岩手県立中央病院長などを歴任した日新堂八角病院(盛岡市玉山区)の樋口紘副理事長は「議会も含め、責任のなすり合いでは何も生まれない。



 岩手県立中央病院長などを歴任した日新堂八角病院(盛岡市玉山区)の樋口紘副理事長は「議会も含め、責任のなすり合いでは何も生まれない。 
医師は『もうたくさんだ』と思っている。みんなが『私たちも一緒に医療を守りますよ』となれば、医師は『よし、頑張る』となる。県の役人は命を懸けて住民を説得しなければならない。正面突破しかないんだ」と叱咤(しった)する。 



★SOS地域医療 改革への胎動★(1) 足踏みする議論 再生に「責任共有を」 
2009.05.29岩手日報   
  

 県立五地域診療センター(各十九床)の入院ベッドが休止され、まもなく二カ月が経過する。住民の不安は解消されていないが、深刻な医師不足の中、地域医療を守るための取り組みは動きだした。北海道の事例を交え、改革の胎動を追う。 

(この企画は7回続き) 

 これからの地域医療をどうすればいいのか。 

 先月二十三日から達増知事が出席して始まった県医療局主催の地域診療センター等懇談会。行きつ戻りつの議論が繰り返される。 

 「地元で生まれ、地元で死ぬ。ベッドがなくなって、それができなくなった。知事、あなたも、いつかは死ぬんです」。二十八日の住田町の懇談会でも、やりきれない住民の思いが容赦なく向けられた。 

 二月定例県議会で激しい論戦の末、決着した県立五地域診療センターの無床化だが、懇談会では県議会と同様の議論が再現され、足踏み状態が続く。 

 住民の反発に、「深刻な医師不足の中、やむにやまれぬ苦渋の決断だ」と繰り返す達増知事。県立病院長らも一様に、医師不足、過重勤務の現状を説明し、理解を求めるが、時には住民からやじが飛ぶこともある。 

 不満は、市町村長にも広がる。「この会議の趣旨は何か」。盛岡市で二十五日開かれた盛岡医療圏の地域医療に関する懇談会(県保健福祉部所管)で、田村正彦八幡平市長、民部田幾夫岩手町長らはこう迫った。 

 医療に関する県の会議が乱立し、それぞれの位置付けが見えにくくなっていることを指摘したものだが、不満の本質は県の議論の進め方にある。 

 情報共有を図り、次の取り組みを急ぎたい県、無床化に不安を募らせる住民、どこか釈然としない市町村長。「三者三様」の思いが交錯する。 

 達増知事は「地元にはまず無床化という現実があり、その背後には医師不足があり、無床化によって医師不足の問題が緩和され、住んでいる人にとってメリットがある。この三段構えの議論を理解してもらうのは、簡単なことではない」と覚悟する。 

 県立中央病院長などを歴任した日新堂八角病院(盛岡市玉山区)の樋口紘副理事長は「議会も含め、責任のなすり合いでは何も生まれない。医師は『もうたくさんだ』と思っている。みんなが『私たちも一緒に医療を守りますよ』となれば、医師は『よし、頑張る』となる。県の役人は命を懸けて住民を説得しなければならない。正面突破しかないんだ」と叱咤(しった)する。 

 県立5地域診療センターの無床化を機に立ち上がった県の会議とは 医療局は無床化地域を対象に1月から「地域診療センター等懇談会」を開催している。達増知事は4月23日の一関市花泉町を皮切りに出席。保健福祉部は5月、2次医療圏単位に「地域医療に関する懇談会」を設立し、市町村長、医師会、住民代表らが委員となり、地域医療を守るための協議がスタートした。