「PFIは病院経営の足かせになる危険性をはらんでいることを認識すべきだ」。全国で採用、導入が検討されているPFI方式の病院事業に対し、報告書は警鐘を鳴らしている。



「PFIは病院経営の足かせになる危険性をはらんでいることを認識すべきだ」。全国で採用、導入が検討されているPFI方式の病院事業に対し、報告書は警鐘を鳴らしている。
 PFI事業というよりも『単なる包括委託』に過ぎない・・・起債でまかなっていれば、当初数年間は元本の支払いが猶予されるうえ、金利返済は半分で済んだとみられる。なぜ金利の高い民間資金を選んだのか。 



病院PFI、収支計画と契約に甘さ 近江八幡市が検証報告書 
2009年3月30日 京都新聞 


 近江八幡市はこのほど、市立総合医療センターのPFI(民間資本活用による社会資本整備)事業の検証報告書をまとめた。PFI契約解除に至った原因について「市の収支計画の甘さと契約の稚拙さが原因。PFIは運用次第では足かせになる」と総括した。 
  
報告書は市病院事業管理者代理者の槙系院長を中心にセンター事務局職員が作成した。 

 資金不足に陥った原因について「医業収益を極端な右肩上がりで見込んだ一方、契約によりSPC(特別目的会社)への支払額が固定化され、診療報酬改定などで収益を達成できず赤字になった」と、収支計画の甘さに起因すると結論づけた。 
  

契約の問題点として、総額契約のためSPCの利益が保証され、民間の意欲を引き出せなかった、と指摘。「民間に任せただけで、民間の活力やノウハウが発揮されると期待した甘さがあったかもしれない」「PFI事業というよりも『単なる包括委託』に過ぎないとの解釈もあり得る」とした。 
  
また、30年の長期契約なのに、社会情勢の変動への対応を十分に想定できていなかった点も挙げた。 
  
公債を活用せず、整備費全額を民間から調達して金利負担が重くなった点について「当初から民間資金活用を想定し、総務省から起債検討の照会があった際も変更しなかった」と経緯を説明。 

サービスを評価するモニタリング体制を整備できなかった理由については「PFI見直し協議で滞った。 
契約前に整備しておく必要があった」とした。 
  
事業が失敗に至った責任の所在は明記せず「PFIへの理解が市、SPCとも未成熟だった」と触れるにとどまった。 
  
報告書は市議らに配布したほか、4月以降、市の広報紙やホームページに概要を掲載する予定。2006年10月開院のセンターは、PFI方式で運営してきたが、経営難に伴いPFI契約を解除、09年度から市の直営とすることが決まっている。 



病院PFI、失敗の原因を検証:近江八幡市が報告書 
2009-03-17 朝日新聞 
  
■制度への理解不足 
■起債使わず / 支払い総額を固定 

 近江八幡市は、病院の運営を民間事業者(SPC)に委ねるPFI方式を全国で初めて本格的に導入した市立総合医療センターが経営難に陥り、PFI契約の解除にいたった過程を検証した報告書をまとめた。 

PFI法施行から10年たち、全国の自治体で導入されているPFI事業は現在300件以上ある。近江八幡市の反省はPFIの問題点を浮き彫りにしている。(中村憲一、日比野容子) 

 病院の経営を圧迫した一番の要因は、施設整備費(約145億円)にかかる金利負担約99億円の支払いだ。 
 整備費はSPCが銀行から借りて調達し、市に対し、SPCの利益分などを上乗せして支払いを求める。 

起債でまかなっていれば、当初数年間は元本の支払いが猶予されるうえ、金利返済は半分で済んだとみられる。なぜ金利の高い民間資金を選んだのか。 
  
00~01年当時の市議会では、病院事業関連の起債枠が少なくなるため、国に起債申請しても認められない可能性があることや、起債対象外の部分に一般財源を充てる必要があることなどが理由として説明されていた。 
  
しかし、報告書によると02年度ごろ、総務省から市に「起債を使わないのか」という照会があり、起債利用の可能性はあったと指摘する。 

当時の担当者の話として「選定事業者を公募し、優先交渉権者を決定した後だった」と、SPCとの交渉が大詰めを迎える段階で資金調達の方法を蒸し返すことができなかったと推測される理由を紹介。 

「前例がない中、すべてを民間資金でまかなうのがPFIとの思い込みがあった」と、制度への理解不足が背景にあったと総括した。 
  
報告書は、PFIの契約に多くの問題点があったことも指摘している。 
  
最も大きな問題点は、30年契約を結んだSPCへの支払総額があらかじめ決められていたため、経営の質や効率を追求する意欲が働かない仕組みになっていたことだ。 
  
報告書は「実際の医業収入に連動し、そのうち何%かをSPCに支払う形の契約にしていれば、SPCの経営参画意識やコスト削減意識を引き出せたかもしれない」と分析した。 

「民間に任せただけで民間の活力やノウハウが発揮されると期待した甘さがあった」と反省点を挙げた。 
  
20~30年の長期契約が基本のPFIを病院事業に導入することには否定的な見解を示した。 
診療報酬が見直されるたびに医業収入が変わるだけでなく、医師や看護師不足で数年先も見通せない現状で、30年先の収益構造を正確に予測して契約を結ぶのは困難だからだ。 
  
「PFIは病院経営の足かせになる危険性をはらんでいることを認識すべきだ」。全国で採用、導入が検討されているPFI方式の病院事業に対し、報告書は警鐘を鳴らしている。