氷見市民病院・・・「決算は医療現場と事務方が無我夢中で一生懸命にやった結果、たまたま黒字になっただけだ。ほっとしているが、一つの過程であって、氷見市の地域医療を守る上での課題は残っており、満足しているわけではない」。




氷見市民病院・・・「決算は医療現場と事務方が無我夢中で一生懸命にやった結果、たまたま黒字になっただけだ。ほっとしているが、一つの過程であって、氷見市の地域医療を守る上での課題は残っており、満足しているわけではない」。 


日曜インタビュー 公設民営化2年目 金沢医科大学氷見市民病院長・高島茂樹氏 「地域完結型医療」目指す 新病院建設向け 医師、看護師確保 
2009.07.12北国新聞   
  

 昨年4月に公設民営化した氷見市民病院の“通信簿”ともいえる決算が出た。公営企業会計の基準で約6100万円となる黒字は、全国で病院経営に四苦八苦する関係者の注目の的になる。金沢市内のホテルで6月に開かれた日本医業経営コンサルタント学会では、黒字の秘訣を探ろうと質問攻めに遭った。さて、旗を振ってきた立場として1年間をどう振り返るのか。 

 「決算は医療現場と事務方が無我夢中で一生懸命にやった結果、たまたま黒字になっただけだ。ほっとしているが、一つの過程であって、氷見市の地域医療を守る上での課題は残っており、満足しているわけではない」。 

●不採算部門を死守 

 病院の公共性への配慮を忘れてはいけないということだろう。不採算部門である僻地(へきち)巡回診療や24時間対応の救急医療などは死守する考えだ。民間経営で大前提とされる経済効率性と公共性を自ら二律背反と評し、その解決に立ち向かう。 

 「不採算部門の政策的医療の“義務”を果たしながら、いかに健全経営を実現するか。氷見市民が市内ですべての治療を受けられる『地域完結型の医療』の実現のためには、高いレベルで病院と診療所が連携し、補い合う体制が必要」と持論を述べる。 

 むろん、民営化に伴う一部の看護師の退職、富大の医師引き揚げなどの影響は今も残る。民営化前より89床少ない204床での運営を余儀なくされている。常勤医師の確保が当面の懸案である。金沢医科大、金大、富大でつくる三大学協議会は2007年12月に富大側が離脱して以来、休止したままだ。3月末に小児科の医師2人が転勤し、院内に富大出身の医師はいない。目算はあるのか。 

 「こちらは両手を広げて歓迎しているが、相手にも考えがある。あきらめず、市と一緒に粘り強く交渉していくしかない」。 

●金沢医科大に氷見枠 

 10年度をめどに、250床の新病院を建設する計画が進んでおり、医師、看護師の増員は急務である。新病院開設後に分娩ができるように、今月から産婦人科に常勤医師1人を配置した。 

 金沢医科大は氷見市出身者を対象に、今年度入試で看護学部に奨学金と組み合わせた「氷見枠(5人)」を新設し、1人が入学した。来年度は医学部でも1人の氷見枠設置が決まった。 

 「将来、10年間で10人の氷見に勤務する医師が見込める。長い目で見れば氷見市の地域医療に役立つ」と強調する。 

 富山中部高を経て金大医学部に入った。大腸がん、胃がんなど消化器系のがんの手術件数は20年間で1万数千例を数える。現在も週3日は手術をこなす。 

 「市民から信頼される病院になるためには近道はない。患者にしっかりと対応し、実績を増やすことに尽きる」。おおらかな語り口に、医師として自信がのぞく。市幹部も「大局を考えるタイプ」と信頼を寄せる。 

 就任当初、院内巡視の際に、看護師や若手職員に積極的に話しかけることを心掛けた。「私たちの意見も聞いてもらえるのですか」。変化の風が職員にも肌で感じられたのだろう。 

 「職員には、医療の中心は患者であり、自分たちでいい病院に作り上げるという意識を持ってほしかった。ようやく、みんなが一つの方向に向き始めた」と手応えを感じている。理想の地域医療を実現するために、現場のトップとして多忙な日々が続きそうだ。(麻本和秀) 

 たかしま・しげき 金大医学部卒。1990年に金沢医科大一般消化器外科学教授、2005年に同大病院長。08年4月から金沢医科大学氷見市民病院長、富山市出身、66歳。