岡山県 瀬戸内市民病院 病院事業管理者は「身の丈に合った事業規模への縮小を目指した」と話す。



岡山県 瀬戸内市民病院 病院事業管理者は「身の丈に合った事業規模への縮小を目指した」と話す。 04年に邑久、長船、牛窓の3町が合併した同市は赤字体質の旧町立牛窓病院に加え、旧邑久町立病院も06年度赤字に。このため牛窓病院を07年に分院、08年には診療所へ“格下げ”し、病床は旧2病院計162床を本院のみの110床に削減。病院機能を本院に集約し、新たに医師1人を増やした。07年度約1億2000万円の経常損失から08年度は3000万円の黒字になるという。 
だが、医師でもある谷管理者は「経営努力で黒字転換しても、現状では地方の公立病院に将来はない」と危惧(きぐ)する。不採算部門の維持や地方の医師不足という根本的問題は依然、解消されていないからだ。 

検証 赤字体質にあえぐ岡山県内公立病院 健全化を模索 民間手法導入や事業縮小 
2009.07.12  山陽新聞      

 救急、へき地医療など地域に欠かせない公立病院の経営難が全国で問題化する中、岡山県内の公立病院も半数が赤字体質に苦しんでいる。救急など不採算部門の維持という“宿命”に、医師不足といった多くの問題を抱えながら、健全化を模索する現状を追った。(内田圭助) 

 高梁市国民健康保険成羽病院(同市成羽町下原)の待合室。薬を手にした農業佐野太一郎さん(88)=同市成羽町下日名=は「わしらにとって、かけがえのない病院じゃ」。糖尿病などのため月に1度、車で15分かけて通う。もう30年になる。 

 1954年設立の同病院は、高齢化率30%を超す旧川上郡(旧成羽、川上、備中町)一帯約1万3000人の医療を担う中核病院。外来患者は年間延べ5万~6万人いるが、2007年度決算は経常損失約4300万円で3年連続の赤字。08年度見込みも同様という。 

 「最大の原因は、派遣元への医師の引き揚げ」と豊田実美事務長。この2年で整形外科、内科医が1人ずついなくなり、外来、入院収益が悪化。病床(現136)削減を検討している。 

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 全国の公立病院はおよそ1000。国によると07年度決算は全体の4分の3が赤字で経常損失は計2000億円に上る。 

 地域の救急医療を担う公立病院は、24時間体制で医師らスタッフを常駐させるコストに収益が見合わない。へき地医療は往診に力を入れるほど経費が膨らむ。この赤字を自治体が補てんするという体制は近年、自治体の財政難で崩壊。病院の統合や民間委託に踏み切る自治体も出ている。 

 総務省は07年、各病院に経営の効率化を促す「公立病院改革ガイドライン」を策定。08年度内に改革プランを出すよう要請し、岡山県内では19病院中18病院が提出した。民間的経営手法の導入や病院の自由・迅速な意思決定を図るなどの内容で、数年以内の黒字化を目指す。 

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 同県内でいち早く改革に着手したのが瀬戸内市民病院(瀬戸内市邑久町山田庄)。谷〓眞行病院事業管理者は「身の丈に合った事業規模への縮小を目指した」と話す。 

 04年に邑久、長船、牛窓の3町が合併した同市は赤字体質の旧町立牛窓病院に加え、旧邑久町立病院も06年度赤字に。このため牛窓病院を07年に分院、08年には診療所へ“格下げ”し、病床は旧2病院計162床を本院のみの110床に削減。病院機能を本院に集約し、新たに医師1人を増やした。07年度約1億2000万円の経常損失から08年度は3000万円の黒字になるという。 

 だが、医師でもある谷〓管理者は「経営努力で黒字転換しても、現状では地方の公立病院に将来はない」と危惧(きぐ)する。不採算部門の維持や地方の医師不足という根本的問題は依然、解消されていないからだ。 

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 地方で深刻化する「医療崩壊」に、国も重い腰を上げた。救急やへき地医療の財源として年間2900億円を措置してきた地方交付税を、09年度は約700億円上積みした。 

 公的支援の有効活用はもちろん、医師の確保や民間のセンスを導入した経営の効率化は公立病院にとって避けて通れない課題だ。 

 公立病院の経営に詳しい城西大経営学部の伊関友伸准教授(行政学)は「地方で望まれることが多い『総合内科医』志望の若い医師は決して少なくない。行政や地域住民が一体となって働きやすい環境を整え、医師を呼び込む必要がある」としている。 

ズーム 

 公立病院改革ガイドライン 多くの公立病院が赤字に陥っていることを受け、総務省が2007年12月、病院事業を行う地方公共団体に対し「公立病院改革プラン」の08年度内の策定を要請した。へき地医療など各病院が果たすべき役割を明記するほか、経営の効率化対策や統廃合などの再編・ネットワーク化、地方独立行政法人化や指定管理者、民間譲渡など経営形態の見直しについて検討を求めた。プランの実施状況は国などが年1回以上調査し、公表する。