津市の救急出動は年間1万一千件を超えるが入院の必要がない軽症患者が占める・・・



津市の救急出動は年間一万一千件を超えるが、そのかなりの部分を入院の必要がない軽症患者が占める。消防関係者は「軽症患者が二次救急病院へ運ばれてしまうと、『処置中』を理由に、次の患者の受け入れを断られることが増える」と頭を悩ませる。助けたいのに搬送先が決まらない救急隊と、受け入れを断らざるを得ない病院。どちらも苦悩している。 
全国的に自治体病院は赤字経営にあえいでいるが、津市ではその負担を小規模な民間病院が肩代わりしていると考えれば、市がそれなりの負担を考える必要もあるだろう。 


ニュース追跡 危うい津市の救急医療体制 『拠点』欠き対応に限界 行政主導でルール整備を 
2009.07.24中日新聞 
  

 【三重県】入院や手術が必要な患者の「二次救急」を担う病院の数が11カ所と多いはずの津市は、救急隊が救急病院から患者の受け入れを断られる回数が突出している。100床前後と小規模な病院が多く、専門科が分散しているのが原因の一つだが、解決策は見えてこない。行政や消防、医療関係者は近く、受け入れ病院が決まらない場合のルールづくりを話し合う。(木下大資) 

 県のまとめでは、昨年一年間に津市消防本部が重症患者の受け入れを病院に十一回以上も照会したケースは二十一件あり、全体の2%を占めた。ほかの地域と比べると異常に多いのが一目瞭然(りょうぜん)この傾向は年々悪化している。 

 津市は十一病院が輪番を組み、毎日二カ所で二次救急受け入れの当直態勢を取る。交通事故のけが人などを受け入れる整形外科も一カ所で対応している。だが、どの病院もベッド数が限られている上、常に内科と外科両方の医師を配置する余裕がない。救急隊は結局、当直以外の病院に受け入れの照会をせざるを得ない場合が出る。 

 市内のある輪番病院は「受け入れられないのはベッドが満床の時か、現に重症者に対応している時。明らかに専門外の患者という場合を除けば、ほかの理由で断ることはない」と話す。若手医師や看護師が不足する中で、マンパワーとベッド数が足りない状況を「小さなコップはすぐ水があふれ、それ以上の水は注げない」と表現する。 

 津市の救急出動は年間一万一千件を超えるが、そのかなりの部分を入院の必要がない軽症患者が占める。消防関係者は「軽症患者が二次救急病院へ運ばれてしまうと、『処置中』を理由に、次の患者の受け入れを断られることが増える」と頭を悩ませる。 

 五月に公布された改正消防法は、救急患者の搬送や受け入れに関する基準を県単位でつくることを定めた。県消防・保安室によると十月末までに医療機関、消防、行政、学識者らで構成する協議会を設置する予定で、「近く国が示すガイドラインに沿って、受け入れの基幹病院や、搬送先を調整するコーディネーター役などを決めたい」という。 

 津地区医師会の吉田寿会長は「もはや病院だけの努力は限界で、行政や三重大医学部の助けが不可欠だ」と話している。 

 たらい回し 

 治療5分に『1時間』 

 津市内で今月中旬の深夜、手をけがしたが、治療してくれる救急病院がなかなか見つからない「たらい回し」を経験した。その間、一時間弱。救急医療体制の未熟さを垣間見た“長い”時間だった。 

 午後十時四十五分ごろ、知人宅でカキの殻をむくナイフを指の間に突き刺した。出血したが救急車を呼ぶほどではないと思い、まず頭に浮かんだのは、津市役所横の応急診療所。電話で症状を説明すると、「うちはできない」。教えられたのは、津地域救急医療情報センターの電話番号。 

 同じように電話で症状を説明し、当直の外科医がいると告げられた二カ所の病院のうち、近い方にタクシーで行った。傷を見せると、医師らしき人は「うちでは無理」。専門外なのだろうか。説明はない。タオルで押さえた手より胸に痛みが走った。消毒の処置や他の病院を教えられることもなく、暗いロビーに取り残される。やるせない。 

 気を取り直して再びタクシーを呼ぶ。情報の不正確さに首をかしげながら、もう一カ所の病院へ。ようやく整形外科医にたどりつくことができ、深さ数センチの傷を縫ってもらった。治療は五分だったが、右往左往した分だけ時間も交通費も余計にかかり、理不尽さだけが残った。(大島康介)

    ◇ 

 視線 

 助けたいのに搬送先が決まらない救急隊と、受け入れを断らざるを得ない病院。どちらも苦悩している。 

 「津市が救急対応の拠点になる自治体病院をつくらなかったツケだ」という声もある。全国的に自治体病院は赤字経営にあえいでいるが、津市ではその負担を小規模な民間病院が肩代わりしていると考えれば、市がそれなりの負担を考える必要もあるだろう。 

 さらに、“タクシー代わり”みたいな救急車の安易な利用をやめるなど、市民一人一人が救急医療体制を守る努力も大切だ。 

 (メモ) 

  救急医療  患者の症状の度合いによって1~3次救急に分けられる。重篤な患者を扱う3次救急に対応できる「救命救急センター」がないのも津市の弱点。三重大付属病院は2011年に完成させる新病棟に同センターを設置予定で、津地区医師会などは設置の前倒しを求めているが、看護師不足がネックになっている。