公立病院を 付属病院化する大学が 急速に多くなるのではないか・・・新政権は事業見直しを例外なく実施する。公立病院として存続が認められる場合は 大学が関連病院のレベルを超えて 指定管理者として 経営一体化まで行くこになろう



公立病院を 付属病院化する大学が 急速に多くなるのではないか・・・新政権は事業見直しを例外なく実施する。公立病院として存続が認められる場合は 大学が関連病院のレベルを超えて 指定管理者として 経営一体化まで行くこになろう(成功例 金沢医科大学 付属氷見市民病院等・・・)  


特集 本当に強い大学 2009--COLUMN 「経営改善係数2%」導入で資金繰りが火の車に--付属病院を追い詰めた国立大学改革 
2009.10.24 週刊東洋経済 
  

特集 本当に強い大学 2009 

COLUMN 「経営改善係数2%」導入で資金繰りが火の車に 

付属病院を追い詰めた国立大学改革 

診療報酬請求額は2割以上も増加。反面、キャッシュフローは大赤字。その理由とは。 

 国立大学付属病院は、医師の養成や公立・民間病院への医師派遣を通じて地域医療を支えるとともに、高度医療の研究の拠点としてなくてはならない存在だ。その国立大学病院が炎に包まれている。 

 国立大学附属病院長会議の調べによれば、2009年度の国立大学病院のキャッシュフローは46病院のうち33病院で赤字となり、33病院の赤字額合計は197億円に急増する見込みだ(下表)。 

 国立大学病院の資金繰りの悪化は、国立大学全体の経営も揺るがせている。文部科学省がまとめた86国立大学法人および4大学共同利用機関法人の08年度決算によれば、国立大学病院の収益は国立大学全体の収益の3割近くを占めている。国立大学病院は見掛け上は黒字(業務損益は386億円の黒字)だが、設備更新費や借入金の返済を含むキャッシュフロー(現金収支)ベースでは多額の赤字が続いている。そして、「今の財政上の仕組みが続いた場合、今後もキャッシュフローの赤字は増大が避けられない」(櫛山博・東京大学医学部附属病院副院長兼国立大学病院データベースセンター長)。 

 「今の仕組み」とは、国立大学の大学法人化をきっかけに導入された、付属病院運営費交付金を毎年度にわたり一定の計算方法に基づいて削っていく仕組みのことだ。右グラフから明らかなように、病院運営費交付金は、制度開始時の04年度の584億円から09年度には207億円へと激減している。このまま、削減が続いた場合、将来はゼロになり、結果として独立採算制になる。 

 国立大学病院は、診療報酬などの病院収入で、診療関係経費(看護師や検査技師などの人件費、薬剤費など)や病棟の建て替えなどで生じた借入金の返済を賄うのが原則だ。そして、病院収入で賄えない分に限って、病院運営費交付金が国から与えられる。一方、付属病院で支出されている教育研究に関する経費(病院に所属する教員の給与や研究費用など)は、別に特定運営費交付金として、国から支出されている。 

 問題になっているのが前者の病院運営費交付金だ。同交付金については2%の「経営改善係数」が設けられている。これは、前年度よりも病院収入が2%増加することを前提としたうえで、同交付金を毎年度にわたって削っていく仕組みだ。ただし、「病院収入2%増」の算定方法は、経費の増加を想定していないため、事実上は3~4%の収入増が確保できなければ、計算が合わなくなる。そして、計算が合わずに生じた赤字が雪だるま式に膨れ上がっている。 

死に物狂いの患者受け入れ増 大学病院発の看護師争奪戦 

 国立大学病院は、手をこまぬいているわけではない。涙ぐましいほどの経営努力を続けている。診療実績に関するいくつものデータが、その努力を物語っている。 

 国立大学病院の診療報酬請求額(入院および外来)は、04年度の6107億円から08年度の7455億円へと22%も増加している。新入院患者数は04年度の43万人から08年度の53万人へと増加。一方、患者1人当たりの平均在院日数は、04年度の21.7日から08年度の17.5日へと短縮。診療科別に見た場合でも、懸命な努力の結果が読み取れる。救急車搬入患者数は、04年度の4万7445人から08年度の9万6133人へと倍増。産科の分娩件数も、04年度の1万2218件から08年度の1万6827件へと38%も増えている。 

 その結果として、病院収入は大幅に伸びたが、稼いだ利益を上回る交付金が削られたことで、国立大学病院は窮地に立たされた。そして、国立大学病院の苦境は、地域医療に悪影響を与えるとともに、教育研究機能の低下にもつながっている。 

 06年度診療報酬改定をきっかけに、多くの病院間で「看護師争奪戦」が起きた。この時、「7対1看護基準」という、手厚い看護師配置を評価する診療報酬が新たに設けられた。その際、新卒看護師の大量採用に踏み切ったのが、東京大学をはじめとする国立大学病院だった。そのあおりで、地域の中小病院などが深刻な看護師不足に直面。地域医療が深刻な危機に見舞われた。 

 一方、大学病院も疲弊している。患者の受け入れ増とともに、医師や看護師の過重労働が強まっている。しかし、財源がないため、処遇改善もままならない状態だ。また、04年度に導入された新臨床研修制度をきっかけに、研修医が研修先の病院を自由に選択できるようになったことが、国立大学病院に大きなダメージを与えた。国立大学病院を選ぶ研修医が減ったうえ、2年間の研修を終えた後に、大学に戻る医師も減少。大学病院は深刻な医師不足に直面した。そのあおりで自治体病院などに派遣している医師を引き揚げる事態が起きた。 

 教育研究機能の低下も懸念されている。財源がないため、新たな診療機器の購入もままならなくなっている。高度医療を売り物にしていながら、それが困難になりつつあるのが、今の国立大学病院だ。 

 民主党は総選挙時のマニフェスト(民主党政策集INDEX2009)で、「国立大学病院運営費交付金については、法人化直後の水準まで引き上げる」と公約している。一刻も早い公約の実行が待ち望まれている