名古屋市民病院への期待 名古屋市民病院と公立病院改革プランの行方 笠松正憲氏 (名古屋市医師会調査室、医療法人かさまつ皮膚科理事長)



名古屋市民病院への期待 
 名古屋市民病院と公立病院改革プランの行方 笠松正憲氏 (名古屋市医師会調査室、医療法人かさまつ皮膚科理事長)掲載雑誌:名古屋医報,第1327号、p8~14、2008.12.より 抜粋(長隆の所見をご評価いただきましたので 一部転載させていただきました) 

1.救急の充実を 
名古屋市立病院再編計画では、西部医療センター中央病院の周産期医療センターと小児医療センター、東部医療センター中央病院の脳血管センターと心疾患センターで救急を予定している。「西部医療センターの場合、小児科医を15人、産婦人科医を10人以上集めれば365日24時間救急に対応できる」と上田病院局長は述べている。しかし、現時点において市立病院全体でも小児科医は17人、産婦人科医は14人である。上田局長は「名古屋市立大学に3年後に備えて人員確保をお願いしている。また、二つの中央病院が救急を担い、魅力ある病院になれば若い医師が集まる」とも述べている。市民の期待にこたえるべく、最大限の努力を期待したい。 

2.経営形態は今のまで良いのか 
前述の通り、名古屋市立病院は地方公営企業法の全部適用を行った。比較的取り組みやすい手法であるが、民間経営手法が不徹底になりがちな点を監視する必要がある。地方公営企業法の全部適用については、人事・予算等の権限を付与し、自立的運用を行うことが目的である。しかし、現在すでに全部適用をした公立病院の状況からは、医師確保や経営改善を図る上で、必ずしも有効な手段になっていないと聞く。しかしながら、独立行政法人等への移行は、経営計画の策定に時間を要すことや、職員の身分などの様々な問題を解決していく必要があるため、容易にできるものではない。今後、再編。ネットワーク化の進展状況等も踏まえつつ、地方独立行政法人化(非公務員型)や指定管理者制度へ移行することも考えられるであろう。元名古屋市立病院経営改善推進委員長であり、総務省公立病院改革懇談会座長である長隆(おさたかし)氏は、『名古屋市立病院の医師・看護師不足ヘの提言』として面白い提言をしている。『基本計画では、全く病床削減しないということになっているが、思い切って2センターに特化して病床数を50%削減し、名古屋市立大学付属病院として一体経営化する選択肢もあろう。市立大学の教授がセンターに臨床指導に出向き、センター病院の医師を臨床教授に登用する。看護師も、大学と付属センターと一体の人事としてレベルアップし魅力ある看護師教育がなされるべきである』と述べている。この意見は委員会の提言内容には盛り込まれなかったが、私は参考とすべきと考える。 

3.特色のある病院作りを 
「何もかもやる、はもう無理。集中と選択が必要だ。各病院に特色がないことが問題だ。得意分野が分かりにくい病院は、患者も選びにくい。」と上田病院局長は述べている。同感である。しかしながら、周産期医療センター、小児医療センター、陽子線がん治療、脳血管センター、心疾患センターどれも重要な施設であることは事実だが、全国的にみて特長があると言えるだろうか。松原武久名古屋市長が「名古屋市立大学は名古屋市の宝である」といっているように、名古屋市立大学医学部および大学病院を自前で保持している市の利点を最大限生かしてほしい。すなわち最新の医療施設、技術および人材の活用である。私が皮膚科医であるから言うわけではないが、社会的問題となっているアトピー性皮膚炎に対応し『アトピー性皮膚炎専門病院(病棟)』、あるいは患者が急増している尋常性乾癬に対応した『乾癬専門病院(病棟)』など、全国でも類をみない特色ある病院作りの発想が必要であろう。「日本全国から患者を集める」考えを持ってほしい。先に挙げた公立病院改革ガイドラインには『経営感覚に富む人材の登用等』について『経営効率化の実現に向けては、経営形態の如何に関わらず、病院事業の経営改革に強い意識を持ち、経営感覚に富む人材を幹部職員に登用(外部からの登用も含む。)することが肝要である。こうした人材登用等を通じ、医師をはじめ全職員の経営に対する意識改革を図り、日標達成に向け一丸となった協力体制を構築することが不可欠である点に特に留意すべきである。』と記述されている。病院局長に企業経営のプロを、病院長や医師に学閥等にとらわれない特徴のある医師の招聘というのも魅力ある市民病院を作るのに大切な観点だと私は考える。 

最後に 
 自治体病院が、それぞれ地域医療に果たしてきた役割が、現在の社会状況の中で十分に果たせなくなってきていることは、まず認識しなくてはならない。また、国が財政再建の方針を、地方自治体をも例外とせず適用しようとしている今、自治体病院は採算度外視の経営は認められなくなる。経営を再生するには何が必要か。何よりもまず、自治体病院が「お役所体質」から脱皮することが求められるだろう。病院職員一丸となって収入増とコスト削減に取り組む必要がある。 
 さらに言えば、自治体病院の問題は、病院に勤務する者だけの努力で解決するものではない。住民(患者)も地域医療を担う「当事者」であることを意識すべきである。自らの病気や健康についてよく知り、かかりつけ医を持ち、何でも病院で受診するという診療行動を考え直さなければならない。軽症なのに休日・夜間に病院で診療を受ける「コンビニ受診」を減らす必要がある。病院勤務医が過酷な勤務で退職しないよう、負担軽減を図ることも重要なのである。今の体制のままでは、病院財務の悪化や医師不足が契機となって、医療崩壊を起こす病院が続出するだろう。自治体病院の崩壊を防ぐために、地域に住む関係者が一体となった取り組みを行うこ 
とが求められている。 
 さて、名古屋市立病院について言えば、市民の医療ニーズに沿った高度医療や救急医療に対応することが求められている。現在進めている西部医療センター中央病院の整備に留まらず、東部医療センター中央病院の施設充実にも力を注いでほしい。先に、自治体病院改革の視点を列挙したがいろいろな問題が予想される。単純な経営母体の統合だけなら住民や地域医療機関も受け入れることができるが、必ず規模等のリストラが伴う。そうなると受け入れ難い地域も出てくる。実際に名古屋市内でも、サテライト病院となる地域住民や医療機関からは不満の声があがっていると聞く。『むだ使いをせず、こういうところにお金をつぎこんで、田舎でも安心して最低限の医療を受けられるようにしてほしい』といった旨の市民の意見は大切なものである。国から求められたとはいえ、「公立病院改革プラン」を作成することは、市民病院の意義を考える良い機会になるであろう。名古屋市立病院のあり方を十分に議論し、どのような特色のある「公立病院改革プラン」が作成されるか期待して見守りたい。名古屋市および名古屋市民病院を愛する調査室新人委員のつぶやきでした。 



[課題@検索]名古屋市立病院改革 専門化で効率経営=愛知 
2009.06.03   
  
◆10年度の黒字目指す 

 名古屋市は今年3月、五つある市立病院の経営を立て直すための行動計画「市立病院改革プラン」を打ち出した。市の病院事業費の累積赤字は、2007年度には119億円にも上り、医師の数も定員約120人に対し、昨年は1割近く欠員となり、医師不足も深刻だ。同プランを実施することで、果たして、再生できるのか。(館林千賀子) 

 今年3月に開かれた市議会財政福祉委員会で、病院局の光田清美経理課長は「今年度は通常の一般会計補助金(30億円)に加え、経営健全化のために、さらに一般会計から10億円を補助金として投入しますが、2010年度には黒字にいたしますので、どうかご理解を」と、居並ぶ委員に必死の形相で訴えた。 

 市内には東市民(千種区)、城西(中村区)、城北(北区)、守山市民(守山区)、緑市民(緑区)の5病院があり、人件費などが膨らみ、1990年度から赤字に転落。99年度に、院外処方に変えることで薬剤関連の歳出を削減するなどして黒字に転じたが、2002年度から再び悪化。5病院の運営収支は、08年度には47億円の赤字となる見込みだ。 

 市では、改革プランの基になる「市立病院整備基本計画」を03年末に策定し、各病院が総合病院の「自己完結型」から、専門性をいかした「機能分担と機能連携」への転換を目指した。各病院が専門化することで、効率的な経営を狙った。さらに市内を東、西、南の3地区に分け、各病院の役割分担も鮮明にした。 

 城北は出産や小児医療、東は24時間365日対応可能な救急医療の拠点。一方、城西と守山は回復期のリハビリや外来機能を中心とし、緑は南部の総合病院として維持するという。 

 この基本計画を実現させるため、市は今年3月、08~10年度までの行動計画として「市立病院改革プラン」を策定。基本計画やプランに基づき、守山では08年4月、産科の出産が中止され、外科、内科50床を休床し、今年6月からは15床の末期ガン患者を対象とした「緩和ケア病棟」を開設する。 

 プラン実施に伴い、守山区の住民から産科の縮小などへの不安の声も出ているが、市病院局は「給与を上げるだけでは医師や看護師は集まらない。病院に特徴を持たせ、働きたいと思わせ、市民にも受診したいと思われる病院にするしか、生き残る道はない」と話す。 

 一方、河村たかし市長は「現在、勉強中」と言うにとどまっている。 

 財政が厳しい中、10年度の黒字化に向けて、設備投資をするため、5病院の経営は08、09年度は赤字覚悟で進む。今後、各病院がどこまで特徴を出し、連携ができるのかが再生の鍵を握っている。 


  
 危機のカルテ 第3部 瀬戸際に立つ公立病院 (下) 直営維持 問われる存在意義 
2009.02.19中日新聞   
  

 新興住宅地が広がり、人口が二十二万人を超えた名古屋市緑区。緑市民病院は街の発展に合わせて増築を繰り返し、区内では最も大きな総合病院となった。だが、周辺の民間病院の見る目は厳しい。「税金で運営される病院としての責任を果たしてこなかった」 

 同市緑区の救急隊が昨年、緑市民病院に運んだ患者は三百四十人。全搬送人数四千七百人の7・2%にすぎない。隣の愛知県豊明市にある藤田保健衛生大病院は、この四倍の千四百四十人を受け入れた。緑市民病院は五番目だ。 

 原因は、内科医の不足。二〇〇七年以降、夜間や休日に入院が必要となる患者を受け入れる二次救急を担当できなくなった。地元の開業医は「頼りにならず、患者の紹介もできない」とこぼす。負の連鎖が続き、〇八年度は九億六千万円の赤字が見込まれる。管理課長の牧原一生(56)は「精いっぱいやってきたが、医師の不足だけは何ともならなかった」。 

 都市部特有の事情もある。高度医療を担い、給与が高い民間病院に医師が集まる。公立病院は医師が不足し、存在がかすんでいく構図だ。大阪府松原市の市立松原病院は「役割が薄れた」と、三月末での閉院を決めた。 

 名古屋市立の五病院が抱える累積赤字は、〇八年度末で百六十八億円の見込み。市は昨年末、いずれも直営を維持する公立病院改革プランの原案を公表。一〇年度までに約五十億円を投入、四病院を特長を持った二医療センターに再編し、緑市民病院については拡充する計画を示した。 

 これを受け、緑市民病院は「地域完結型医療」を掲げ、二次救急の患者を一年中二十四時間受け入れる体制づくりを目指す。まずは四月から開業医の協力を得て週二回、夜間救急を行うよう準備を進めている。 

 だが、都市部では公立病院も、へき地の病院のようにどうしても「赤字」を抱えざるを得ない面がある。名古屋市立病院が、市民が利用しやすいように出産時の費用を民間の半額程度にしていることなどが例だ。 

 原案を作成した委員会の座長で名古屋市立大教授の山田和雄(59)はこう力説する。「努力を怠った結果の赤字はなくさないといけない。だが、政策的に必要な赤字とは分けて考えなければならない」 

 質の違う二つの赤字をきっちり分けて市民に説明したうえで、どこまでの税金投入が許されるか-。山田は市立病院の改革を「生き残りの最後のチャンス」と断じる。ほかの公立病院にも求められる覚悟だ。(敬称略、社会部・島崎諭生が担当しました) 

    ◇ 
名古屋市立病院:昨年度の収支、39億円の赤字 /愛知 
2008.08.29 毎日新聞  

 名古屋市は28日の市議会財政福祉委員会で、市立病院の昨年度の収支を約39億円の赤字と見込んでいることを明らかにした。看護師不足で昨年度、東市民病院と緑市民病院で計2病棟を休止したため、病床利用率が落ち込んだことが主な要因と分析している。 

 市は東、緑、守山、城西、城北の5病院を運営している。市病院局によると、昨年度の病床利用率は69・7%で前年度比8・8ポイント減。累積赤字は約120億円に達する見込み。【影山哲也 


医師、年収200万円アップ 名古屋市立病院が定員割れ対策=中部 
2009.01.08読売新聞   
  
 名古屋市は来年度、市立病院に勤務する医師の給与を年200万円増額させる方針を固めた。愛知県内の公立病院の医師並みに年収を引き上げ、医師の定員割れを解消する一助にしたい考えだ。 

 東、守山、城西、城北、緑の5市立病院の医師数は12月現在、定員187人(歯科医師除く)に対し11人の欠員が出ており、救急搬送の受け入れなどに支障が出ている。「医師不足で、公立病院間での医師の確保が厳しさを増している」(市病院局)のが現状という。 

 2006年度の地方公営企業決算統計によると、県内の公立病院の医師年収は1500万~1600万円が大半で、中には1700万円の病院もある。一方、名古屋市は1300万円と差があり、同市では既に、昨年10月から今年3月までの給与の計50万円増額に踏み切っている。