職員大量離職の恐れ 「公務員のまま」希望 横須賀市民病院公設民営化 /神奈川県


職員大量離職の恐れ 「公務員のまま」希望 横須賀市民病院公設民営化 /神奈川県 
2009.11.08  朝日新聞  

 来年4月に指定管理者制度に移行する横須賀市立市民病院が職員の進路選択で揺れている。市を退職し法人職員として病院に継続勤務するのでなく、市職員のまま病院を離れ他部署を希望する職員が多いためだ。特に看護職は70人前後が病院を離れる意向で、移行後の病院運営に影響する恐れがある。(川上裕央) 


 5日の市立病院運営委員会。委員の1人が「70人もの看護師を本当に集められるのか」と問い詰めた。担当者が「苦しいです」と答え切る前に、「苦しいどころじゃない。不可能でしょ。出発から設計図を変えないといけない」とたたみかけた。職員減に伴う診療科や病床数の削減を心配する声も相次いだ。 

 市立病院は医師不足による患者の減少などで慢性赤字で、市財政を圧迫する。市は直営から指定管理者制度による公設民営への移行が望ましいと判断。2月議会で条例改正案が可決され、指定管理者に社団法人「地域医療振興協会」(東京都)が決まった。 

 しかし、移行後の給与や勤務条件に不安を覚える職員が少なくない。特に50代のベテラン職員は給与が大幅に下がる見通しだ。市は給与の減額分の補償を検討しているが、9月の調査で、退職し同協会職員となって引き続き病院で働く意向を示したのは看護職約240人中170人、医療技術職70人中30人にとどまる。残り110人は市職員として病院外の職場に移るか、もしくは退職を選んだ。 

 特に看護職は現状でも十分な数ではなく、70人規模で減れば医療体制に支障が出る。担当部署は「一人でも多く病院に残ってもらうのが市の務め」と継続勤務を呼びかける。同協会も新たに職員を採用して補う考えだ。 

 病院を離れる職員は関係部署の看護職として勤務するか、任用替え試験を受け事務職などに移るかに分かれる。市は職場説明会を3日間に分けて開き、窓口サービスや医療・福祉関係の仕事内容をビデオで紹介したが、人事課の担当者はその場で「医療の経験や知識が生かせる職場には限りがある」と説明した。 

 市職員にとどまる職員について、一部に「専門の仕事より公務員の立場を選ぶのか」との批判もあるが、市職員労働組合の森田洋郎書記長は「看護職員は現状でも疲弊している。指定管理者制度への移行で将来の見通しに不安がある中で、相当数が新たな仕事にチャレンジするのはやむを得ない」と弁護する。 

 こうした揺らぎの影響を最も受けるのは患者たち。泌尿器科に通院する男性(81)は「看護師が減ったらどうなるんだろうと心配。民間になって医療が維持できないくらいなら、従前通りの方がいい」と話した。