財務総合政策研究所(財務省のシンクタンク)「財持続可能な医療サービスと制度基盤に関する研究会 」のメンバーに 医療法人鉄蕉会亀田総合病院理事長・ 亀田隆明氏 が選ばれ 、報告をしておられます・・・平成20年12月12日(金)



財務総合政策研究所(財務省のシンクタンク)「財持続可能な医療サービスと制度基盤に関する研究会 」のメンバーに 医療法人鉄蕉会亀田総合病院理事長・ 亀田隆明氏 が選ばれ 、報告をしておられます・・・平成20年12月12日(金)』 
  


報告 
「病院経営が抱える諸問題」 亀田隆明 医療法人鉄蕉会 亀田総合病院理事長 

  
病院経営は、医師・看護師の絶対的不足など医療供給体制の問題、医療費抑制政策による不採算医療、限られた経営努力の範囲などの問題を抱えている。 
 産科・小児科、麻酔科など専門医制度の強化が必要であり、このためには適正な評価・待遇をすることが重要である。 
 看護師やコメディカルに業務を合理的に分担させ、人材を十分に活用するためには、これら医療従事者の教育・資格制度を合理化し、業務権限を拡大・明確化すべきである。例えば麻酔看護師の活用、処方箋の複数回活用への薬剤師の権限拡大、画像レポート作成への放射線技師の権限拡大などが考えられる。 
 問題点解決のためには、医療を「コスト」としての面だけで捉えるのではなく「バリュー」の面を見出し、成長産業として捉えるパラダイムシフトが重要である。 
混合診療の規制は、「ポジティブリスト方式」から禁止行為だけを列挙した「ネガティブリスト方式」にすべきである。 
  
医療財源については、公的負担への過度な依存は厳しい情勢であることから、幅広くいろいろな組み合わせの財源を確保する必要がある。 
例えば、混合診療を原則自由化し、自己負担分に民間保険を拡充するといった選択肢もある。また、膨大な個人資産を海外資産への運用に回すのではなく、国内で超高齢化社会運営に活かすシステムを構築するために使うことも考えられる。例えば、富裕層に寄付を促す税制上の優遇(寄付税制)の方法もある。 
  
 日本の病院経営には、資本の概念が不在である。企業などの民間資本導入や制度融資の活用などありとあらゆる資金の導入を排除せず、先端医療やIT化へ投資することにより高度な医療を提供し価値を高めることや、病院経営が成り立つような弾力的な診療報酬体系による収益性の確保が必要である。 
  
社会保険診療報酬の非課税により消費税損税の問題が存在することから、これに対応せずに消費税率を引き上げると大きな病院の経営は成り立たなくなる。 
  
米国では、IHN(統合ヘルスケアネットワーク)により「機能分化」が行われ、医療費が名目GDPを上回るスピードで増加し続けているにもかかわらず、病院数と病床数は逆に減っている。 
IHNは、病院、クリニック、自宅療養サービス、老人ホームなど多種の医療関連機関が連携して単一の事業体を構成することにより、業務の効率化を図るとともに、過疎地の医療提供体制の構築に強みを発揮できる。 
  
 日本にも付加価値の高い医療サービスを提供し、世界から患者を呼び寄せることのできる国際競争力のある病院が必要である。そのような病院が日本の医療再生のカギを握っている。 
  
  

質疑応答・自由討議 
  
 高齢化と医療費増大は有意でないとの説については、現場での体感としては、医療技術の進歩だけでなく、社会の高齢化も医療費増大の要因だと言ってよい。 
  
 病院への寄付に対する見返りは「安心」できる医療の提供であり、例えば税制上の措置があれば相当な寄付が出てくる。医療の財源として寄付の促進は有効な政策だろう。 
  
 日本では専門医制の確立が難しい政治的な経緯もあった。 
  
 国立大学病院は、人員配置を一律に削減するのではなく、バランスを改善すれば診療報酬の増加も見込める。現場に踏み込んで必要なところには手厚くする配置すべきである。 
  
地方においてIHNの核になるべきは国立大学附属病院である。大学病院や公立病院を中心にアフィリエイト方式にすれば、地方における医療機関の偏在を解決することができる。 
  
 専門医の需給の調整は卒後教育にアメリカのように定員制を設ければ無理なく作ることができる。もちろん専門医の定義にはジェネラリスト(一般医)も入る。 
  



財務総合政策研究所所長挨拶 
  

財務総合政策研究所は、財務省のシンクタンクとして、財政や経済に関する基礎的な調査や研究のほか、外国の研究機関との共同研究、開発途上国に対する知的支援、財政史の編纂、図書館の運営、法人企業統計等の統計調査の実施、財務省職員の研修等の業務を行っています。昭和60年5月に発足し、平成12年に財政金融研究所から名称変更しました。私は、前任の石井所長の後を受け、本年7月に所長に就任しました。 

 わが国経済は、このところ景気は足踏み状態にあるとともに、依然として国の歳入歳出のギャップは巨額であり、日本経済の将来に大きな影を落としています。また、わが国は他の先進国に先駆けて最速のスピードで少子高齢化が進展しており、これに伴う経済・財政上の様々な課題にも直面しています。さらに、中国・インド等の台頭やグローバル化の一層の進展など世界規模で構造変化が起きる中で、わが国の経済社会にも様々な変化が現れています。こうした中で財政の健全化を進めるとともに、政策課題にも的確に応える経済・財政政策を展開していくことが求められていますが、このためには、内外経済の深度ある分析や政策手段に対する幅広い視点からの評価・検討が不可欠です。 
 研究所では、このような中長期的な視点にたった問題意識に基づき、毎年テーマを選定して研究会を開催し、その概要をホームページに公表しています。 

 また、研究所は、国際交流活動として、知的支援と研究交流に力を入れています。 
 財務省の知的支援は、我が国とつながりの深いアジア諸国を中心に開発途上国が財政・経済や税・関税の執行に関する真に必要な技術援助を求めている場合に、日本の制度・政策・経験を伝える政策対話や、人材育成を図る研修・セミナー等を行うことにより、相手国の自立的な制度能力の構築や人材育成を図るものです。研究所は、各国財務省の若手幹部候補生に財政及び経済全般の講義等を行う財政経済長期セミナーや、中央アジア・コーカサス夏期セミナー、ベトナム社会政策銀行に対する支援や、カンボジア経済財政省に対する税制支援等を実施しています。 
 研究交流は、国際的な視点にたって、外国研究機関等との共同研究や、国際会議・ワークショップの開催、研究員の受け入れ等を行うものです。中国国務院発展研究センター(DRC)や中国国家発展改革委員会(NDRC)との共同研究、中国社会科学院(CASS)及び韓国対外政策研究院(KIEP)との3カ国共同ワークショップを実施しています。 
 こうした国際交流活動についても、研究所のホームページに公表しています。 

 今後とも、財務省の研究所として、生きた行政と血を通わせながら、わが国の財政や経済に関する課題の研究に積極的に取り組んでいきたいと考えています。よろしくお願い申し上げます。 
  

平成20年7月                                         財務省  財務総合政策研究所長    樋口  俊一郎