山形県立病院 無床化でできる空きスペースを介護施設などとして民間に活用させるための費用を、県が予算化

山形県立病院 
無床化でできる空きスペースを介護施設などとして民間に活用させるための費用を、県が予算化

この春、全公立病院を対象に朝日新聞が実施したアンケートによると、東北地方では回答した108病院のうち、病床削減や無床化をすでに決めている病院が3割を占め、地方別にみると全国で最も多い。このほかに、削減を検討している病院も1割ある。 



(東北の医療)揺らぐ公立病院:1 ベッド消える病棟 3割が削減・無床化 /宮城県 
2009.05.19旭新聞   
  

 公立病院が揺らいでいる。医師が足りない。患者を受け入れきれない。そして収入が減るという悪循環。さらに総務省は、経営改善のため「改革プラン」策定を求め、黒字化が難しい場合は民間譲渡をも検討するよう迫っている。医師不足が著しい東北地方でも、公立病院のあり方を見直す動きが加速してきた。 


 「もっと早く来ていただきたかった」「無床化は本当に残念だ」 

 4月23日、岩手県一関市であった住民懇談会。達増拓也・岩手県知事に厳しい声が飛んだ。市内にある診療所「花泉地域診療センター」など県立診療所5カ所で、4月から計95の入院ベッド(病床)を休止、無床化したことを説明するため、知事はこの日、初めて地元を訪れたのだ。 

 「責任ある判断として、命にかかわることをやっておくべきだと思った」。医師不足を理由に、医師を基幹となる病院に集める必要性を訴える知事。それ以外の医療機関では医師を減らさざるをえず、入院治療は続けられないというのが県の判断だ。一方、身近な医療機関に入院できなくなる不安を訴える住民。議論はかみ合わなかった。 

 その1カ月余り前。知事は県議会の議場で、土下座を繰り返していた。 

 県医療局は昨年11月、「医師不足が続く状況で、地域の医療網を再編して医療の崩壊を防ぐため」として、5診療所の無床化を発表。周辺の住民らは「性急すぎる」と一斉に反発し、県議会に凍結を求める請願を提出した。 

 県政与党が過半数を握れない県議会でも反発は強く、関連予算は否決された。知事はすかさず「身も心も投げ出す」と土下座までして議会に審議のやり直しを求めた。 

 野党会派は「議会の品位を汚した」と知事を批判。最終的には、無床化でできる空きスペースを介護施設などとして民間に活用させるための費用を、県が予算化することなどで矛を収めた。 

    ■   ■ 

 岩手県は、県立中央病院(盛岡市)を筆頭に、全国最多となる26の県立医療機関を運営する。山がちで人口密度の低い地域が多く、民間の医療機関は少ない。財政力が弱い市町村も多かったため、県が初期診療から救急、高度医療までを担う独自の地域医療をつくり上げてきた。 

 それを人材供給源として支えてきたのが、県内唯一の医師養成機関である岩手医大だ。しかし、04年に始まった臨床研修制度は、研修先を選べるようになった研修医を都市部の総合病院に集め、多くの大学病院で医師不足が深刻化した。そして医師不足に直面したほかの医大と同じく、岩手医大は各地の病院に派遣していた医師を引き揚げた。 

 その影響は県立の病院を直撃した。03年に計535人いた常勤医師はこの6年で80人近く減り、09年4月現在457人に落ち込んでいる。 

 医師不足は収入減も招いた。07年度末には累積赤字が約138億円に。「現在の病院規模と機能を維持することは難しい」(田村均次・県医療局長)と、医療の集約化に急速にかじを切った。来春には60床の県立沼宮内病院(岩手町)も無床化する。 

 公立病院の縮小は、岩手県だけの話ではない。たとえば宮城県登米市では、すでに登米病院(98床)を08年から無床に、米谷(49床)、よねやま(53床)両病院も11年度をめどに無床化する方針だ。 

    ■   ■ 

 この春、全公立病院を対象に朝日新聞が実施したアンケートによると、東北地方では回答した108病院のうち、病床削減や無床化をすでに決めている病院が3割を占め、地方別にみると全国で最も多い。このほかに、削減を検討している病院も1割ある。 

 背景には、深刻な医師不足がある。医療法では、患者数によって病院が配置すべき医師数を定めているが、東北地方ではそれを下回る病院が約5割。北海道に次いで高い割合だ。36%の病院が、5年のうちに休診、閉鎖した診療科があると答えた。 

 医師が足らないと、患者も受け入れられない。総務省は病床の利用率が3年続けて70%未満の病院は、無床化など「抜本的な見直し」が必要としている。該当する病院は20%にのぼる。 

 経営難から、運営のあり方を見直そうとする病院も多い。東北地方では、約3分の2の病院が、病院の独立行政法人化や民間譲渡など経営形態の見直しを検討中、または決定済みと答えている。

    ◇ 

 厳しい状況に置かれている東北地方の公立病院。医師不足、財政赤字という危機をどう乗り越えようとしているのか。5回にわたり報告する。 


 ◆キーワード 

 <公立病院改革プラン> 約8割が累積赤字を抱える公立病院に経営改善を迫るため、総務省は07年に「公立病院改革ガイドライン」を策定。自治体に対し、08年度中に改善策をまとめた「改革プラン」をつくり、3年程度で黒字化を達成することや、場合によっては民間譲渡も検討することなどを求めている。 


 ■東北地方の公立病院は今(アンケート結果から) 

              病床の削減・無床化を決定済みまたは検討中 

 東北全体 108/149         43% 

 青森県   22/28          59% 

 秋田県    8/14          25% 

 岩手県   33/33          48% 

 宮城県   22/33          36% 

 山形県   17/23          24% 

 福島県    6/18          50% 


              運営のあり方変更を決定済みまたは検討中 

 東北全体 108/149         67% 

 青森県   22/28          68% 

 秋田県    8/14          50% 

 岩手県   33/33          88% 

 宮城県   22/33          45% 

 山形県   17/23          47% 

 福島県    6/18         100% 


              医者が足りない 

 東北全体 108/149   49% 

 青森県   22/28    55% 

 秋田県    8/14    50% 

 岩手県   33/33    39% 

 宮城県   22/33    55% 

 山形県   17/23    53% 

 福島県    6/18    50% 

 (分数は、分母が調査の対象とした公立病院数、分子はアンケートに回答した病院数。パーセントは回答した病院が対象)