銚子は、地域医療振興協会がやるということだが、彼らは基本的にリスクを負わないはず。病院としてすぐに再開するのは不可能。



銚子を引き受ける地域医療振興協会は公的な大学の天下り組織と感じられる。また新たなお金の迂回路ではないのか。 
 銚子は、地域医療振興協会がやるということだが、彼らは基本的にリスクを負わないはず。病院としてすぐに再開するのは不可能。それはコメディカルスタッフが全員辞めてしまっているから。そのうえで医師数人の外来からということは可能だろう。しかし、徐々に大きくするということを考えているなら、今と同じように赤字を出すことになる。その負債を抱えると分かったうえで市民が支えていくのでないと再開は不可能だろう。市からの負担は相当のものになると予測される。 



銚子市民はリスクを分かっているのか 医療構想千葉発足 
2009年6月14日 ロハス・メディカル 
 医療崩壊の危機に瀕している千葉県の現場から、医療再生への提言をしていこうというネットワーク的シンクタンク『医療構想・千葉』(代表・竜崇正前千葉県がんセンター長)の設立記念シンポジウムが13日、市長選投票前日の千葉市で開かれた。多彩な顔ぶれが集まり、オピニオンリーダーたちから「敵は日本医師会だ」、「千葉大病院がなければ千葉はよくなる」などと過激な意見が発せられた。(川口恭) 

 会場は135席あったがほぼ満員だった。発起人である増山茂・了徳寺大学学長によると参加者は全部で132人。属性は 


県会議員・市会議員・地方政治関係者あわせて20名弱(共産党を除く与野党全部)、中核病院関係者20名ほど、企業医療や地域医療関係者も20名弱、自治体関係者20名弱、患者団体など20名弱、看護師などコメディカル関係者、製薬会社関係者、法律関係者、学生(ボランティアを含む)10名ほど、出版関係者、厚生労働省医系技官、県医師会理事 
だったという。 

 小松秀樹・虎の門病院泌尿器科部長が『この国に起きている医療崩壊の次のステップは何か?』、亀田信介・亀田総合病院院長が『千葉県の医療崩壊 その処方箋は?』とそれぞれ題して30分ほどずつ講演した後で会場との質疑応答になった。 

 講演そのものも興味深かったが、これは別に機会があればご紹介することとして、ここでは質疑応答の主なやりとりを記す。 

〔会場〕 
 香取市に住んでいる。我々の地域は不名誉なことに医療崩壊の先進地になってしまっている。銚子が閉鎖されて患者が旭中央へ押し寄せ、勤務医が本当に疲弊している。このままでは成田まで含め地域の病院が全部撤退してしまうのでないかとすら言われている。そこで亀田先生に伺いたい。先ほど、旭中央病院が社会医療法人になろうとしたのを議会が否決したと批判されたが、地元の人間からすると、公的な病院が非公務員型になると不採算部門をやらなくなるんでないかという誤解があったようだ。それから、銚子市立総合病院を民間団体に委託して再開しようとしているのだけれど、どのようにすれば再開が可能だと思うかお聞かせ願いたい。 

〔亀田〕 
 旭中央は本当に忙しくやっている。医師たちも限界まで働いている。それでも実質的には赤字。12億円の補助が入って最終的に3億円の黒字になっているわけだから、亀田と同じ民間になれば9億円の赤字だ。亀田の年間予算が370億円から380億円ぐらい。旭中央ぐらいの規模の病院がおかしくなれば、平気で月に数億円の赤字は出てくる。その時に旭市くらいの財政規模で持ちこたえられるか、そこを考えてほしい。 
  
 で、不採算部門をしなくなるんじゃないかという話だが、公的病院がお金を払わない人たちをヘリでどんどん亀田に送り込んでくる。小児だけで毎年2億円の赤字だし、未払い金も毎年8千万円くらいある。ウチ位、公的医療をやっているところが他にあるか。それは設立主体の問題ではなく、病院の志の問題だ。今の旭のメンバーが運営する限り、不採算部門から撤退なんかするはずがない。ただし現に働いている人たちは非公務員型になることに激しく反対するのは間違いないので、そんなに甘い話ではない。いかに現状が危ないかを理解してもらうしかない。 

 銚子は、地域医療振興協会がやるということだが、彼らは基本的にリスクを負わないはず。病院としてすぐに再開するのは不可能。それはコメディカルスタッフが全員辞めてしまっているから。そのうえで医師数人の外来からということは可能だろう。しかし、徐々に大きくするということを考えているなら、今と同じように赤字を出すことになる。その負債を抱えると分かったうえで市民が支えていくのでないと再開は不可能だろう。市からの負担は相当のものになると予測される。 

〔小松〕 
 自治体病院のことに詳しい伊関友伸さんという知人がいる。彼と意見の一致したことがある。自治体病院は、どんなに頑張っても自分たちだけで自立することはできない。首長と議員の資質に依存する。地方議員の中には、病院をシマだと見なして毎日出勤するようなのがいるという。しかも、その議員が病院の納入業者。こんなのでは絶対にやっていけるはずがない。 


〔増山〕 
 銚子を引き受ける団体は公的な大学の天下り組織と感じられる。また新たなお金の迂回路ではないのか。 

〔亀田〕 
 あそこのことをよく知っているわけではない。自治医大OBの方々がやっているというぐらい。それよりは移管の仕方が問題だろう。安房医師会病院は負債も含めて全責任を負う形で受けた。しかし今回の銚子はオペレーション委託だと思う。赤字は市が負うことになるだろう。そうであれば、前と同じで市のリスクは変わらないと思う。 

〔増山〕 
 亀田先生は3つの抜本的な改革と言われたが、これは供給側の話。需要側の問題もあるのでないか。患者教育についてはいかがお考えか。 

〔亀田〕 
 教育とかもあるが、基本は情報共有だと思っている。適正な評価、患者様からの評価が医療機関の淘汰になることが必要だろう。医療者側のやり方を左右するのは診療報酬。その財源論になると、患者様の考え方をかなり左右するだろう。今は財政基盤の弱い保険組合をつぶして統合するようなことをやっているけれど、合併して壷が大きくなればなるほど自分1人ぐらい使ってもいいかという考えが出てきてしまう。ドクターショッピングして、とにかくいい医療を受けたい、と。これは人情だ。そこが自分のポケットマネーに直接紐づけば変わってくるだろう。強制貯蓄のシンガポール型は極端にしても、お互いに緊張関係をもって評価しあう仕組みになれば、もっとよいパートナーシップをつくっていけるのではないか。 

〔竜〕 
 小松さん、あなたの主張の中に出てくる患者理解支援制度とは、この話に関係するものか。 

〔小松〕 
 基本的には透明性を高めるということ。通常時から、医療の限界や不確実性まで含めて説明し、トラブルがあった時の説明も徹底的に行う。昔は何か起こった時に責任追及になってしまったが、今はシステムをどうするかという話にすべきだという流れになってきている。そういうことを患者さん側にもできる限り説明する。何か起きてしまった時は、患者さん側で受け入れられるようになるまで感情的に時間がかかる。そこまでの時間できちんと感情にも対応しないと、その後で大いにこじれて角突き合わせることになってしまう。と同時に病院側でもきちんと検証と説明を行う。できないなら第三者で。その際には、処罰と関連づけないことが大切。そういったものの組み合わせのことだ。 


〔竜〕 
 国民の医療不信を招いたのは、一部の医療機関が隠蔽してきたから。それは間違いなくあった。それが医療費を減額されても構わないんじゃないかという国民のコンセンサスにつながってしまったのは間違いない。今は、どこも隠さずサーっとオープンにしているはず。 

 ただ私なんかも手術で何人も亡くしているけれど、それはミスだと思ってないし、被害者加害者という関係もおかしいと思う。医療で死ぬことがあるのは当たり前。そこは分かってもらったうえで、お互いに緊張関係をもてればと思う。今のインフルエンザの問題にしても、ハッキリ言って大したことないなら病院に来ないでほしい。死にそうな人が来たら燃えるんだけど、来なくてもいい人が来ると疲れるし、それに病院には弱い人が入院しているんだから、そういう人にうつすことになるんだと理解してほしい。そういうことの患者教育は必要かなという気がしている。 

〔会場〕 
 千葉の医療再生のためにアドバイスをいただきたい。 

〔小松〕 
 千葉、埼玉、茨城には共通点がある。2025年の高齢者数のピークに向かって、とにかく医師が一番足りないところ。特に太平洋側は千葉、茨城、福島県の浜通りまでひどく医師が少ない。千葉県の人口は600万人だから割合から言えば医学部が4個あってよい。しかし千葉大1個しかないうえに、千葉大は西しか向いてない。しかも千葉大は他の医局から院長が来ると医師を引き揚げたりするらしい。何をやっているのか。 

 千葉に必要なのは医大。千葉大が西しか向かないならそれで構わないから東と南をカバーできるように1学年200人ぐらいのメディカルスクールをつくったらどうか。千葉県単独でなく、茨城や福島と組んだって構わない。 

〔亀田〕 
 うちも4月に学校法人を立ち上げた。2012年に4年制の看護大学を設置して、この先は介護系にも乗り出す。メディカルスクールも法改正があれば手を上げる。いずれにせよ「IHN」をつくって集中と分散をきちんとすることだ。銚子は、旭が市立病院じゃなければ十分にサテライトでできたはず。あそこは旭がトップ、安房はウチがトップのIHNでやればいい。 

 千葉大の話が出たが、あの大学病院がなければ千葉はもっとよくなる。千葉大もよくなる。アフィリエイトホスピタルとして市中病院の部長を臨床教授にして学生や研修医を送り出せばよいものを、全部抱え込もうとするからおかしくなる。ウチがもしメディカルスクールをつくったとしても亀田を大学病院にはしない。旭、松戸、君津、成田にお願いして、アフィリエイトホスピタルになってもらって、高くはないにしても教授の給料をお支払いして、全県でやっていく。それができたら、まさに千葉大包囲網になってしまう。別に敵対しようというつもりはないのだけれど、なぜウチの3分の2しか症例がないのに、5倍も研修医を集めようなどとするのか。だから研修医が集まらないのだということに早く気づいた方がよい。 


〔会場(県医師会理事)〕 
 医師会へのマイナスイメージがついてしまうといけないので一言。開業医と勤務医は連携が前提だ。 


〔会場〕 
 一般の市井の勤務医が問題に立ち向かおうとする時、立ち去る以外の方策はあるのか。 

〔小松〕 
 いろいろな方法がある。ここに来ている上先生(昌広・東大医科研准教授)は情報を大量に行き渡らせることで世の流れを変えた。大野病院事件の時にはメーリングリストが大いに役立ったと聴いている。 

 でも、そんなことより一番大事なのは選挙だ。 

 それから改善のサイクルが持続していくためには、厚生労働省をチェックできるだけの医師の組織が必要。そのために医師会を変える必要がある。私は開業医を敵だなどと一言も言ったことはない。しかし日本医師会は敵だ。日本医師会は、明らかに勤務医に対して敵対行動を取ってきた。その謝罪も未だにない。 

〔竜〕 
 このシンクタンクの中で議論してネットを通じて発信していくのも大事じゃないか。銚子だって、今度当選した元の市長が大学を誘致するのに100億円使っておいて、病院に赤字が1億円出たからといって医師の給料を下げたのがきっかけで崩壊した。やはり選挙でいい人を選ばないと無理だ。変な人を選んだら、病院なんてあっという間に潰される。基本的に政治家なんてバカなんだから、利口な人の言うことをきいてもらわないと困る。今日来てくださっている政治家の方たちのように地元に密着した人は大事。それが地域の本音。であれば一緒にできる。 

 旭中央の問題に関していうと、旭市民が偉かったからあれだけの病院ができたんじゃないということは忘れないでほしい。諸橋芳夫という1人の医師が東大から寒村の小さな診療所へやってきて一所懸命地域医療をやった。その志に共鳴した医師が全国から集まってあれだけの病院になった。その旭中央病院がやりたいことをさせない旭市民とは一体何なのか。日本一有名な病院が不採算部門を切り捨てるはずなんてあるわけない。バカにしないでほしい。公立病院が働かない職員を抱えているのは事実。私も管理者をしていたからよく分かっている。そういう働かない職員をいかに働かせるかが院長の手腕でもあるのだが、そのためにもIHNを明確にして旭中央の力を発揮できるようにすることは大事だろう。 

 ところで、せっかく上さんが来ているので、闘い方についてひとこといただきたい。 

〔上〕 
 知り合いに1人ぐらい情報発信に長けていそうな人がいるはず。その人に問題点を伝える、そうするとまたその知り合いが自分にできることをする、そうやって連鎖させて色々な方に問題点を知ってもらったらいい。 

 千葉は、お金はあるのに医師が極端に少ないということで飛びぬけちゃっているので、現状を知らせれば、ヤマっ気のある優秀な人たちが勝手に集まってくる。問題点を隠していると誰も気づかれずに終わってしまう。問題点さえ明らかにすれば、解決する人が必ず出てくる。