東奥日報報道審議会第10回会合 詳報/医療企画に生活者視点を



東奥日報報道審議会第10回会合 詳報/医療企画に生活者視点を 2009.07.04   
  第10回東奥日報報道審議会が6月25日、藁科勝之弘前大学副学長、高橋興青森中央学院大学教授、吉田悦子ファーストインターナショナル取締役ゼネラルマネージャーの3委員が出席して、青森市の東奥日報社で開かれた。(以下抜粋) 



●連載企画「大討論・医療崩壊」/再編肯定に意見偏り 高橋委員/県民の問題共有期待 吉田委員/論点整理し再連載を 藁科委員  

 本社 地域に医師がいない―という医療崩壊。この現状をさまざまな分野の方に語ってもらった連載企画「大討論」を掲載した。 

 高橋委員 医療崩壊については、かねて強い関心がある。「大討論」は、初回に全体的な問題点を整理した後、各専門家の記事が続き、それぞれが興味深い。 

 私自身、この30年間ほどで、今本当に切迫した状況になっている郡部に住んだ経験は、大間町に住んだ2年間しかないが、勤務していた学校で、時々部活動などでけがをする生徒がいた。そういうときに、いろいろなことを考えさせられた。私がいたころの大間は、外科の医師が週1回しかいなかった。医師がいる日にけがをすればラッキーなぐらいで、翌日も処置が必要となるとアウトだった。 

 そういう経験などから、この記事を読み感じたことは、まず「(自治体病院の)機能再編」という言葉を金科玉条のごとく、どなたも言っていること。確かに医師も資源の一つであり、集約してパワーアップしなければならない、という主張は分かる。しかし、それが本当に住民の幸せにつながるのか。 

 この連載でも、ある方が「交通機関も便利になったので」と書いている。「広域」という言葉もよく言われることだ。だが、交通が便利になったのは東京など大都市圏の話で、青森県ではかえって不便になっているのではないか。そういう生活者の視点が、この連載には足りないと感じる。機能再編促進のキャンペーンのごとき内容に少し疑問を持った。 

 さらに、連載では「県や国が進める集約が進まないのは、住民の理解がないから」という論者のトーンもあった。ある論者の意見で注目したのは「不必要な救急は遠慮するように患者側も考えなければならない。これで成功した九州やその他の例が参考になる」という提言。県民にもやれることがあるようだという指摘があれば、ぜひそれを取材して情報提供してほしい。 

 吉田委員 医療はわれわれ市民にとって身近なものであり、常にそれがあるという安心感の下で生活している中で、この記事は非常に勉強になった。 

 現状はこれほど崩壊しているのか。総合病院がある程度整備されている八戸市という中核都市で生活し、過疎地については知らなかったので実情がよく分かった。新たな臨床研修制度が開始され、医局支配が弱まったことが、原因の一つであることも理解できた。 

 私も大きい病気の経験があり、総合病院の医師たちは休みなく労働をしていることを実感している。こういった問題点をみんなが共有することによって、現状が変わっていくという期待を持ちたい。 

 疑問だったのは、連載に開業医の登場、利用する側の一般市民の視点の記事が足りなかったということ。地方と都市の医療格差は広がり、八戸市に住む私の周りの人でさえも「大きな病気になったら仙台や東京に行こう」という人もいる。これも医療崩壊の結果なのだと思う。この記事によって県民がもっと医療の現状を理解して、問題意識を持ってくれればと思う。 

 藁科委員 連載では多角的な視点が用意されたと思う。登場した論者は23人。医療にかかわる幅広い分野ということで評価できる。ただし開業医がいない。開業医はこの事態をどう見ているのか。また勤務医をやめて開業した人はどう思っているのか、知りたい。医療を受ける側の一般患者の意見も紹介されていいのでは。 

 おおむね問題点は明らかになったと思う。今後は、論点を整理してほしい。登場した方々の一致点、部分的・条件的一致点、相違点を明確にして、再整理してほしい。例えば消費税の増税論議。「消費税引き上げ論がある。社会保障費に使うのだから国民に負担を求める、という宣伝文句にだまされるな」という人もいれば、「良質な医療を求めるなら、負担する覚悟があるかと問われている」「消費税率を上げよ」と主張する人もいた。要するに国民の負担増でも意見が分かれている。これは切実な問題で、今後の衆院選の行方を左右する。 

 さらに、医師の地域偏在についても認識は違う。臨床研修制度と地域偏在との関連について、どう意見が割れ、どう一致しているか。このまま終わってしまえば、問題を投げ出されたままになり、読み手はどうしたらいいか分からない。そういう意味で連載を続けてほしい。 

 本社 連載企画「大討論」は、社会にとっての課題を深く論じていただき、それを読者と一緒に考えていこうというのが狙い。特に医療については、大きな政治課題になるということと、読者の政権選択の大きな要因になるのでは、と考えた。いろいろな論者に発言したいことを自由に語っていただいた。論者のばらつきが出た点は反省点にしたい。 

 「機能再編」については、中には「地域医療ありきでなければいけないのに、どんどん効率化を目指すのはおかしい」と主張する方もおられた。しかし機能再編、「(総務相の)公的病院改革ガイドライン」を直接的に批判した人はあまりいなかった。 

 医療はわれわれが取り組むべき最重要課題であり、生活者の視点で今後も取り組んでいきたい。