鳥取大医学部付属病院救命救急センター、当初1人月5~6回だった当直(夜間)勤務は月8~10回まで増え、1人当たりの夜間・休日の緊急呼び出しも急増。



鳥取大医学部付属病院救命救急センター、当初1人月5~6回だった。当直(夜間)勤務は月8~10回まで増え、1人当たりの夜間・休日の緊急呼び出しも急増。若手2人の辞職理由は「体がもたない」ということでした。 同センターが後任を探したが、希望者はなく、付属病院の他科も人手不足で応援を増やすのは難しかった。教授と准教授は「センターが壊れるぐらいのショックがないと現場の窮状が伝わらない」と辞職を決めた。 


全救急医、抗議の辞職 鳥取大の教授ら4人「限界」 
2009.03.14朝日新聞   
  

 鳥取大医学部付属病院(鳥取県米子市)の救命救急センターに勤務する救急医4人全員が3月末で辞職する。4人には医学部の教授と准教授も含まれ、教授らは「地方の救急医療の現場は体力的にも精神的にも限界」と訴えている。同センターは同県西部で、重篤患者に対応できる唯一の救急施設。後任の救急医はまだ2人しかめどがたっておらず、4月以降のセンターの機能に不安の声が上がる異例の事態となっている。(重政紀元) 


 辞職するのは、同センター長で鳥取大医学部救急災害科の八木啓一教授(54)と中田康城准教授、若手医師2人の計4人。若手医師は昨年夏に年度末での退職を申し出て、教授と准教授は昨年末から今年1月にかけて辞職の意思を大学に伝えた。 

 同センターは04年10月に開設。06年前半には専任の救急医7人と付属病院の他科からの応援医師2人の9人態勢だったが、退職が相次いで昨年4月から専任救急医師が4人、応援医師が3人の7人態勢に減り、年間900人の患者を受け入れてきた。 

 センターによると、当初1人月5~6回だった当直勤務は月8~10回まで増え、1人当たりの夜間・休日の緊急呼び出しも急増。若手2人の辞職理由は「体がもたない」だった。 

 同センターが後任を探したが、希望者はなく、付属病院の他科も人手不足で応援を増やすのは難しかった。教授と准教授は「センターが壊れるぐらいのショックがないと現場の窮状が伝わらない」と辞職を決めたという。 

 救急医不足の背景には、04年度に始まった「新医師研修制度」もある。研修医が自由に研修先を選べるようになったことで都市部の病院に移るケースが相次ぎ、年間四十数人いた同大医学部での研修医は06年には半分以下に減少。研修後、救急災害科の希望者は5年間で今回辞職する若手医師2人だけだった。さらにセンターは老朽化した処置室の整備を大学側に要求したが実現していない。 

 付属病院の豊島良太院長は「04年の国立大学法人化以降、補助金が5年で計約10億円減額された。設備の更新もままならず、民間病院のように高報酬で医師を招くこともできない」と話す。 

 同病院によると、教授と若手医師1人の後任しか決まっていないという。4月から他科の医師約10人が交代でセンターに入るため、受け入れ自体には支障はないとしている。だが、他科で対応してきた時間外の軽症患者(年間約1万2千人)もセンターで受け入れる運用になる予定だ。 


 
◆「国は実情を知って」 

 八木啓一教授に、救急医4人が一斉に辞職する理由を聞いた。 

 --4人そろって辞職する事態になった経緯は 

 センターは24時間、医師2人態勢が必要。私と准教授は学生や消防隊員への教育もあり、救急医だけではとても当直を回せない。他の診療科から交代で医師を出してもらいながら、私も多い時で月4回当直してきた。他の診療科では教授が当直することなどないことだ。昨夏に若手2人が「下積みばかりで体がもたない」と辞職を申し出たことで事実上、センターの診療は維持できなくなった。 

 --救急医のなり手はいないのか 

 救急医療に熱意を持った学生がいても、厳しい労働環境とセンターの貧弱な設備を知ると進路を変えてしまう。各診療科の専門医だけでは患者の治療方針を決めるのは難しい。まずは救急医が重症患者の蘇生をし、症状に応じた専門医に引き継ぐことで的確な治療が可能になる。残念ながら救急医の役目が理解されていない面もある。 

 --地域医療への影響をどう考えるか 

 (4人の辞職で)住民が不安を抱くのは本当に申し訳ない。私たちも好んで辞めるのではない。肉体的にも精神的にも限界だ。問題は鳥取大だけの話ではない。地方ではどこでも起こりえる。一つの大学や病院だけではどうにもできない。国には現場の実情を知ってもらいたい。 


(関連情報) 

[どうなる・どうする]三重大に交付金6億円 地域医療再生へ=三重 
2009.03.14読売新聞  
  

 
◆県市町村振興協「学生を育て確保」 

 県市町村振興協会(理事長=水谷元・桑名市長)は、地域医療に従事する医師を確保するための施策として、新年度から6年間、三重大医学部に毎年1億円ずつ交付することを決めた。県の「ポジティブ・スパイラル・プロジェクト」の一環で、過疎地に赴任してもらうだけでなく、地域医療に対する意欲を学生のうちから育てるのが狙いだ。医師不足が深刻さを増す中、地域医療の再生に向けた特効薬となるだろうか。(田中宏幸) 

 ■過疎地で実習 

 交付対象となる医学部の「医学・看護学教育センター」は、医学教育のカリキュラム作成や教育方法を考案する機関で、専門スタッフ5人が在籍する。新年度からは、協会からの交付金を活用してスタッフを増やし、カリキュラムの充実を図りたい考えだ。 

 すでに講義の中で、地域医療の現場で活躍する医師の講演を月に一度開催し、やりがいや魅力を直接学生に伝える機会を作る計画や、長期休暇時に、へき地へホームステイしてもらう構想も出ている。 

 同学部で、大学病院や過疎地の病院での本格的な臨床実習が始まるのは5年生以降だが、新年度からは現場での医療研修を1年生にまで広げる。駒田美弘医学部長は「医師としての技術を学ぶ前の低学年時から、現場の医師の講義や、過疎地での実習を肌で経験することで、医師としての心構えを持ってもらいたい」と語る。 

 ■格差是正へ連携 

 県医療政策室によると、県内の人口10万人当たりの医療施設に従事する医師数は、2006年末時点で177・9人で全国37位。保健医療圏別に見ると、中勢・伊賀の304・6人に対し、北勢153・4、東紀州は140・8人と、地域間格差が広がっている。さらに、04年に導入された臨床研修制度により、新人医師が都市部の有力病院に集中するため、人材不足に陥った大学医局が地方に派遣した医師を引き揚げる傾向にある。同室は「今年度はさらに引き揚げの影響で、へき地にとどまる医師が減る可能性が高い」とみる。今年度の同学部卒業生も、98人中、県内に残ったのは38人にとどまり、まだまだ拡充が必要な状況だ。 

 交付金に充てられるのは、協会の宝くじの収益金による基金約70億円の一部。県が抱える諸問題の解決のために基金を活用しようと、06年、県や市町の財政担当者や学識経験者ら10人が集まり「基金の在り方検討委員会」が設置され、効果的な使い道について話し合いが重ねられてきた。協会の松田敏洋・総務課長は、「基金を活用したカリキュラムを通じ、実地研修により地域医療を学生が体感することが、医師確保につながれば」と話している。 

 一方で県は、医学生の研修先として御浜町の紀南病院に地域医療研修センターを設置するため、450万円を新年度当初予算に盛り込んだ。修学資金貸与制度や地域枠の定員増などに加え、協会が基金の交付に踏み切ったことは、県民にとって心強い取り組みだ。県と大学の連携により、地域医療の充実に成果が表れるか、期待と注目が集まっている。 


 
〈ポジティブ・スパイラル・プロジェクト〉 

 医師の確保や医療の地域格差是正を図るため、県と市町、三重大が連携して地域医療に従事する医師を育成する取り組み。〈1〉都市部の病院から地域病院に医師を短期間派遣する地域医療支援システム〈2〉地域医療研修センターを紀南病院に設置する地域医療研修システム〈3〉県市町村振興協会が三重大に対して基金を交付する医師育成体制の充実--の3本柱からなる。