現場のスタッフはもう体力的にボロボロな状態であり、その結果として「大量退職という事実」に繋がっているのだと身をもって感じております

現場のスタッフはもう体力的にボロボロな状態であり、その結果として「大量退職という事実」に繋がっているのだと身をもって感じております 
メールより 小樽病院破滅への道 (2009/04/04小樽ジャーナル)・・・遅きに失したが 北海道新聞が小樽市民病院の惨状を報道し始めた とはいえる。 

 3月24日から3日間に渡り、北海道新聞(朝刊)の小樽しりべし版にて連載された「医 わたしは看護師」について、現場スタッフの目線で感じたことを述べたい。 

 「上」はとてもいい視点で書いていました。職員からも「あぁ よく書けていて良い記事だね。」と口々に言っていました。なかなか現場の看護師の視線で書く記事が少ないですが、よく代弁してくれたと感じていました。 

 しかし、「中、下」の記事は大変がっがりしました。まず、総師長の言葉「患者の行動で疲れることはない」と書いてありましたが、それは本気で言ってるのかと思いましたね。現場のスタッフはもう体力的にボロボロな状態であり、その結果として「大量退職という事実」に繋がっているのだと身をもって感じております。 

 これまで何人か総師長が代わりましたが、スタッフのなかでは誰に代わっても同じだろうという考えもつ人が多いです。現場の実態を把握していない数々の発言に対し、まさにスタッフの事を考えていないのだなと、皆が感じています。「うら若き乙女」だけでなく、同様に、現在働いているスタッフも大事にする必要があるように思います。 

 また、総師長が部長職になっても大量退職という流れに歯止めをかけることはできないでしょう。なぜならば、この記事を通して、上とスタッフとの考えには隔たりが大きいという事を痛感したからです。ましてや、病棟の閉鎖により、管理職の人員がどうみても余っているのに、人員が不足している現場になぜまわさないのか。副総師長は2人も必要なのか。ただの高給取りです。人件費の削減が必須な情勢のなかで、非常に無駄があると感じませんか。それならば、現場で働けるスタッフを増員し、忙しい現場を少しでも緩和して欲しいものです。この事実を知った上でやりがいをどう見出せばよいのか。これから先の不安は全く拭えません。 

 「人間は忙しいから不満なんじゃない。認めてくれないから不満」と書いてありましたが、現在の小樽病院は、ご飯を食べる暇もない程忙しい。まさに「忙しさにも不満」があるのだ。 

    


<医 わたしは看護師>上*大量退職*「患者本位」維持に苦闘 
2009.03.24 北海道新聞        


 午前八時半。ナースステーションに看護師十数人が集まった。手元の記録を見ながら、深夜勤者が日勤者へ、入院患者の情報を引き継いでいく。「家族が帰った後、暴れました」「手術したことを覚えていません」「ペットボトルのふたが閉まっているのに何度も飲もうとします」 

 三月初旬、市立小樽病院四階の一角。外科、婦人科、眼科の患者三十一人が入院する。高齢者が多く、認知症も珍しくない。三十分後、受け持つ患者個々の最新情報を頭にたたき込み、日勤者は足早に病室に向かう。 

 点滴、与薬、採血、血圧の測定、検温、体位交換、ベッドメーキング、医師の回診サポート。するべきことは山のようにある。めまぐるしく動かないと仕事が遅れる。だから移動は早歩きで廊下は常に慌ただしい。決して止まらない、休まない。ミスを起こさないようにと気も張る。 

 とはいえ相手は生身の人間だ。思うようにいかないこともある。 

*踏ん張る現場 

 午前九時半。看護師の小刀祢(ことね)保子さん(35)が「お風呂行きましょうか」と声をかけた八十代の男性は「微熱がある。体がこわい」と拒否した。 

 別の時間帯には「家に帰りたい」と廊下をフラフラと歩く認知症の高齢者もいた。患者の想定外の行動は多く、対処に時間がかかる。結果、こなすべき仕事が滞る。 

 だが、小刀祢さんはすぐにベッドでの清しきに切り替えた。別の看護師も認知症の患者の話を時間をかけてなだめた。「相手を考え、最大限できることをするのが看護」と小刀祢さん。そうやって「患者のために」と懸命に踏ん張っている看護師の現場がある。 

*先行きに不安 

 そんな中、病院では仲間が次々と辞めていく異変が起きていた。本年度、三月末予定も含めた退職者は四十三人。前年度の一・五倍に跳ね上がった。中でも昨年十二月から今年三月までの直近の退職者が三十二人と全体の74%に及ぶ。 

 きっかけは昨秋の呼吸器内科休診だった。「病院の売りは呼吸器と泌尿器。その一方が崩れ、先行きへの不安感が覆ったのは事実」と原田悦子総看護師長(54)は唇をかむ。専門医二人が退職し、後志管内唯一の結核病棟が休止された影響は患者だけでなく、看護師の心理にも微妙な影を落とした。 

 加えて休診に伴い入院患者が減り、だぶついた看護師が定員割れの別の病棟に振り分けられた。呼吸器内科で磨いたスキル(技術)が途中で断たれたばかりか、未経験の診療科に回るストレスものしかかった。 

 三十代後半の“戦力世代”を中心に、雪崩を打つように大量退職が広がった。その大半が「疲弊感」を口にして去って行った。 

                   ◇ 

 小樽の市立病院で、屋台骨を支える看護師の退職が相次いでいる。現場でいま何が起こっているのか。 



<医 わたしは看護師>中*人手不足*都市部病院が人材奪う 
2009.03.25 北海道新聞        

 三月中旬の真夜中。市立小樽病院(樽病)の四階病棟でナースコールが鳴った。午前零時二十分、零時半、零時三十一分。数分おきに鳴る。そのたびに看護師が懐中電灯を片手にナースステーションを飛び出し、病室に向かう。だが、すぐに戻ってくる。 

 身体が動いただけで反応するセンサータイプのナースコールが作動したようだ。急増する認知症患者向けに取り付けられている。鳴れば、無視するわけにはいかない。 

 それでも「今日は静かな滑り出しですね」と、深夜勤の看護師は気にするそぶりも見せない。原田悦子総看護師長(54)も「患者の行動で疲れることはないんですよ」と言った。 

*夜勤月10回も 

 だが、現場には不満がくすぶる。一つは給与だ。市の財政再建の一環として本年度から始まったボーナス削減で働き盛りの三十五歳は夏冬合わせて二十四万五千円下がった。前年度からは月額給料の10%削減(二〇〇三年度比)も始まっている。シングルマザーとして二人の子どもを育てる四十代の看護師は「子供を教育して生活するには、給料減はもう限界」と吐露する。 

 大量退職で労働環境も悪化するばかりだ。先の看護師は「人が減って休みも減った。それなのに夜勤の回数は増える。疲れが取れない」と悲鳴を上げる。 

 ある看護師は「夜勤は月八回が十回になった。朝、『熱が出た』と電話して休んだこともある。うそを言ってでも自分を守らないと倒れてしまうと思った」と打ち明ける。 

*人員補充に壁 

 人員を補充しようにも、今春の採用は六人。本年度の退職者四十三人は埋まらない。 

 その背景として、診療報酬が増額される「7対1看護」体制が挙げられている。国が二〇〇六年度の診療報酬改定で創設した。入院患者七人に看護師一人を配置する手厚い看護体制の病院には、高額の診療報酬(入院基本料)が払われる。「10対1」「13対1」「15対1」と段階が下がるほど診療報酬は減る。札幌など都市部の病院が看護師の大量募集をかけ、一気に争奪戦が激化した。 

 〇七年春に北大病院が二百二人を増員したのをはじめ、市立札幌病院は新年度に八十六人を採用予定など、大病院がなりふり構わず突っ走る。 

 樽病、第二病院ともに「7対1看護」を維持しているが、「看護師の欠員があっても、その分、患者が減少しているため」(樽病事務局)なのが実情だ。新病院建設構想が凍結し、建物の老朽化も進む中、「ここ数年は(都市部の病院に)根こそぎ看護師を持っていかれた」(原田総看護師長)。打開策は見当たらない。 



 
<医 わたしは看護師>下*やりがい*登用、経営参画の道を 
2009.03.26 北海道新聞        

 「うら若き乙女を引き留めるためには華が必要」 

 三月中旬、市立小樽病院(樽病)で、原田悦子総看護師長(54)は看護師の大量退職に歯止めをかけたい思いをこう表現した。建物の老朽化、新市立病院建設の先送り、給与減…。着飾る要素に乏しい中、“うら若き乙女”に、どうやりがいを持ってもらうかが鍵を握るのだという。 

 そのヒントになりそうなのが看護師の副院長登用だ。近年、増加傾向にある。 

 患者本位の病院を目指すのが第一の目的だが、病院職員全体の六割を占める看護師を経営責任のある副院長に据えることで、意識向上や活性化につながるとされる。 

*増える副院長 

 全国病院事業管理者等協議会(事務局・長崎県病院局)によると、昨年五月末時点で看護師が副院長を担う病院は二〇〇四年度比四・八倍の二百四十六病院に急増した。 

 道内でも市立札幌病院は〇六年度、三人いる副院長の一人に看護師を起用した。昨春、看護部長から昇格した村田加代子副院長(58)は「『ああ、看護師がやっと認められた』とうれしくなった」と当時を振り返る。 

 それまでは、病院経営について何か提言しようにも、看護師を下に見る封建的な医者の壁にはばまれ、声が届かないことが多かった。しかし、院長や副院長などで構成するトップ会議に看護師が初めて入り、「患者サービスなどに大きな変化」が生まれたという。 

 診療科にとらわれず、たとえば呼吸器内科が満床ならば整形外科で入院できるような空きベッドの有効活用、院内投書箱の設置と患者満足度調査への活用、待合室で妊婦さんが楽に休めるマタニティーチェアの導入。いずれも患者目線に立った看護師の提案が反映された。村田副院長は「『患者をまるごと受け入れる』教育を受けてきた看護師だからこそ、患者サービスで力を発揮できる」と力を込める。 

*改革は正念場 

 樽病、第二病院ともに看護師の副院長登用はまだ俎上(そじょう)にも上っていない。だが、今春から両病院を統括する病院事業管理者に就任する札医大の並木昭義教授(65)は「将来的には考えている」と話す。「人間は忙しいから不満なんじゃない。認めてくれないから不満が出る。だから一生懸命にやった人には相応の評価をする必要がある」と看護師を重用するため評価を見直していく構えだ。 

 その一歩として、市も四月からの機構改革で、総看護師長を部長職に昇格させる。看護師にどうやりがいを持ってもらい、大量退職を食い止めるか。取り組みはまさにこれから正念場を迎える。 

(この連載は平田康人が担当しました)