公立病院の大学病院の付属化 若しくは 公立病院が大学病院を指定管理者に選定することは両者に大きなメリットがある。

公立病院の大学病院の付属化 若しくは 公立病院が大学病院を指定管理者に選定することは両者に大きなメリットがある。 

国立大学は、授業料引き上げや病院収入向上策といった自己収入の拡大の方策が急務! 
大学付属病院に関する「付属病院運営費交付金」で顕著である。すなわち、06年度でみると、付属病院の運営のための交付金は大学に対する交付金全体の5%程度と算定されているのに対し、国立大学の決算ベースでは、全体の17%が付属病院の穴埋めに使われた格好になっている。 


日本経済新聞 2009年8月12日(水) 
経済教室 赤井伸郎 大阪大学準教授(抜粋) 

国立大学の法人化から5年が経過した。国立大学を文部科学省の内部組織から独立させ、また非公務員型とすることで、運営にかかわる自由度を高め、個性豊かで魅力ある大学へと変革させるというのが狙いである。法人化をテコにした大学改革の中で筆者は、国立大学法人運営費交付金に着目したい。 

これは、それまでの補助金にかわり、教育研究の実施に必要な支出額と授業料や病院収入など自己収入の差額として、国から交付されるようになったものだ。 
2009年度で約1兆1700億円規模に上る同交付金 
は、使途が自由である一方、差額を見積もる際、支出額では各大学の特徴など、収入額では経営努力などをそれぞれ勘案する。このため、その算定方法が適切でないと、大学運営に影響が及んだり、文科省からの独立性が損なわれる恐れがあったりする国立大挙の運営交付金をめぐっては2つの動きがある。1つは適切な配分に関する要請だ。文科省が今年6月まとめた「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しについて」では、交付金の算定・配分について、各法人の努力と成果を評価し資源配分に適切に反映させるとともに、大学の多様化と機能別分化を促すことが必要だと指摘された。 
もう1つは政府の財政難にもとづく要請だ。政府の財政再建が求められる中で、国立大学への運営費交付金は05年度以降、原則として毎年大学遇営に必要な経費を1%ずつ削減し、病院収入は2%前提で算定されている。この結果、交付金の総額も年100億~200億円ほど減ってきている。これに対し国立大学側からは、「教育の質を保つことが難しくなり、基礎的な研究の芽をつぶし、わが国の高等教育・研究の基盤が根底から崩れる」として、見直しを求める声も強い。 

交付金算定に当たっての積算基準に関していえば、実態との乖離(かいり)が否めない。それは特に大学付属病院に関する「付属病院運営費交付金」で顕著である。すなわち、06年度でみると、付属病院の運営のための交付金は大学に対する交付金全体の5%程度と算定されているのに対し、国立大学の決算ベースでは、全体の17%が付属病院の穴埋めに使われた格好になっている。 
これは、病院以外の経費として算定された交付金が、病院に回ってていることを示唆する。すなわち「教官研究などに対する運営費交付金」の中には、附属病院に所属する教員や研修生・指導医などの人件費など病院関連の経費が含まれており、これが両者の乖離の原因であると思われる。 
大学の運営に必要な支出額の収入との差額を交付金でカバーする仕組みの是非である。交付金への依存体質が強まり、自助努力に対するインセンティブが損なわれるのではないかという「効率と不平」のトレードオフに関する議論は地方交付税制度でも大きな論点である。地方交付税ではこの観点から、地方分権や税源移譲が議論されており、国立大学運営でも教育バウチャーなどの検討に加え、授業料引き上げや病院収入向上策といった自己収入の拡大の方策について、議論が必要になろう。また、地域ごとの事情を考慮しながら、努力インセンティブを損なわないような制度設計や措置を考える上でも、地方交付税制度は参考になると思われる。 



  FORuM 国立大学病院HP より 
 法人化への移行を契機に国立大学病院の経営が厳しさを増している。 
 このままでは、医療の最後の砦といわれてきた国立大学病院医療の維持もままならない。 
 国立大学病院の生き残り策を、国立大学附属病院長会議・常置委員会委員長の河野陽一氏(千葉大学医学部附属病院長)にうかがった。  
  
  
 国立大学病院の苦境の原因 
   国立大学病院の経営状況が非常に厳しいと言われていますが、その原因はどこにあるのでしょうか?  
    
河野陽一委員長  国立大学病院の経営が厳しくなったのは、法人化時から毎年1%の国費支援の削減に加えて、特に病院収入額に対応して毎年2%ずつ減額されてきた病院運営費交付金の影響が大きい。例えば医業収入(売上高)200億円の病院だと4億円が減らされる。その4億円を補填しようと病院が増収対策をして翌年は210億円の医業収入を上げると、病院運営費交付金は4億2000万円減らされます。250億円の医業収入になると5億円が削られます。売上げが増えてもコストもかかります。がんばれば、がんばるほど減額されていく制度です。 
 また病棟の新設や建て替えにかかわる費用も、法人化への移行にともない、その資金が全くない制度下で、各大学の負担となり利息も含めて多額の負債を抱え、返済することを余儀なくされています。限られた収益の中で、こうした何百億円という負債を返済することは不可能です。 
 三重大学の豊田長康学長は、「経営改善係数2%というと、大した数字ではないとしばしば誤解されるのですが、これは病院運営費交付金を2%削減するのではなく、前年度の医業収入の2%相当額を削減するというもので、運営費交付金の削減率にすると10%以上になる厳しい削減率です」と述べています。 
 その結果、国立大学病院全体では平成16年度に584億円だった病院運営費交付金は、翌平成17年には499億円となり、平成20年には309億円と5年間で47.1%も削減されました。  
  
  
  国立大学病院はなぜそんなに金がかかるのかという声も聞かれますが、いかがでしょうか?  
  
  
河野  医学部以外の学部、例えば理学部や工学部が施設を建てたり、物品を購入したりする場合は、全額が支給されます。ところが、大学病院の場合は収入があることを理由に、施設の建築費は、1割しか国からの補助はもらえませんので、残りの9割は大学病院が収入の中から返済していかなければなりません。 
 また、治療や検査に必要な機器も高度化し、購入するためには高額な予算が必要ですが、これも一部を除いて全額を病院の収入で負担しなければなりません。 
 さらに、国立大学病院は6年ごとの中期計画に沿って運営されていますので、6年を越えて目的積立金を繰り越すことができません。  
  
  
  それでも民間病院や私立大学病院はやっているではないかという声もありますが。  
   
河野  民間病院なら10人の医師がいれば全員に臨床をさせればよいところです。大学病院は学生の教育もしなければいけませんし、研究をして医学の進歩に貢献しなければなりません。また、診療報酬の上でも特定機能病院である大学病院はさまざまな加算点数から除外されております。たとえば、前回の改定で引き上げられた小児入院医療管理料1は特定機能病院では算定できません。これが算定できれば50床程度の小児科で約5億円の収益増となります。 
 また、大学病院の入院患者さんは重症度が高く、在院日数も長くなることが少なくありません。在院日数が長くなると、今のDPC(包括医療)制度では赤字になります。しかも、大学病院の患者さんの25%は県立中央病院やがんセンターといった地域の中核病院からの紹介です。診療報酬で冷遇されている大学病院が、他の病院では診られない患者さんを受け入れて、治療をしているのです。国立大学病院はどのような患者さんも受け入れていかなくてはならないので、赤字だとわかっていても入院治療をしなければなりません。 
 私立大学病院の経営も非常に大変だと聞いており、薄氷を踏む思いでの経営と考えますが、研究への力点の置き方や、積立金の年限制約がないなど国立大学とは異なっております。  
  
  
  戦略検討WGの誕生と成果 
  
  
  病院運営費交付金の減額、診療報酬上の格差と問題が山積みですが、大学病院長会議としては、これらの解決のための何らかの方策をお持ちなのでしょうか?  
 
  
河野  実は2008年の7月17日に国立大学病院長会議は、「戦略検討ワーキンググループ」という新たな組織を作り、喫緊の課題となっている経営問題についての意見集約を行い、国会議員や関連する省庁への陳情を行いました。 
 8月14日には文部科学省を訪問し、大臣や事務次官に大学病院の財政事情をお話した上で、要望書をお渡ししました。「大学病院を考える議員連盟」の会長と事務局長にもお会いし、要望書をお渡ししています。 
 約半年で、議員連盟の先生方には二度、厚生労働省と文部科学省にも二度、そして財務省にも一度お伺いして病院運営交付金の削減が国立大学病院に与える影響についてはご理解をいただいています。 
 また、大学病院は医学部だけでなく、他学部との関連もあり、国立大学協会とも連携しています。  
  
  
  政治的な手法で解決を目指すと考えてよろしいのでしょうか?  
    
河野  このまま進むと平成21年には国立大学病院の7割以上が赤字に陥ります。附属病院が赤字になった場合は大学本部に救済を求めることになりますが、大学病院の抱える負債が大きいため、共倒れの危険性すらあります。すると、地域から国立大学が無くなってしまう。これを防ぐには病院運営費交付金の削減を含めた予算縮小を中止していただかなくてはならないとお伝えしたのです。 
 しかし、それだけでは国立大学病院の抱える問題を解決することはできません。国立大学病院の行っている医師育成、地域医療提供体制、高度医療といった特性に対する財政支援、第2期中期計画(平成22~27年)での災害医療や予想されるパンデミック・インフルエンザ対策への支援、さらに診療報酬上の民間病院との格差是正や来年度から導入される予定のDPC機能評価係数における大学病院の評価、こういったものをすべて行うことで大学病院の機能が向上してくると考えています。  
    
  
 国立大学病院の医師の待遇も改善すべき 
   
 国の財政が厳しいなかで、目標を達成するのは難しくはないでしょうか?  
  
河野  これは、当事者が言いにくいことなのですが、国立大学病院の医師は大学の教員としての評価しか受けていません。時間外手当も一部にしか支給されていません。40歳で比較すると民間病院に勤める医師よりも、国立大学病院の医師は36%も給料が低くなります。それを個々の医師の献身的な努力で臨床現場や研究を維持してきましたが、そろそろ限界です。 
 さらに勤務医の過労問題がクローズアップされましたが、我が国全体の問題として勤務医の労働条件の改善も必要です。地域医療を支えて来た医師という観点からは、国が労働環境を厳しく監視することは歓迎すべきことだと思います。一方で、その結果、医師の勤務に制限がかかり、患者への医療の障害になる事態は避けなければなりません。医師であり同時に医療経営者という立場からは大変なジレンマです。地域の医療を守るためにも、国立大学病院が医師にとっても魅力的な職場であらねばなりません。そのためにも私たちは、粘り強く交渉して、予算の削減を食い止めなければなりません。