恵寿総合病院グループは医療とリハビリ、介護、身体障害者支援、特別養護老人ホームを経営し、住民の健康サポート面では七尾市から「けいじゅアスロン」という大型クアハウスの運営を受託している。




恵寿総合病院グループは医療とリハビリ、介護、身体障害者支援、特別養護老人ホームを経営し、住民の健康サポート面では七尾市から「けいじゅアスロン」という大型クアハウスの運営を受託している。能登最大の医療・介護機関であり、同時に地域最大の事業所でもある 




戦略的経営革新のススメ 碓井誠の「サービスイノベーションは領域を超えて」~企業連携でサービス価値を向上 トータルヘルスケアの地域連携 
2009.05.01 日経情報ストラテジー   


 前回取り上げた加賀屋の訪問と同時に、筆者は石川県七尾市にある恵寿総合病院を見学した。病院がある能登半島は全長が100kmで人口は22万人。65歳以上の人口比率を示す高齢化率は北部で36.6%、恵寿総合病院がある中部で28.1%。一方で日本の2025年の高齢化率は30%と予測されている。つまり、能登は高齢化と過疎化の先行地域だ。 

 恵寿総合病院グループは医療とリハビリ、介護、身体障害者支援、特別養護老人ホームを経営し、住民の健康サポート面では七尾市から「けいじゅアスロン」という大型クアハウスの運営を受託している。能登最大の医療・介護機関であり、同時に地域最大の事業所でもある。ちなみに加賀屋は2番目に大きい事業所で、両者で温泉観光とがん健診を組み合せたツアーの提供もしている。 

 恵寿総合病院グループは幅広いヘルスケアサービスを提供するだけでなく、自らのサービス領域を超えて地域医療関連機関との連携を深めている。能登にある100の医療関連機関とネットワーク化を進め、22万人の住民のうち、20万人の個人情報をデータベースで共通管理している。 

企業と地域の連携をITが支える 

 神野正博理事長は能登が高齢化地域であるからこそ、治療後のアフターサービスを重要な戦略に位置付ける。そのため、医療制度と介護保険制度、福祉制度、保健制度で分断されたヘルスケアサービスを、介護のケアマネジャーやソーシャルワーカー(社会福祉士)、訪問リハビリスタッフが「接着剤」となって、サービスの制度間連動と顧客へのトータルサービスを領域を超えて組み立てている。 

 退院がゴールなのではなく、アフターケアが重要だとの考え方だ。20の診療科を持ち、全科の情報を共有できるシステムで支援されたチーム医療体制の確立や、きめ細かなヒューマンサービスを原点とした心身のケア、高度技術と先進の医療機器や施設など様々な特徴が挙げられる。しかも、これらの連動を支えるのがIT(情報技術)である。 

 IT活用は全国に先駆けた取り組みが多い。1994年から診療材料や薬剤にバーコードを付け、発注から納品、使用と在庫の管理ができるオーダーリングシステムを利用している。菱食が開発したソフトを応用し、97年には患者と使用薬剤を結び付けた医療品質の向上と効率化も推進している。この仕組みは年間1億円近いコスト削減を生み、患者を待たせない医療にも貢献している。 

 1998年には医療手続きを標準化した電子クリニカルパスを開始し、治療内容やスケジュールを医師や看護師、患者でオープンに確認して精度向上を図った。2000年には健康ケアから医療、介護、リハビリまでを1つの共通IDでワンストップ対応できる電話サービスセンターも開設。患者サービスや施設間の情報共有と業務連携に効果を上げる。 

 2002年には電子カルテを導入し、医師と看護師、ケアマネジャー、ソーシャルワーカーの情報共有が進んだ。2004年にはインターネットによる電子カルテ参照システムで地域医療のインフラが拡充した。さらにASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)による電子カルテ情報の提供や、海外の病院との連携、がん放射線治療部門の開設にもIT活用を組み込んでいる。 

 能登ではトータルヘルスケアサービスの取り組みを地域生活者起点で考え、全体にIT活用を織り込んで地域や制度の壁を超えている。医療崩壊が地域崩壊につながるという危機感と、医療が地域を支えているという使命感が感じられる。 



フューチャーアーキテクト 副社長 碓井 誠(うすい まこと)氏 
1978年10月 セブン-イレブン・ジャパン入社。96年5月 取締役情報システム部長。2000年5月 常務取締役情報システム本部長。2004年1月 フューチャーシステムコンサルティング(現フューチャーアーキテクト)入社。3月 取締役副社長に就任(現職)。2008年9月 独立行政法人産業技術総合研究所、研究顧問(サービス工学研究センター)に就任(兼務) 


領域を超えるサービスイノベーションの6つのポイント(全6回) 

 第1回 : 革新はサービス産業の枠超えて 

第2回 : 顧客情報がサービスを改善する 

第3回 : 地域共生型が少子高齢化の秘策 

第4回 : おもてなしの心をバックアップ 

第5回: 企業連携でサービス価値を向上 

第6回 : サービスを「科学」する時代へ 

●恵寿総合病院グループのトータルヘルスケアサービス