医者不足を解消するのには、医者が来やすい環境にする必要がある・・・



半年前に夕張に来ました。 驚いたことは学会活動、講演、マスコミ取材が多かったこと。実際の現場に触れることができ、コンビニ受診も減少傾向にあり、非常にメリットが多かった。一方で技量不足を感じるなど困ったこともありましたが、医者が来やすい環境が夕張にはありました。 
「来てください」だけでは医者は来ません。花嫁募集と同じです。医者にも説明が必要だと思います。夕張希望の杜は明確なビジョンを示しています。*医療法人財団「夕張希望の杜」 和田靖医師 


紋別・医療フォーラム詳報*地域一体で医療再生*永森医師 医療と福祉の連携必要/和田医師 医者が来やすい環境に/平井院長 「総合内科医」を育てて 
2009.05.12 北海道新聞       
【紋別】市民有志の「地域医療を育て守る会」と超党派の「地域医療を守る地方議員連盟」が主催する「地域医療フォーラムin紋別」が九日、市民会館で開かれた。地域医療再生の方向性を提案した三人の医師の講演内容を詳報する。(竹中達哉) 


*医療法人財団「夕張希望の杜(もり)」 永森克志医師 

  夕張希望の杜は夕張で地域医療再生に取り組んでいます。私は医師が地域に来て二、三年で帰ってもいいという村上(智彦医師)の理念に共感しました。 

  三年前の夕張の話はひょっとしたら今の紋別に当てはまるかもしれません。気軽に受診するコンビニ受診が多く、現場が頑張ってないから、赤字が増えると行政から言われました。医師は頑張っているけど報われない。それで医師が退職し、医療収入が減りました。 

  魚、カニ、貝を乱獲すると漁業収入が減り従事者も減る。漁業が崩壊するのと同じです。漁業再生のためには魚介類の資源回復が必要です。医療も同じで、どうすれば医師を集めるのか考えました。 

  僕らが考えたのは、地域で医師が気軽に働ける環境ができれば医師は来るということ。コンビニ受診の改善を目指そう。数年の勤務を基本としよう。そうすれば、どんな医師が来てもスムーズに働ける環境ができます。 

  まずはコンビニ受診とは何かを住民に知ってもらおうとしました。自分で勉強すれば対処できるものもあります。あとは在宅医療とかかりつけ医を持つこと。「とりあえず医者に行けばいい」というのをやめてもらいました。救急車の出動台数も減りました。 

  地域医療の主役は住民と医療福祉のスタッフです。彼らが医師の働きやすい環境を構築することが自らの利益につながります。今後の地域医療は支えていく医療、福祉が大事です。医療と福祉と連携してやっていくことが医療資源を守っていくことにつながります。 


*医療法人財団「夕張希望の杜」 和田靖医師 

  私は昨年十月まで帯広で外科の専門医でした。外科をやめて地域医療に携わったのは、訪問診療の良さを感じさせてくれる患者さんとの出会いがきっかけです。直腸がんの八十歳の患者さんでつらい目に遭っているのにいつもニコニコ笑顔でした。未経験の訪問診療をして、だんだん行くのが楽しみになりました。最後まで診てあげたいなと思いました。 

  医療を取り巻く環境が変わる中で、地域医療って何だと思うようになりました。学べる場所はどこか。村上智彦医師のことをニュースで知り、半年前に夕張に来ました。 

  驚いたことは学会活動、講演、マスコミ取材が多かったこと。実際の現場に触れることができ、コンビニ受診も減少傾向にあり、非常にメリットが多かった。一方で技量不足を感じるなど困ったこともありましたが、医者が来やすい環境が夕張にはありました。 

  「来てください」だけでは医者は来ません。花嫁募集と同じです。医者にも説明が必要だと思います。夕張希望の杜は明確なビジョンを示しています。 

  医療を守るのは住民の力です。本人が本気にならないと医者も本気になれません。安全はただではありません。行政には煩雑な書類の軽減など医者の働きやすい環境を整えてほしい。将来はどこにいるかは分かりませんが、夕張に来て本当に良かったことは経営、人事などマネジメントの難しさと病院の外の人との連携の大切さを学んだことです。 

*千葉県立東金病院 平井愛山院長 

  千葉県は医療先進県というイメージがあるが、もともと医者の少ない県でした。その中で東金病院は平成十六年四月から二年半で内科医が十人から二人になりました。どんどん大学が医師を引き揚げていった。大学病院自体が人手不足です。新しい医師臨床研修制度が導入されてから、医療供給システムが変化した。初期研修、後期研修も大学を選ぶ人が激減したのです。 

  医師を大学に派遣してもらう時代から、医師を地域ぐるみで育てる時代になりました。若手の医師に自分たちの地域に来てもらうには、どうしたらいいのかを考えなければなりません。若手医師が来たい病院とよく言われるのは、大都会で給料のいい病院。答えはバツです。指導医がいて、研修プログラムが整備され、専門医ライセンスの取れる病院に若手医師が集まるのです。若手の医師は北海道でも全国でも奪い合いです。 

  本質は医師に魅力ある地域づくり、それで地域医療を再生しようというストーリーです。地域住民、行政、医療関係者、医療産業、マスコミ、全員がプレーヤーとなります。市民活動が大事。東金ではNPO法人の「地域医療を育てる会」が活動してくれました。広報誌「クローバー」二万枚を全戸配布して、地域で医師を育てるという意識を市民が持つようになりました。 

  北海道の地域医療で重要なのは総合内科医を育てることです。大学病院と地域病院は役割分担を行い、大学病院は専門医に特化し、地域病院は横幅の広いジェネラリストを育てるべきです。その仕組みをつくった地域が生き残る。今後、道立からこの地域が中核病院を自分たちでやるという話になるのならば、総合内科医を育てるという方向性を持ってもらいたい。これに成功したのが、江別市立病院ですね。 

  この地域でどういう形で地域医療の再生計画をつくるかが重要です。絶対にあきらめない。ダーウィンが言うように「唯一生き残るのは変化できるもの」です。目標をみんなでつくり、市民、行政、議員などが一体となって小さくてもキラッと輝く紋別の医療をつくってほしいと思います。