財務相の諮問機関である「財政制度等審議会」の西室泰三会長は5月18日、同審議会終了後の記者会見で、来年度予算編成の基本的考え方(春の建議)の中に、病院と診療所間の診療報酬の配分の見直しなど4点を盛り込む考えを示した。



「春の建議」に診療報酬の配分見直しなど―財務相の諮問機関である財政制度等審議会 
  2009/5/18 22:19 キャリアブレイン 


 財務相の諮問機関である「財政制度等審議会」の西室泰三会長は5月18日、同審議会終了後の記者会見で、来年度予算編成の基本的考え方(春の建議)の中に、病院と診療所間の診療報酬の配分の見直しなど4点を盛り込む考えを示した。 

 西室会長が挙げたのは、診療報酬配分の見直しのほか、▽医療従事者間の役割分担の見直し ▽混合診療の解禁 ▽診療報酬に医師の熟達度を反映させる仕組みの導入―の各項目。 

 会見で西室会長は、「地域や診療科目だけでなく、病院勤務医と開業医の負担格差についても解消する必要がある」と強調。「今一番過重な労働を強いられているといわれている病院勤務医の負担軽減に確実につながる」よう、病院への診療報酬の配分を手厚くする必要性を指摘した。 

 医療従事者間の役割分担については、病院勤務医の負担を軽減するため、看護師や薬剤師などコメディカルの活用が必要だと主張。「スキルの高い看護師などの養成を考えなければならない」と述べた。 

 また、「医療従事者の多くが混合診療の解禁を求めている」と述べ、混合診療の解禁についての議論の必要性を示した。 

 さらに、現在の診療報酬について「医師の経験熟達度を反映していない」と批判。「これからは専門医が大事になる」「米国では専門医の報酬が高い」と述べ、診療報酬に医師の熟達度を反映させるような制度を導入する必要性も示した 




財政制度等審議会 財政制度分科会 
財政構造改革部会 

〔議事要旨〕 
1.日 時 平成21年5月11日(月)14:00~16:00 

2.場 所 財務省第3特別会議室(本庁舎4階) 

3.出席者 

(部会長) 
西室泰三 

(委員) 
井堀利宏、榧野信治、河野栄子、高木剛、竹中ナミ、田中直毅、富田俊基、吉川洋、石橋明佳、岩崎慶市、大塚義治、神田敏子、嶋津昭、土居丈朗、三木繁光、宮本勝浩、保田博、赤井伸郎、五十畑隆、伊藤麻美、今井敬、香西泰、河野龍太郎、田中豊蔵、俵孝太郎、水口弘一、渡辺恒雄 (計28名) 

(敬称略) 

(財務省) 
真砂主計局次長、香川主計局次長、木下主計局次長、主計局総務課長 他 

4.議 題 

○社会保障 

○有識者ヒアリング 

― 亀田隆明 医療法人鉄蕉会理事長 

:「病院経営が抱える諸問題」 

○地方財政 

○国家公務員給与 

5.議事内容 

○まず、事務方より、社会保障に関する補足説明が行われた。 

○次に「病院経営が抱える諸問題」というテーマで亀田理事長よりヒアリングを行った。亀田理事長の説明の要点は以下の通り。 

医師会は開業医の考えを代表する団体であるが、自分自身は病院経営の観点から考えを述べたい。 

日本の医師数は、OECD諸国と比較して低い水準だが、アメリカやカナダとはそう変わらないし、イギリスと比較するとむしろ高い。無闇に医師を増やせばいいわけではないが、効率性を見ながら一定数の医師の追加は要。 

一県一医大の完成に伴い、医師の過剰が指摘され、医学部の入学定員が削減されてきたが、今年10%の増加が実現したので、近い将来には適当な規模となるのではないか。 
医師総数に対する女性医師の割合の増加も、医師不足の潜在的な要因となっている。 

医師の偏在の要因は、医師のモチベーションとライフサイクルの問題。 
必ずしも、田舎だから医師が不足するわけでもなく、医師のライフサイクルやモチベーションに即してどうしたら定着してくれるかを真剣に考えるべき。 

地域が必要とするのは、 
一般医ができるある程度のシニアのドクターや専門性の高い専門医。 
専門医については、第三者機関による明確な評価基準を設け、専門医のレベルを高めるべき。 
また、高度に専門性を有する専門医と、一般の開業医が行う外来診療に対する報酬とが同じだという、現状の報酬体系はおかしいのではないか。 

高齢化の進展に伴う、急性期病院における介護必要度の高い患者の急増が看護師を疲弊させている。 

日本の現在の社会保障制度は、55歳定年、平均寿命60歳代を前提とされたものであり、見直しが必要。 

日本の病院数、病床数は明らかに過剰。 
急性期病院の数を大幅に減らし、病院間の役割分担を明確にすべき。 

薬学部は4年制から6年制になったのに、卒業生のスキルには変化がない。薬剤師等のコメディカルの活用を進めるべき。 

一連の診療報酬のマイナス改定は、病院経営に厳しい影響。 

実際には、全ての自治体率病院は、赤字というのが現実ではないか。 
自治体立病院を始め公的病院では、診療報酬だけでは足りない分を、他会計からの繰入で賄っており、財政基盤の弱い自治体が開設する病院の多くが崩壊の危機に直面している。診療報酬制度だけでは医療が成り立たない状態にある。 

自治体病院は公務員給与の体系で運営されており、診療報酬が下がっても給与水準は下がらないが、民間病院では、不採算分を医師の過剰労働と職員の低賃金の犠牲の上に成り立たせているという不平等が存在する。 

また、自治体病院では重要ではないポストに長期間勤務する准看護師の給与は、公務員給与と同様に勤続年数に応じて増加するため、看護師の給与より高いというねじれがおきている。 

日本では、診療報酬算定の際にキャピタルコストが参入されていないため、公立病院ではその分が税金で賄われるのに対し、民間病院では自己資金で負担しているという問題がある。 
他方、福祉医療機構による制度融資も限度額が小さすぎて使いにくい制度となっており、民間病院にとってはマイナスである。 

現行の診療報酬体系では、例えば小児科など損益が成り立たない診療科が存在しており、不採算な医療を強いられている。 
しかし、本来公的病院が行うべき不採算分野のサポートは、欧米の公的病院では行われているが、日本では、特に地域医療において、民間病院が不採算医療を行っている場合も多い。 
民間の診療所は、売上高が低いため消費税の対象外になっているが、ある程度大規模な病院では、消費税そのものが経営の大きな負担となる。 
医療を、医療費というコストから健康というバリューへパラダイムシフトするべき。 
地域内で多数の医療関係機関が連携して単一の事業体をもち、機能分化して地域医療を支えるIHN(インテグレーテッド・ヘルスケア・ネットワーク)の構築が必要ではないか。 


○これに対する委員からの主な質問及び意見は以下のとおり。 

民間病院のキャピタルコストの問題は、病院関係者や中医協においてどの程度理解されているのか。 

混合診療の原則自由化については従前から賛成だが、現状の議論はどうなっているのか。 
開業医と勤務医の格差は、診療報酬の改定によってどの程度是正可能なのか。 
いわゆる「第二医師会」をつくるべきという主張についてどう考えるか。 
IHNという構想は、大きな事業体がある地域だからできるのか。 
混合診療については、反対の立場である。患者の立場で見たときにどうかという議論が必ずしもなされていないと感じている。 
(これに対し、亀田理事長から、 

今まで厚生労働省や中医協の内部だけでしか議論されていないように思う。 
ただし、病院経営について、開業医が中心である医師会に理解してもらうのは無理であり、財務省も含めた国のレベルで考えるべき問題ではないか。 

混合診療に反対している人がどこにいるのか不思議。 
医師会という話もあるが、大半の若い医師や病院勤務医で混合診療に反対する人はいないと思う。 
そもそも患者にも不利益であり、何が反対の本質的な理由なのかわからない。 
ただし全く規制なしに認めるのは無理があるので、ネガティブリストはしっかり作ったうえで考えるべき。 

診療報酬は抜本的な改正が必要。そのために、専門医制度をしっかり確立すべき。 
今は専門医が報酬の低さや師弟教育などのために、元専門医として開業している。総合医として普通に稼げるようなシステムにしないと専門医は育たない。 

公益法人の見直しが行われているが、政治活動ではなく医療政策のためのしっかりした見直しをし、医療そのものを患者の立場で見る組織が必要。 

IHNはどこでも可能である。 
経営体は関係がなく、地域の医療資源の機能統合、集約がポイント。 
民間病院中心でも、大学病院中心でもよい。 
ただし、4つか5つの市で一つの集約された病院に医師を集めないと成功しない。市ごとに別々の病院を持つということは考え直すべき。 

自分が混合診療の自由化を主張するのは、ビジネスとしての意見ではなく、患者の目線から見た医療者の立場から、不都合だという意見である。 
反対意見を封じるつもりはないが、率直に言ってなぜ反対するのかよくわからない。