厳しい経営状況が続く広島県JA府中総合病院。市立病院との統合案が浮上している



厳しい経営状況が続く広島県JA府中総合病院。市立病院との統合案が浮上している 
 広島県府中市では、以前から赤字体質だった市立府中北市民病院(上下町)の常勤医が08、09年度で2人減り、6人に。累積赤字は6億5千万円に上る。旧府中市域の中核的医療機関であるJA府中総合病院(鵜飼町)も00年度に21人いた常勤医が12人に減っている。 


視点2009 府中市の「病院共同体」構想 合意形成が最大の課題 
2009.10.26中国新聞   
  
統合・独法化や機能分担 関係者の反発も 

府中市は、市と近隣の新たな医療体制の構築に乗り出す。官民の枠組みを超えて病院間で連携、医療制度の課題解消に挑む異例の内容だ。地域医療再生のモデルケースになる期待も大きいが、実現には多くの課題も想定される。まずは関係者との合意形成が最初で最大の関門となる。(松本恭治) 

 府中市が目指す新医療体制の柱は、地域の公立、民間病院でつくる「共同体」という考え方にある。伊藤吉和市長は「2012年春から順次、新たな体制に移行させたい」ともくろむ。 


地域全体での医療 

 共同体は府中地区医師会圏域の府中市、福山市新市、芦田、駅家町と、隣接する神石高原町の医療機関を想定し、参画を促す。それぞれで医療機能を分担し、限られた人材を共同で確保・活用。地域全体で効率的な医療を提供する。 

 医師や看護師を安定的に確保する受け皿として「地域医療人材センター(仮称)」を新設。大学などと連携して広域性を生かした実地研修を展開、都市部に流出してきた若手医師を取り込む。 

 こうした方針は、市健康地域づくり審議会(会長・寺岡暉社会医療法人社団陽正会理事長)が9月、伊藤市長に答申した内容に基づく。答申は「地域の病院体制は崩壊の危機にある」とし、市に「従来の枠組みにとらわれない大胆な政策」を求めた。 

 こうした「崩壊の危機」には、医師不足の問題が背景にある。04年度に始まった臨床研修制度で新卒医師の進路が自由化。医局制度が揺らぎ、拠点病院に医師を派遣してきた地方大学に残る医師が激減している。 

 府中市では、以前から赤字体質だった市立府中北市民病院(上下町)の常勤医が08、09年度で2人減り、6人に。累積赤字は6億5千万円に上る。旧府中市域の中核的医療機関であるJA府中総合病院(鵜飼町)も00年度に21人いた常勤医が12人に減っている。 

給与の抑制にらむ 

 市は、両病院を共同体づくりの推進役と位置付けている。そこで経営健全化の手法として打ち出したのが、JA府中病院を北市民病院と統合し、地方独立行政法人(独法)化する考えである。 

 伊藤市長は、独法化の狙いをコストダウンと言い切る。市は、両病院は民間に比べて高い人件費が経営を圧迫していると分析。給与設定などの自由度が高い独法化で給与水準を民間並みに抑え、円滑に医師や看護師の共同活用を図る。 

 広島県も市側の方針を受け、両病院の再編などを県地域医療再生計画に盛り込んだ。国から25億円(他市町分を含む)の交付を受ける見通しで、市にとっては共同体の条件整備に向けた大きな後押しになっている。 


情報公開し対話を 

 一方、両病院職員の反発は当然ながら予想される。「給与水準が低いと中山間地では職員を確保できない」という懸念もある。共同体の理念自体は分かりやすいが、医療機能の分担には各病院の利害も絡んでくる。 

 JA広島厚生連(広島市中区)は、府中をはじめ県内四つの病院を運営。市に引き渡すとなれば初のケースになる。山口弘明常務は「組織で決まれば統合もやむを得ない」としながらも、「市の方針を丸のみするかどうかは別問題だ」と言葉を選ぶ。 

 市は12月の市議会で市地域医療再生計画の概要を公表し、年度内にも詳細を決める方針でいる。ただ、地域全体の機運の高まりを抜きにして、計画実現はおぼつかない。情報をオープンにし、病院関係者や市民と一つ一つ合意を積み上げる努力が欠かせない。 

<府中市が目指す新たな医療体制の基本方針> 

 (1)地域の病院間で業務範囲を適切に分担するなど、最も合理的・効率的な医療提供体制を「共同体」によって実現する 

 (2)府中市立府中北市民病院を地方独立行政法人化し、経営を立て直す。JA府中総合病院は北市民病院と統合させる 

 (3)共同体内に「地域医療人材センター(仮称)」を設置。医師などの確保や活用、養成を、大学病院などと連携して行う