財政難のなかでも深刻になっているのは、公立大付属病院の建て替えだ。



財政難のなかでも深刻になっているのは、公立大付属病院の建て替えだ。20年以上も前に建てられた病院もある。老朽化や使い勝手の悪さが目立っているが、国立大学の付属病院と比べ、国からの支援はなく、自治体が独自に建て替え費用を捻出しなければならない。地域で地域医療の砦となっていることを重視してほしい 
公立大学は現在、77校。平成に入り、ほぼ倍増している。高齢化社会が到来、介護保険制度も導入されたのを受け、看護、保健福祉系の大学が増えた。地域に根差したきめこまかな教育をしており、地域に与える経済効果も大きい 


読売高等教育フォーラム 国公立大学の課題や展望を聞く=特集 
2009.07.29 読売新聞   
  九州・山口地区の国立大学は12校、公立大学は13校。それぞれの地域で、教育や研究、人材育成に取り組んでいる。国立大学協会副会長の丸本卓哉・山口大学長、公立大学協会長の矢田俊文・北九州市立大学長に国公立大学の課題や今後の展望を聞いた。(聞き手 西部本社編集委員・時枝正信) 

 ◆公的支出の拡大急務/丸本卓哉・国立大学協会副会長 

 --国立大学が法人化して6年目。最も変わった点は何か 

 「旧国立大学時代は、各部局から選出された評議員で大学運営を審議していた。このため、各部局の意向が強く反映し、学長は調整役となるケースも目立った。法人化後は、外部の有識者も入った経営協議会、教育研究評議会で審議し、役員会で最終決定しており、学長のリーダーシップと権限が強くなり、その責任も重くなった」 

 --国から大学に支出する運営費交付金の削減が続いているが 

 「全国立大学の運営費交付金の削減額は、2008年度までの4年間で600億円にのぼるが、削減幅は大学によって異なり、大学間の格差が広がっている。文部科学省の教育・研究の重点配分対象から外れたり、外部資金の獲得が難しかったりする大学の削減幅は大きくなる。とりわけ、教育系の単科大学は深刻な状況になっている。日本の高等教育機関への公財政支出を対GDP(国内総生産)比でみると、経済協力開発機構(OECD)加盟国のなかで最も低い。グローバル社会となり、世界に負けない競争力が求められている今、公財政支出のアップが急務だ」 

 --法人化後、グローバル化と国際競争力が大きく取り上げられるようになった。国立大学の今後の展望は 

 「05年の中央教育審議会答申は高等教育の将来像として、各大学の特色を打ち出す指針として、世界的研究・教育拠点、地域貢献機能など7項目を挙げている。7項目のうち、3、4項目を選び、特色のある大学づくりを目指さなければならない。教育の機会均等、地域を支える人材の育成など、国立大学が果たしてきた役割は極めて大きい。それぞれの地域の住民にも大学があることで生まれる有形無形の効果を、しっかりと説明していきたい」 

 ◆「地域」「世界」両視点で/矢田俊文・公立大学協会長 

 --公立大学の現状は 

 「公立大学は現在、77校。平成に入り、ほぼ倍増している。高齢化社会が到来、介護保険制度も導入されたのを受け、看護、保健福祉系の大学が増えた。芸術や外国語に特化した大学もある。学生数が1万人を超える大学はなく、5000人以上も5校だけ。地域に根差したきめこまかな教育をしており、地域に与える経済効果も大きい」 

 --18歳人口が減少するなか、定員割れなどの懸念はないのか 

 「学生や保護者が進学先を考える際、授業料や生活費が安く、教育・研究の質の高いところを選択する。公立大学は、その要請に応えており、今のところ、どの大学も経営的には安定している。特に、不況時には地域の国公立大学への進学者は、増える傾向にある」 

 --財政事情が厳しい自治体も多い。財政上の課題は 

 「公立大学は学生からの授業料のほか、設置主体の自治体からの交付金でまかなっている。交付金の一部は国(総務省)からの支援を受けているが、支給額の算定基準となる学部ごとの学生あたりの単価が、ここ数年、毎年のように切り下げられている。財政難のなかでも深刻になっているのは、公立大付属病院の建て替えだ。20年以上も前に建てられた病院もある。老朽化や使い勝手の悪さが目立っているが、国立大学の付属病院と比べ、国からの支援はなく、自治体が独自に建て替え費用を捻出(ねんしゅつ)しなければならない。地域で地域医療の砦(とりで)となっていることを重視してほしい」 

 --公立大学の今後の展望は 

 「英語だけで講義をするなど国際化を意識した公立大学もあるが、多くは地域に根差した教育や研究、人材育成に取り組んでいる。世界的な視野で考え、地域の視点で行動するグローカルな取り組みが基本になる」