榛原、焼津の両病院は内科系の外来診療について、「原則として開業医からの紹介状がなければ診察しない」と受診制限を設けることを決めた。さらに限られた医師の負担を軽減するため、急性期を過ぎた患者に対しては開業医への逆紹介を進める予定・・・

 



 榛原、焼津の両病院は内科系の外来診療について、「原則として開業医からの紹介状がなければ診察しない」と受診制限を設けることを決めた。さらに限られた医師の負担を軽減するため、急性期を過ぎた患者に対しては開業医への逆紹介を進める予定・・・・
榛原、焼津の診療制限が周辺病院にどんな影響を及ぼすのか。患者の集中、医師の多忙化、医師退職という「負の連鎖」が心配されている 


医師不足、迫る危機感 内科、紹介状で外来制限 志太榛原・東遠 /静岡県 
2009.03.11朝日新聞 )  
  

 地域医療の危機が叫ばれるなか、県内でも志太榛原、東遠地域の医師不足が深刻になってきた。榛原総合病院は7月には内科系の常勤医が2人だけになる見込み。この4月に計10人の医師が退職する焼津市立総合病院とともに、内科系の新患外来は、開業医の紹介状がないと受け付けてもらえなくなる。脳梗塞(こうそく)などの救急対応も難しくなり、地域医療を守る体制づくりが急務になっている。(根岸敦生) 


 牧之原市相良総合センターいーらで2月28日、市民対象に、榛原総合病院の現状についての説明会が開かれた。 

 同病院では、循環器科の医師3人が浜松医大に引き揚げられ、4月から内科系の常勤医が診る診療科は呼吸器科と消化器科の2科だけとなる。7月からは内科系常勤医が3人だけになる見込みだ。 

 昨春、循環器科の常勤医が不在になった焼津市立総合病院も4月に内科医計9人が去り、後任は補充できないままだ。 

 循環器内科医がいなくなるのをきっかけに、別の科の医師が去っていくのには理由がある。まず心臓疾患は急変への速やかな対応が必要であること。また、循環器系の医師は外科手術で、麻酔の可否など全身状態の管理に欠かせない存在であるためだ。 

 榛原、焼津の両病院は内科系の外来診療について、「原則として開業医からの紹介状がなければ診察しない」と受診制限を設けることを決めた。さらに限られた医師の負担を軽減するため、急性期を過ぎた患者に対しては開業医への逆紹介を進める予定だ。 


 ●脳神経外科、急患対応できず 

 医師不足の影響は外来の受診制限だけではない。深刻なのは、榛南地域や東遠地域が脳神経外科医の空白域になることだ。 

 脳神経外科は脳出血や脳梗塞など一刻を争う疾患を扱う。菊川市立総合病院はもともと常勤医は不在で、榛原総合病院も1人だけいる医師が4月末で退職。御前崎総合病院は3人いた医師が4月から1人になる。どの病院も救急患者には対応できなくなる。 

 このため、救急患者が出た場合、東遠地域は掛川、磐田、浜松方面へ、榛南地域は島田、藤枝、静岡方面へ搬送することになる。御前崎総合病院の大橋弘幸院長は「今後はヘリでの救急搬送も考えなくてはいけない」と話す。 

 急患に備え、県は今年度中に「医療ネットしずおか」で脳神経外科疾患の受け入れ可能な病院を事前登録し、即時に搬送先を想定できるシステムを構築する予定だ。登録範囲は静岡から浜松まで。静岡、志太榛原、中東遠、西部と四つの2次医療圏を視野に入れないと、救急医療態勢が築けないのが現状だ。 


 ●「負の連鎖」懸念の声 

 新卒医は04年から、医局の意向に関係なく研修先を選択できるようになった。この制度が医師不足を招いたと指摘されているが、それでも地方の病院は、医師確保のために各医局との関係に頼らざるを得ないのが現状だ。 

 医療関係者は、志太榛原や中東遠、富士などのエリアを「すき間」と指摘する。箱根以東ならば首都圏の医大、天竜川以西ならば中部圏の医大から医師派遣が望める。ところが、このエリアは県内唯一の医大・浜松医大に頼らざるをえないからだという。 

 現在は浜松医大自身が新卒医の確保に懸命といわれる。そのしわ寄せが地域の公立病院に及び、同大OBが院長を務める榛原、菊川、御前崎でも医師不足が深刻になっているのが実情だ。 

 2月5日の志太榛原中東遠サミット後、石川嘉延知事は「志太榛原の4公立病院は機能分担しながら存続させる。経営改善に向け県内のモデルケースにする」と述べたが、具体的な施策が打ち出されたわけではない。 

 榛原、焼津の診療制限が周辺病院にどんな影響を及ぼすのか。患者の集中、医師の多忙化、医師退職という「負の連鎖」を心配する声もある。 

 藤枝市立総合病院の毛利博院長は「状況によっては藤枝も制限せざるをえなくなるかもしれない」。島田市民病院の服部隆一院長も「心臓疾患など早く専門医が診た方がいい例もある。原則として患者は広く受け入れていきたいが……」と話す。 


 ■志太榛原、東遠の各公立病院の常勤医数

        藤枝  島田  焼津  榛原  菊川 御前崎 

 病床数    654 536 572 408 270 302 

 総常勤医数   79  80  70  42  28  12 

 ◇主な内科系診療科 

 総合内科     1   5   5   1   0   5 

 呼吸器内科    3   6   1   2   0   0 

 消化器内科    7   5   4   1   3   0 

 循環器内科    7   8   0   2   3   0 

 血液内科     1   0   1   0   0   0 

 神経内科     1   0   2   0   0   0 

 心療内科     1   0   0   0   0   0 

 血液リウマチ科  0   1   0   0   0   0 

 膠原病リウマチ科 2   0   0   0   0   0 

 糖尿病内分泌内科 0   3   1   0   0   0 

 腎臓内科     0   1   1   0   0   0 

 小児科      9   4   7   3   2   0 

 ◇主な外科系診療科 

 外科       9   8   7   4   5   4 

 整形外科     6   7   8   5   5   0 

 形成外科     2   2   3   2   0   0 

 脳神経外科    3   5   4   1   0   1 

 呼吸器外科    3   3   0   2   0   0 

 心臓外科     2   0   0   0   0   0 

 産婦人科     0   1   7   4   2   0 

 泌尿器科     3   3   4   2   2   1 

 眼科       4   2   2   1   0   0 

 耳鼻咽喉科    2   0   3   0   1   0 

 皮膚科      1   1   1   2   1   1 

 麻酔科      1   5   0   3   0   0 

 (4月1日時点での見込み数。前期研修医は除く。各病院による)