枚のレセプトを確認するには4時間ほどかかるのですが、これだけの時間、コンピューターの画面を見続けるのはつらいものがあります

。ほとんどの医療機関では、一度紙に印刷していると思います。 
ならば、紙をそのまま段ボールで送った方がよい。オンライン請求では二度手間になります。 
 また透析医療機関では、決まった患者が週3回来るだけなので、レセプト枚数は非常に少ない。 
こうした医療機関がオンライン化するメリットはないと思います。 

―厚労省は今年10月に、年間レセプト件数が3600件以下(歯科は2000件以下)で、手書きで請求している医療機関・薬局と、常勤の医師、歯科医師、薬剤師がすべて65歳以上の診療所・薬局(オンライン請求に対応可能なケースを除く)の義務化の猶予を検討する省令改正案を公表しました。 
 年齢は毎年1歳ずつ増えていくからいいですが、枚数で線を引くのは不可能だと思います。同じ医療機関でも、ある年は3600枚で、ある年は3599枚ということもあり得ます。 

―厚労省はまた、オンライン化により医療の IT化が進み、より高度な医療が提供できるとしています。 
  
「IT化が遅れている分野の一つが医療だ」との声もありますが、医療のIT化は進んでいます。 
わたしは心臓血管外科ですが、冠動脈のCTの撮影では、以前は脚から心臓の方に管を入れて、レントゲンを見ながら造影剤を通していましたが、今では注射を一本打てば撮影できます。 
MRI(磁気共鳴画像装置)は、一瞬にして脳全体の血管の状態が分かるようになりました。 
請求がオンラインで行われなければ、IT化していないことになるのでしょうか。 
請求書がオンラインでなければ受け付けない業界が、ほかにありますか。 

■10年もすれば状況は変わるはず 

―入澤先生は一貫して、「義務化」ではなく「原則化」にすることを要望しています。 
 わたしは神奈川県保険医協会での仕事上、新たに開業する医師によく会うのですが、ほとんどがレセプトコンピューター(レセコン)を導入し、オンラインで請求しています。 
厚労省は「11年までに義務化」としていますが、焦る必要がどこにあるのでしょう。 
高齢の医師が引退して、新規に開業する医師が増えれば、自然と請求はオンライン化します。10年もすれば状況は変わるはずです。 
  わたしたちはIT化を否定しているわけではありません。 
時代の流れとして、オンライン化は避けられないでしょう。 
問題は、「義務化」にすることです。 
義務化にして、高齢の医師を早期引退に追い込む必要があるでしょうか。 
各医療機関の規模によってオンライン、紙レセプトなど請求方法を選べるようにすべきだと思います。 
  
韓国では、レセプトの9割がオンラインです。 
これは政策として「オンラインにすれば、請求から支払いまでを早める」としたからです。 
わたしはよく童話「北風と太陽」の例え話をしますが、請求をオンラインにしたいのならば強制力ではなく、みんながオンライン請求にしたくなる状況をつくる「太陽政策」が必要だと思います。