高知医療センター前院長 瀬戸山元一 被告 有罪

 



高知医療センター前院長 瀬戸山元一 被告 有罪 

今回の判決は全国の自治体に少なからぬ影響を与えそうだ。高知県外のPFI病院では契約の見直しも起きている。本来の効果さえ疑問視され始めているのだ。 
 だが、事件の背景に県と高知市のチェック態勢の甘さがあることも忘れてはならない。県民医療の中核施設として何より「信頼の回復」が急がれる。 



高知医療センター汚職で有罪 前院長に高知地裁 
2009.03.18 共同通信   
  
高知医療センターの汚職事件で、収賄罪に問われた前院長の元同志社大教授瀬戸山元一(せとやま・もといち)被告(64)に、高知地裁(伊藤寿(いとう・ひさし)裁判長)は十八日、懲役二年、執行猶予四年、追徴金約百八十万円(求刑懲役二年、追徴金約百八十万円)の判決を言い渡した。弁護側は控訴する方針。 
  
センターは民間資金やノウハウを活用するPFI方式を導入した初の公立病院として、県立と高知市立の病院を統合して二〇〇五年に開院した。 

 判決理由で伊藤裁判長は「設計変更の中心的立場だった被告が多額のわいろを受け取ったことは、工事全体の公正さに対する社会の信頼を損ねた」と指摘。 

一方で「より良い病院をつくるために相応の努力や貢献をした」と執行猶予の理由を述べた。 
  
弁護側は、瀬戸山被告に設計を変更する実質的な職務権限はなく、わいろとされる家具などは購入したものだと無罪を訴えていた。 
伊藤裁判長は「職務権限はあり、当初から家具などの代金を支払う意思はなかった」と退けた。 
  
判決によると、瀬戸山被告はセンター運営会社の負担を減らすため施設工事費を削減するとともに、工期に遅れが出ないよう設計を変更。 

運営会社を構成する不動産会社の元社員二人=贈賄で有罪確定=から〇四年十二月と〇五年一月、家具など三百万円相当を受け取った。 
 瀬戸山被告はこの日、スーツ姿で入廷。ほとんど身動きせずに判決を聞いていた。 



以下 ぐり研ブログ 引用させていただきました 
2009年3月19日 (木) 

墜ちた偶像 前高知医療センター院長瀬戸山氏に有罪判決 

最近地方自治体病院で流行中のPFI方式については以前にも取り上げましたが、実績を見る限りではやはり世の中うまい話ばかりではないのだなといったあたりが正直なところではないでしょうか。 
PFI方式と言えば昨今郵政絡みで何かと話題になることも多いオリックスが手がけた高知医療センターがその走りと言うことですが、こちらも例によって全くうまくいっていないようです。 

高知医療センターと言えばひと頃病院再生のカリスマなどと自信満々で落下傘降下してきた初代院長の瀬戸山元一氏が予想通りに大コケをかました挙げ句に(実質)解雇された点ですっかりケチを付けてしまいましたが、その後瀬戸山氏が収賄で逮捕されるに及んでカリスマも落ちるところまで落ちたなという感もあります。 
報道された範囲でもなかなかに華々しい瀬戸山氏の行状については「勤務医 開業つれづれ日記」さんあたりでも過去に詳しく取り上げていらっしゃるので参照いただければと思いますが、その判決が昨日出たということですので地元紙の記事から紹介してみます。 



高知医療センター汚職 瀬戸山被告に有罪(2009年03月18日高知新聞) 

高知医療センターのPFI事業をめぐる汚職事件で、収賄罪に問われた前院長、瀬戸山元一被告(64)=京都市左京区=の判決が十八日、高知地裁であり、伊藤寿裁判長は被告側の無罪主張を退け、懲役二年、執行猶予四年、追徴金約百八十五万円(求刑懲役二年、追徴金約百八十五万円)を言い渡した。弁護人によると、被告側は控訴する方針。 


〝カリスマ〟の影なく(2009年03月18日高知新聞) 

「被告人を懲役二年に処する」――。約四十分にわたって淡々と読み上げられた高知医療センター汚職の判決文。その内容には随所に不可解、不自然、不合理といった言葉が織り込まれた。 
無罪を主張し続けながらも、それがことごとく退けられた厳しい内容に、かつて〝病院経営のカリスマ〟と呼ばれた前院長の瀬戸山元一被告(64)は体を震わせた。  



【前院長有罪】損なわれた社会の信頼(2009年03月19日高知新聞) 

 高知医療センターのPFI事業をめぐる汚職事件で、収賄罪に問われた前院長、瀬戸山元一被告に対し、高知地裁は執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。約百八十五万円の追徴金も命じた。 
 判決によると、同被告は二〇〇四年十二月と〇五年一月、センター建設工事の設計変更で便宜を図った謝礼の趣旨と知りながら、オリックス不動産の元社員二人=いずれも贈賄罪で有罪確定=からプラズマテレビやソファなど三十点、三百万円相当の家具家電を受け取った。 
 民間の資金とノウハウを活用するPFI事業は、官民がより密接に結びつく。高知医療センターの汚職事件では、瀬戸山被告の実質的な職務権限の有無とともに、わいろとされる家具家電に代金が支払われたかどうかが争点となった。 
 判決は「専門知識を持つ被告人の了解が前提とされ、被告人の意向が最重要視されていたというべき」と被告の権限を認定。家具家電についても「(払ったとする)額や回数、場所があいまいで、不可解」と被告の主張をことごとく退けた。 
  
その上で「巨額を投じた本件工事に対する社会の信頼を損ねた」と被告の行為を厳しく断罪した。
 被告側は控訴する方針だが、被告の「公私の別の甘さ」はたびたび問題視されてきた。 
開院前に業者同伴の米国視察旅行に参加し、旅費を旅行代理店側に全額負担させていたことも明らかになっている。 
 今回の収賄容疑はそれ以降のことで、自覚と反省が十分だったのかという疑問がある。一方で被告の医療界への貢献も無視できない事実だ。 
 院長を務めた京都・舞鶴市民病院では経営改善で累積債務を解消した。島根県立中央病院でも移転新築に際し、全国初の「電子カルテシステム」を導入するなど経営手腕は高く評価されてきた。量刑理由にはこうした実績が考慮されたようだ。 
  
今回の判決は全国の自治体に少なからぬ影響を与えそうだ。県外のPFI病院では契約の見直しも起きている。本来の効果さえ疑問視され始めているのだ。 
 だが、事件の背景に県と高知市のチェック態勢の甘さがあることも忘れてはならない。県民医療の中核施設として何より「信頼の回復」が急がれる。 

瀬戸山氏と言えば開院前の説明会では現場医師達の話に全く聞く耳持たずで何のための説明かとさんざんだったとか、一応院長外来の枠を取っていたものの休診ばかりで何の意味があるのか誰にも判らなかったとか、患者さん中心の病院どころか患者さん無視の病院と大評判を取った高知医療センターを作り上げて大ブーイングだったとか、高知では何かと話題が豊富ではあったようです。 

特に現場スタッフ無視の姿勢が今に続く過酷な同センターの勤務状況を作り上げた一因ではないかとも思うのですが、このあたりの実情は以前から高知新聞が「医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科」で救急当直張り付き体験という意欲的な連載で取り上げているので是非一読いただければと思います。 

連載の中でも近隣の救急病院である高知赤十字病院と近森病院のコメントは疲弊する全国の公立病院に対する示唆に富む内容で引用させていただきますが、特に「外来の患者呼び出しも医者にやらせる」などとも側聞する素晴らしい診療態勢を作り上げたと自慢していた瀬戸山氏にとってはどう聞こえたことでしょうかね。 
現場の声に耳を傾け、現場が動きやすいシステムを作る、医療崩壊と言う危機的状況に対する最も基本的な処方箋はそんな簡単なところにあるんじゃないでしょうか。 

第4部 驚きの「防波堤」高知赤十字病院(2)全く違うシステム(2008年04月12日高知新聞)  

 「うちでは夜中に呼吸器内科を呼ぶことはありません。肺炎や低酸素血症のひどい症例や、呼吸器不全の急性増悪が来た場合、救急部が挿管や呼吸管理をして、その日はそれで大丈夫。翌朝、呼吸器の先生に引き継げばいいんです」 

 経験豊富だけに、高知赤十字病院(高知赤十字病院)の救急部長、西山謹吾医師(50)の言葉は明快だ。救急外来当直は救急部、外科、内科、その他が各一人。これに研修医が加わる。救急車は救急部がすべて対応する。 

 「消化器内科は呼ぶ時があります。例えば、内視鏡のクリップが必要な消化管出血。どんどん血が出て、内視鏡操作が要るような場合は遠慮なく呼ばさせてもらいます」 

 「脳外科は、脳内出血は全部呼びますが、朝方に来られた軽症の脳出血は、僕らで降圧して止血剤打って、朝の八時ごろ脳外科の先生に『こんな患者さんが入院してますよ』と連絡するんです」 

 骨折でも、手術が不要と判断したら、整形外科医には連絡するが、自分たちでできる処置は済ませ、翌朝に引き継ぐ。 

 「何とか各科の先生方の負担を減らしてあげたいと思ってるわけです」 

 合理的なシステム。しかし、それでは自分たちが大変そうだが、「それほど感じませんね。不安なら呼びますから。不安に思わないから呼ばないだけ」ときっぱり。 

 救急医は瞬時の決断力が勝負。西山部長のはっきりしたものの言い方はまさに救急医そのものだった。 

 救急部のスタッフは七人。毎日、昼間は救急車に対応し、そのうちの二人が引き続いて当直に入る。一人が救急外来当直、もう一人がICU当直。三日に一回、当直が来る。 

 「かなりきついんですわ」と西山部長。横にいた内科医が「そのおかげで私らはすごく安心なんです。患者さんの急変で呼び出されても、病院に駆け付ける前に救急部が診てくれてますから。それで何人もの患者さんが助かっているはずです」 

 高知医療センターの救急ICUは基本的に各専門科の主治医管理となっているため、患者が急変した場合は当直医だけでなく、各主治医も呼ばれる。救急外来も、夜間に専門科の医師が呼ばれることが多く、その結果疲労をため込んでいる。 

 では、「防波堤」の高知赤十字病院の救急医たちはいつ休むのか。「僕らはね、当直明けの日は院長のご厚意により、昼すぎに帰れるんです」と西山部長。 

 勤務ローテは初日が「日勤→そのまま当直」、二日目が「引き続き昼すぎまでの勤務」、三日目が「日勤のみ」。つまり、仕事はきついが、三日に二日は一定量の睡眠が確保できるのだ。 

 「僕は当直明けでも、ほかの仕事があるから帰りませんけど、若い者は無理やり帰らせてます。年休込みで三連休もある。そういうのをしないと、子供のいる連中は困るでしょ。参観日や運動会は絶対休ませます。メリハリ付けてあげないと、やっていけません」 

第4部 驚きの「防波堤」近森病院(5)医師に雑用させぬ(2008年04月16日高知新聞)  

 「これを見てください。百床当たりの医療スタッフの数です」 

 県内最大の民間救急病院、近森病院(高知市大川筋一丁目、三百三十八床)の近森正幸院長(60)と川添昇管理部長(60)は資料を出した。 

 高知医療センターと近森の、医師と「コメディカル」(看護師、薬剤師、管理栄養士、リハビリスタッフら)を比較した十八年度の数字だ。 

 高知医療センターが医師十七人、コメディカル九十二人に対して、近森は二十一人と百四十四人。コメディカルの数は近森が五十二人も多かった。その差は医師を大切にしている「証拠」なのだという。 

 「医師には医師しかできない仕事だけやっていただくんです。ほかはコメディカルが補助する。つまり、チーム医療で労働生産性を上げているんですよ。高知医療センターは、医師が雑用までやってるから大変なんです」 

 院長の指摘は、思い当たる点もあった。 

 高知医療センターの患者が転院する際、病院の救急車で運ぶことがあるが、これに医師が付き添うのだ。看護師で事足りるのだが、看護師に余裕がないから医師が乗るという。昼間の大事な時間に、遠い場合は往復五、六時間かかることもある。転送用の看護師さえ配置すれば済むのに、もったいない話だった。 

 医療ソーシャルワーカー(MSW)も高知医療センターには三人しかいない(本年度から一人増)。患者の相談に乗り、退院が近づけば転院先も探す。それを高知医療センターでは、多くの科の医師が自ら行っている。これも大きな負担だ。近森には八人いる。 

 そして院長は続けた。 

 「なぜこれほどコメディカルが必要か、分かります? 救急はね、人を大量に投入する必要があるからなんですよ」 

 近森病院は本県の救急病院の草分け。昭和三十九年、救急病院の法制化とともに県内で真っ先に認定を受け、県民の命を救ってきた。また、医療体制の充実度を調べる「日本医療機能評価機構」の認定も国内でいち早く受けるなど、取り組みは先進的だ。 

 近森院長もまた、たたき上げの「ミスター救急」だけに思いが強い。 

 「救急医療では、医者は夜中も呼び出されて手術もしないといけない。人手が倍以上要るわけです。ところが、今の高知医療センターの人員体制は高度医療専門型。がんや小児、周産期、移植などの専門医集団が一次と二次の救急をさせられているところに、脳外科の先生に代表されるような悲劇が起きているんです」 

 では、近森はどうしているのか。 

 「極端な話ね、うちは救急医は救急の仕事だけです。整形外科の医師は手術に徹する。循環器科は血管内治療に力を傾注する。そうすれば医師の専門性も高まるし質も上がりますよね」 

 ただし、それが過度になると、一本の高く細い棒になって倒れかねない。その防止のために、周囲を質の高いコメディカルが支え、束になってレベルの高い医療を築いているのだという。 

 「高知医療センターの先生方の超勤が二百時間だなんて。医者が何もかもやってたら燃え尽きますよ。医師は貴重な『医療資源』。大切にしないと。残業代で医師がもう一人、雇えます。このまま行くと、高知医療センターは人も経営も破たんしかねないんじゃないですかねえ」 

ちなみに開院以来赤字続きの高知医療センターではセンターは報道によると「医業収益が当初の見込みに届かない一方、薬品などの材料費が抑制できない状態で、今年度末に約7億6000万円の資金ショートに陥る見込み」なんだそうです。