医療側と住民が一緒に支えることが必要。行政や医療者、住民が定期的に意見交換ができれば。東近江地域で進む多職種連携に、住民が加わる形が理想。

医療側と住民が一緒に支えることが必要。行政や医療者、住民が定期的に意見交換ができれば。東近江地域で進む多職種連携に、住民が加わる形が理想。核になるのは医療側と住民をつなぐ保健師だ。在宅医療に積極的な米原市の畑野医師(地域包括ケアセンターいぶき)を訪問し、医療の充実で地域おこしをするとの発想が印象的だった。満足する医療を提供する地域は存続できる。そのためにも、住民参加の仕組みを考えたい。 

守れ 地域医療 第3部 識者インタビュー(上)滋賀県健康福祉部参与(前滋賀医科大学長) 吉川隆一氏(70) 住民参加で自立策を 
2009.04.14京都新聞
   
  
 昨年七月に始まった連載は、一部で滋賀県の医師不足の現状と医師の働き方などを描き、二部で、医師や行政と手を携え、地域医療を支える住民の姿を追った。三部は在宅療養にスポットを当てた。完結編となる四部では各部のテーマに即し、湖国の現状に詳しい識者に話を聞いた。(滋賀本社 岡本壮) 

 
-滋賀県の地域医療をどう見る。 

 医療福祉を考える懇話会の活動で昨年、県内の病院や老人施設など約五十カ所を訪ねた。医師や看護師不足は全県的な問題だ。湖西や湖北はもちろん、大津、湖南圏域も充足はしていない。大津の人口十万人当たりの医師数は三百人。一見、足りているようだが、ここには滋賀医科大の研修医らが多く含まれている。産科や小児科に加え、救急も医師が足りない。地域の中核病院が大変で、大津日赤の医師からは疲労困憊(こんぱい)する切実な訴えを聞いた。滋賀では救急受け入れ不可の事案が少ないが、現場が踏ん張っているからだ。看護師不足では、診療報酬で有利になる七対一看護を実現しようと大病院が大量に看護師を採用し、中小病院が打撃を受けている。 

 
-滋賀医科大学長時代には、地域医療はどう映っていたか。 

 医師派遣要請はあったが、ここまでの厳しい現状とは知らなかった。大学から見た地域医療は氷山の一角で、様々な問題の存在に認識を新たにした。滋賀医科大学は三十五年前、県民の猛烈な誘致運動で開学したが、国立大学の性格上、県の医療政策にうまく組み込まれてこなかった。同大学が送り出した医師は約三千人。県内勤務医の三分の一を占めるが、院長など病院幹部は少ない。後輩らが滋賀の病院に残ってもいいと思えるような社会的評価も必要だ。 

 -県内病院は京都など他府県の大学医局人事の影響が大きい。 

 京都府も北部の医師不足は深刻と聞く。大学に医学部がなかった滋賀では京都や奈良、岐阜から医師を供給する状態が百年以上続いた。滋賀の県外依存度の高さは医療面にとどまらないが、自立自存の姿勢で地域医療を守るべきだ。 


 -その方策は。 

 医療側と住民が一緒に支えることが必要。行政や医療者、住民が定期的に意見交換ができれば。東近江地域で進む多職種連携に、住民が加わる形が理想。核になるのは医療側と住民をつなぐ保健師だ。在宅医療に積極的な米原市の畑野医師(地域包括ケアセンターいぶき)を訪問し、医療の充実で地域おこしをするとの発想が印象的だった。満足する医療を提供する地域は存続できる。そのためにも、住民参加の仕組みを考えたい。 

=3回掲載の予定です。 

 きっかわ・りゅういち 1963年大阪大学医学部卒。79年滋賀医科大学講師、95年教授。2001年より昨年3月まで学長。同年4月から現職。専門は糖尿病性腎症の臨床・研究。滋賀県が昨年6月に立ち上げた有識者会議「滋賀の医療福祉を考える懇話会」の事務局メンバー。