樋口 紘先生(岩手県立中央病院元院長)のご意見をご紹介いたします。 4年前 総務省・厚労省・文科省 3省で構成された「地域医療の確保と自治体病院のありかた等に関する検討会」( 報告書は2004年12月1日付け)で樋口 紘先生は副座長されました。



 『樋口 紘先生(岩手県立中央病院元院長)のご意見をご紹介いたします。 4年前 総務省・厚労省・文科省 3省で構成された「地域医療の確保と自治体病院のありかた等に関する検討会」( 報告書は2004年12月1日付け)で樋口 紘先生は副座長をされました。山形県立病院再編ネットワーク(置賜総合病院)に関して 私の意見を強く支持してくださったことが懐かしく思い出されます。定年後地位を求めず診療所で1勤務医師としてお元気で働いておられます。脱帽です!』(長 隆) 


★SOS地域医療 インタビュー★(7) 樋口 紘(日新堂八角病院副理事長) 事務作業の見直しを 
2009.01.11岩手日報   
  

 ―地域医療の現状をどう見るか。 

 「どんな過疎地でも人が住む所には生活があり、その人の人生がある。しかし、人は病気を避けて、生きることはできない。人口が少ない地域は患者数が少なく、医療収入も少ない。地域医療は採算が取れず、開業が難しい。だから自治体が赤字を補いながらやるしかない」 

 「近くに病院があれば安心なのは当たり前。しかし、医師や予算などの医療資源は限りがある。その社会的共有財産を上手に使うためには住民の協力が必要だ。医学の限界を超えた要求をしたり、夜間や日曜も関係なく診察に訪れたりするなど、自分本位の国民が増えている。そういう社会をつくったのはわれわれ自身。病気になった時に会社を休んで病院に行けるようなゆとりがある社会になっていない。国民性と社会構造を直さなければならないのではないか」 

 ―県立病院の常勤医がこれ以上減ると、各地への医師応援ができなくなる上、高度医療も提供できなくなる懸念がある。 

 「今の体制では中央病院がカバーするしかない。そうすると、手術や難しい検査は中央病院に集中しているため、専門の医師が応援に行くと、本来の仕事がたまってしまう。専門医が地方に行っても、設備が整っていないため、力を発揮できない。中央病院が医療レベルを下げれば、最後のとりでの高度医療が低下する。このことが県民にとっていいことだろうか」 

 ―医療局の累積欠損金(二〇〇七年度末で約百三十八億円)を減らすための方策は。 

 「自治体病院の赤字の最大要因は人件費の比率が高いことだ。しかし、給与体系の変更は公務員制度のため困難。したがって、事務職は極力減らした方がいい。例えば、医療クラークを増やすよりも、事務作業の無駄をなくすことが先決。薬剤や材料費の高額購入や、建設費が民間に比べて高いことも要因にある」 

 「各病院の意思決定の遅さも問題だ。それは医療局を経由しているからだ。問題解決の極論は医療局の廃止。権限を各病院に分散させ、事務作業を徹底的に見直した方がいい」 

 ―県立病院の新しい計画案をめぐり、県と住民の主張は平行線をたどっている。 

 「今こそ医療局の創業の精神『県下にあまねく医療の均てんを』の原点に立ち返る必要がある。県民は自分たちの命と健康は自分たちで守ることを再認識すること。署名だけでは駄目。何の協力ができるかを考えなければならない」 (終わり) 

(SOS地域医療取材班) 

 樋口 紘氏(ひぐち・ひろし)東北大医学部大学院修了。県立中央病院脳神経外科長、同宮古病院長、同中央病院長などを歴任。現在は盛岡市玉山区の医療法人日新堂八角病院副理事長、全国自治体病院協議会顧問。68歳。福島市出身。 

〔「県民は県の予算の使い道について、優先順位をつけるくらいの高い意識を持ってほしい」と主張する樋口紘医師〕 

  

総務省の検討会が報告書 
2004年11月1日 医療タイムス 

「長井市立病院」(463床)「南陽市立総合病院」(251床)「川西町立病院」(98床)「飯豊町中央診療所」を再編した山形県では、新設した置賜総合病院組合(540床)と、一般病床を50床ずつもつ2病院など4施設から成るサテライト医療施設に分けた。運営しているのは、県と地元の2市2町で結成した「置賜広域病院組合」で、再編によって病床は812床から680床に削減している。 

「富士山に登らればいい」 
 しかし、公認会計士の長隆委員が「サテライト医療施設の2つの病院に残した一般病床は必要だったのか」と説明を求めると、草刈典美委員(山形県健康福祉部健康福祉企画課長、代理)は「県がサテライト医療施設をすべて無床診療所にすると提案していたら、地元は再編計画には納得しなかった」と、必ずしも必要とはいえないものの、住民を納得させるために一般病床を残すのはやむを得ない措置であったことを認めた。 
 このため、長委員はこの日の会合でも「第三者が牛耳って何かしようというわけではない。公正な立場の人が発言することが改革につながる」と主張したが、谷田一久委員(広島国際大学助教授)は「責任を負うのは住民であり、病院経営者。(第三者に任せたのでは)大きな禍根を残す」と反論し、茨常則委員(日本医療文化化研究会主宰)も「(分析の場には)すべて加えたほうがいい」と当事者が議論の中心になるべきだと続いた。 
 この点については、邉見座長が「富士山を登るのにはどの方向からでも登頂できればいい」と、手段に違いはあっても自治体病院の再編、ネットワーク化が達成できればいいと引き取った。報告書には、「わが町の病院がなくなるのはおかしいといった感覚的感情的な判断」は排除するよう求めていることもあり、邉見座長は会合後、「現状が望ましいというのは世間が許さない」と、一定の成果が期待できると強調した。