厚生労働省は09年度補正予算案で、設備投資やオンライン請求手続きの委託費への補助として291億円を計上した。



厚生労働省は09年度補正予算案で、設備投資やオンライン請求手続きの委託費への補助として291億円を計上した。 
レセプトのオンライン化は 07年6月の「規制改革推進3カ年計画」で閣議決定された。病院、診療所、薬局が対象で、大病院から順次実施し、11年度までに原則義務化する・・・ 



(現場から)レセプトIT化まだ2割 「投資負担」と医師抵抗 義務化から2年 
2009.05.14朝日新聞   
  
医療費の請求手続きのIT化が遅々として進まない。従来は紙でやりとりされていた診療報酬明細書(レセプト)のオンライン化が義務づけられてから2年。大規模病院に続き、今年度は中小病院も義務づけられた。ただ、オンライン化されたのは全体の約2割。コスト削減が期待されているが、なぜ医療のIT化は進まないのか。(南宏美、南彰) 


 レセプトは医療費の請求書。社会保険診療報酬支払基金による1次審査を経て、健保組合などの保険者に送られる。患者の氏名、生年月日、傷病名のほか、手術や投薬など1カ月分の診療内容が書かれている。 

 グループ会社を含む約6万3千人の社員らが加入する日本航空健康保険組合(東京都)は07年からオンライン処理を始めた。処理するのは毎月約10万件。紙の時代には毎月高さ30~40センチのレセプトの束が30個近く届いた。オンライン化により、処理にかかる期間が約1週間短縮できた。 

 同組合の山本浩治・常務理事は「100%オンラインになれば、自動審査システムを導入して点検を効率化できる」と話す。1次審査をしてもらう支払基金への手数料も紙と比べ1件あたり5円70銭安い。業者への委託費などを含め、月約250万円の削減効果が出ているという。 

 オンライン化の最大の狙いは医療の効率化。健康保険組合連合会によると、1人の患者の治療内容を時系列で点検できるようになる。例えば1度抜いた歯を翌月以降に再び抜いたとして請求するケースや、過剰な検査や薬の処方を見つけやすくなるという。健診データと突き合わせれば病気予防に役立てることもできる。「医療費を減らせれば労使に還元できる」(高智英太郎・医療部長)と期待する。 

 ただ、日航健保のようにオンラインで処理をしているのは約1500の健保のうち48組合。医療機関側のオンライン化が18・4%にとどまり、完全実施されるまで紙とオンラインと混在して効果が小さいとみているようだ。 

 一方、日本医師会はパソコンに不慣れな高齢の医師がいることや、診療所でも数百万円の設備投資費がかかることを挙げ、「地域医療を崩壊させる」と主張。同会のアンケートでは、8・6%の医療機関が義務化になれば廃院を考えていると回答したという。 

 こうした声を受けて、厚生労働省は09年度補正予算案で、設備投資やオンライン請求手続きの委託費への補助として291億円を計上した。 

 大江和彦・東大大学院教授(医療情報学)は「保険者が医療費が適正に使われたかをチェックするのは当然で、オンライン化によって簡単にレセプトを詳細に点検できるようになり、保険者が効率よく運営できるなどメリットは大きい。義務化するなら国は中小医療機関にきちんと財政支援すべきだ」と話している。 


 ◆キーワード 

 <レセプトのオンライン化> 07年6月の「規制改革推進3カ年計画」で閣議決定された。病院、診療所、薬局が対象で、大病院から順次実施し、11年度までに原則義務化する。 

 日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会など医療費の請求側は、希望者のみが導入する「手挙げ方式」を主張。横浜と大阪で義務化撤廃の訴訟も起こされている。政府・与党は今年3月、「自らオンライン請求することが当面困難な医療機関等に対して配慮する」との文言を加えて事実上、義務化を緩和した。