教育機関である大学として重要なのが、使命感を持った学生の育成です。医学生と看護学生がペアになって、舞鶴、京丹後、福知山などの府北部6病院で地域医療実習を行っています。

教育機関である大学として重要なのが、使命感を持った学生の育成です。医学生と看護学生がペアになって、舞鶴、京丹後、福知山などの府北部6病院で地域医療実習を行っています。現場を知り、住民と触れ合い、医師である前に人間としての温かい心を培えば、医師を求める地域の思いが理解できるはずです。・・府立医大の山岸久一学長   
  

[松尾総局長が聞く]山岸久一さん、医師不足どうする?=京都 
2009.04.16読売新聞   
  

 
◇くらし 

 ◆地域医療守る学生育成 

 地方の医師不足が深刻化するなか、来年度から、府内の研修医が削減されようとしている。府立医大の山岸久一学長(65)に現状と地方支援の取り組みを聞いた。(聞き手・京都総局長 松尾徳彦) 

 --京都府は人口10万人あたりの医師数が全国トップです。ところが、京都市など都市部に偏在しており、府北部や南部では全国平均を大きく下回るなど地域格差が際立っています。 

 2004年度から始まった現行の臨床研修制度が、全国的に大きな矛盾を生んだと考えます。新人医師に2年間、幅広く七つの診療分野を体験する臨床研修を義務付けたことで、即戦力の医師が全国で1万6000人減った計算になります。そのうえ、研修先を自由に選べるようにしたため、研修医が都市部の一般病院に集中しました。 

 それまで新人医師の研修を担ってきた各大学の医局も、将来の就職先として見た場合に「給与が安い」「雑用が多い」などのイメージから、敬遠されています。大学病院の人手が足りず、やむなく周辺の公立病院に派遣していた医師を引き揚げ、地方の医師不足を加速させる結果になったのです。 

 --地域格差の解消を目的に、厚生労働省は来年度の制度見直しで、都道府県ごとに研修医の定員上限枠を設ける方針です。京都府は現在の研修医(08年度274人)を30%減らす全国で最も高い削減率で検討されています。 

 人口あたりの医師数が全国トップだから減らすというのは、地域への理解が全くない中央官庁の発想です。京都市は本学と京都大医学部があり、卒業後の生活の地としても人気があるので、医師が集まりやすい。医師数の中には、ほとんど臨床(診療)に携わっていない両大学の研究者も含まれています。こうした地域事情を考慮せず、府全体の研修医を減らせば、府北部などでますます医師が足りなくなってしまいます。厚労省の方針には、府や府医師会も反発しています。 

 --府立医大は「地域貢献」を中期計画に明記しています。具体的な取り組みをお聞かせください。 

 医局で受け入れる研修医が4割も減りましたが、現在も府北・中部の27病院に320人の医師を派遣しています。舞鶴市の公的4病院の再編問題では、舞鶴市民病院の院長に本学出身者が就任し、私も(再編計画を審議する)委員会顧問をお受けしました。将来的に急性期基幹病院を1か所に集約する案が今月初めに示されましたが、本学としても地域医療のため、舞鶴市の意向を踏まえ協力する考えです。 

 教育機関である大学として重要なのが、使命感を持った学生の育成です。医学生と看護学生がペアになって、舞鶴、京丹後、福知山などの府北部6病院で地域医療実習を行っています。現場を知り、住民と触れ合い、医師である前に人間としての温かい心を培えば、医師を求める地域の思いが理解できるはずです。 

 大学には臨床だけでなく、高度な医療技術を構築する研究機関としての役割もあります。臨床、研究、臨床を繰り返して成長し、地域医療を守り、医療技術の発展にも尽くす医師を育成していきたいと思っています。 


 ◇やまぎし・ひさかず 1970年府立医大卒。専門は消化器外科。2003年に附属病院長に就任し、06年4月から現職。府「明日の京都」ビジョン懇話会委員。京都がん協会副会長。「研修医外科周術期管理マニュアル」(共著)などの著書がある。