桑名市民病院の再編統合 地方独立行政法人に



桑名市民病院の再編統合 地方独立行政法人に   

桑名市:市民病院法人化 経営に民間手法、効率的で柔軟に /三重 
2009.08.27毎日新聞   
  
桑名市は26日、市議会9月定例会に提案する市民病院の経営形態に民間の手法を取り入れることが可能な地方独立行政法人化に伴う予算案などを発表した。可決すれば10月1日に移行、県内の自治体病院では初めての独法化となる。 

 法人化に伴い、市民病院の予算や職員給与、業務内容などが病院独自で決めることができ、実情にあった効率的で柔軟な病院経営が可能になると説明している。職員の身分は非公務員型とし、民間企業と同じ労働法規が適用される。 

 市民病院は、08年度の純損益が1億1673万円に上るなど改善の必要に迫られていた。水谷元市長は「病院経営の健全化と同時に、市民に十分な医療が提供できる病院となるよう期待している」と話した。 

 市民病院と統合の申し入れがあった民間の平田循環器病院(同市中央町、79床)は10月に、市民病院の分院となる。 

 一方、統合の際の資金面で合意に至らず協議が中断していた民間の山本総合病院(同市寿町、349床)について、水谷市長は「25日、山本総合病院の栗田秋生理事長と県庁に伺い、野呂昭彦知事に国の地域医療再生計画に基づく資金面での支援をお願いした」と話した。【沢木繁夫】 



  
 伊勢新聞2009/7/26(日) 
 桑名市民病院の再編統合問題 東海初、地方独立行政法人に   

【市内病院の統合再編に取り組んでいる桑名市民病院=同市北別所で】 
 今年十月一日、市立病院としては東海初の地方独立行政法人に移行する「桑名市民病院」(病院事業管理者・足立幸彦院長、二百三十四床、北別所)。「特別医療法人和心会平田循環器病院」(理事長・平田和男院長、七十九床、中央町一丁目)との統合にも踏み切り、「四百床規模の魅力ある病院づくり」に向け、第一歩を踏み出した。 

一方、昨年末から途絶えていた「医療法人山本総合病院」(栗田秋生理事長、三百四十九床、寿町三丁目)との統合交渉を今月再開。 
これまで山本病院資産の評価方法や職員退職金の市負担などをめぐり見解が対立していたが、退職金については、厚生労働省が本年度補正予算で打ち出した総額三千百億円の「地域医療再生事業」に活路を見いだすことで合意した。国から各都道府県に交付される同予算を、山本病院統合に伴う「必要資金」として、確保したい意向だ。 
ただ、県内各地では、桑名市同様、医師、看護師不足や厳しい経営環境に直面している地域は多く、同予算確保は厳しい地域間競争にさらされる可能性が高い。 
県は九月末までに、予算の使途を決める「地域医療再生計画」をまとめる予定。地域医療の再生を目指す県内各地域の綱引きが活発化しそうだ。 
(特報部長・竹本剛) 

 ■「直談判」 
 桑名市は二十四日、石川雅己・市長公室長や水野雄二・市民病院事務長らが市役所で記者会見。昨年末から途絶えていた山本病院との交渉をめぐる一連の経過を説明し、今後の市の方針を明らかにした。 

 統合メリットを生かした地域医療の強化を狙いに昨年四月から本格的に始まった市と山本病院の交渉は昨年十二月、山本病院が所有する不動産の譲渡価格の評価方法や、病院職員退職金の市負担などをめぐる見解の相違で、いったん決裂した。 

 市や山本病院の説明によると、不動産評価をめぐる問題は、時価と簿価、いずれで財産評価するかの対立。市は第三者が鑑定した時価、十九億円でしか買い取りできないと主張。病院側は当初、約二十三億円を提示したが、その後、簿価圧縮に努め、現在は約二十一億円を示している。 

 退職金問題は、統合が実現した場合、存続する法人は市民病院で、山本病院は清算されて消滅。 
このため、山本病院の職員に対する退職金支払い債務約十億円を市が引き継ぐかどうかの問題が残った。市は山本病院が支払うべきと主張。 
逆に山本病院は市の負担を求め続けた。しかし、今月、幾分の歩み寄りがあり、「労使交渉で若干の差異が出ることも予想される」と断った上で、負担要請額を四億円減らして約六億円に修正した。 

 両者主張の負担額の価格差は、山本病院の歩み寄りで、昨年十二月の「交渉決裂」時点に比べ、縮まっているが、価格差以上に両者の考え方の相違は大きい。 

 市は、簿価買い取り、退職金負担とも実行した場合、違法性が問われる「訴訟リスクが大きい」(水野事務長)としている。 
時価買い取り、退職金負担ゼロの二つを、統合の「絶対条件」としており、今月に入っての山本病院の「簿価圧縮(二億円減)」「退職金減額(四億円減)」の「新提案」も、新鮮味に乏しく、「従来の提案内容と同じ」(石川部長)と指摘している。 

 山本病院が今後、簿価や退職金をいくら圧縮しても、両者の交渉は平行線をたどったままだろう。市は、税金投入の訴訟リスクに堪え得る「大義名分が必要」(石川市長公室長)との認識を持っており、額について交渉する余地はない、と明言しているからだ。 

 山本病院の新提案への水谷元市長のコメントがすべてを物語っている。 

 「いただいた提案は基本的に昨年十二月に提示した条件の域を出るものではなく、提示いただいた条件での統合は困難であるとの認識には変わりはない」 この部分は市が、当初作成した市長コメントにはなく、直前に付け加えられた。コメントの要諦(ようてい)は、この追加部分にあると見て間違いないだろう。 

 山本病院の奥村秀郎事務長は「私どもは地域医療のために、(市にとっては)けっして高くない、よい買い物だと思う。市との交渉は民間とは異なり難しい」と交渉難航を覚悟した上で「交渉がなんとか、まとまることを期待したい」と話している。 

 ■「地域医療再生基金」 
 交渉が行き詰まる中、市と病院は、国が本年度補正予算で打ち出した「地域医療再生事業」に目を付けた。県医療政策室によると、同事業は総額三千百億円。各都道府県が、「地域医療再生計画」を策定して国に提出。事業採択されれば、一事業につき約三十億円から最大百億円が交付される。県はこれを「地域医療再生基金」として県予算に積み立て、計画に掲げた事業に割り当てる仕組みだ。 

 同室によると、各都道府県に認められる採択事業数は「一、二事業程度」。国への再生計画提出期限は十月で、「九月末ごろまでに計画をまとめる必要がある」(加藤和浩副室長)。事業採択は十二月ごろまでに決定される見込み、という。 

 県の再生計画策定に当たっては、医師ら医療関係者で構成する県の医療審議会に意見を求めるため、同審議会が、県内各地域の事業要望の優先順位を事実上、決定する場になりそうだ。 

 市は、この再生基金を確保し、退職金問題にけりをつけたい考えが、「認められるかどうかまったく分からない」(水野氏)五里霧中状態。市役所職員の一部は「伊賀、名張地域や南勢地域の再生事業が優先され、市の統合事業への割り当てはおそらく難しいだろう」と既に悲観論が出ている。今後、予定している水谷市長の野呂昭彦知事への〝直訴〟が実を結ぶかどうか。周囲は再生基金の今後の行方を見守っている。