地域医療再生基金は壮大な"無駄遣いコンテスト"-東日本税理士法人代表・長隆氏に聞く 基金の凍結か、審議過程の全面的オープンなどの対応が必要  医療維新 - m3.comの医療コラム(2009・9・24)




地域医療再生基金は壮大な“無駄遣いコンテスト”-東日本税理士法人代表・長隆氏に聞く 
基金の凍結か、審議過程の全面的オープンなどの対応が必要  医療維新 - m3.comの医療コラム(2009・9・24) 

  
「地域医療再生基金は壮大な“無駄遣いコンテスト”」。こう指摘するのは、東日本税理士法人代表(公認会計士)であり、総務省の公立病院改革懇談会座長として、「公立病院改革ガイドライン」の取りまとめに当たった長隆氏。 
  
地域医療再生基金は、救急医療の確保や地域の医師確保などといった地域医療の問題解決のための再生計画を都道府県が作成、その財政的支援を行うために創設された。 

計画の対象地域は2次医療圏が基本で、計画期間は5年といった条件がある。 
2009年度の厚労省の補正予算で計上され、総額は3100億円。一地域当たり、100億円(最大10カ所)、もしくは30億円を上限に支給する。 
  
2009年度補正予算の一部凍結を打ち出す民主党。 
その候補の一つである地域医療再生基金の扱いが注目される中、長氏に同基金に対する考えなどを聞いた(2009年9月24日にインタビュー)。 

――「地域医療再生基金は税金の無駄遣い」などと問題視されていますが、その理由をお教えください(再生基金の概要は、厚労省のホームページを参照)。 
 幾つかの理由があるのですが、 
(1)計画募集から提出までの期間が短い、 
(2)計画策定に当たって、県の医療審議会、医療対策協議会等を通すとしている、 
(3)補正予算で実施、といった点が挙げられます。 
  
――(1)ですが、厚労省から都道府県に通知されたのは6月5日、都道府県から厚労省への計画提出の締め切りは10月16日です。 
  
例えば、私が知るある市では、4つの基幹病院を2つに再編統合する計画をまとめています。 
都道府県はこれを100億円の再生計画として提出すると聞いています。 
しかし、実際には4病院の間で具体的な話し合いが進んでいるわけではない上、再編の中心となる市立病院は、他の病院と比べて経営状況が悪い状況にあり、この計画が実現するとは思えません。 
9月の定例市議会の議案として提出されたとも聞いていません。 
  
また、この地域医療再生計画は本来、“ハコモノ”を作るといった話ではなく、2次医療圏単位で、医師確保のための仕組みの構築・運営などのためにお金を出すものです。 
しかし、こうした体制を作るには相応の時間がかかるため、結局は計画策定までに時間がなく、“ハコモノ”計画が多く、まっとうな計画はほとんど上がっていないのが現状ではないでしょうか。 
  
もっとも、公立病院については総務省の「公立病院改革ガイドライン」に基づき、改革が進められていますが、こちらも上がってきている計画を見ると数字合わせのケースが大半です。 
こうした現状で、地方自治体が短期間に計画を作れるとも思えません。 
過去、そして今回の一連の経緯を見るにつけ、私は、地域医療の崩壊の原因は、地方自治体にあると考えています。 

 ――医療審議会を通すことを問題視している理由は。 
  
都道府県の医療審議会の会長は、その多くが都道府県医師会の役員です。 
各地域から都道府県に対しては、いろいろな相談、計画が上がっているでしょうが、都道府県が医師会の意向を無視して計画を絞り込むことは難しいでしょう。 
中には、千葉県のように、当初から各2次医療圏からの要望提出を控えるよう求めているケースもあります(東日本税理士法人グループの医療経営財務協会のホームページhttp://izai2.net/index.htmlを参照)。 
厚労省の通知では、「管内のすべての2次医療圏における中核的な医療機関の意見を聴いた上で、地域医療再生計画において対象とする地域を選定」としており、これに反しています。 
  
それ以外の都道府県でも、各地域からどんな計画がどのくらい上がっており、いかなる過程で国に提出する計画を絞り込んだのか、その過程はほとんど明らかではありません。 
 今回の再生計画は2次医療圏単位ですが、全国で348ある医療圏のうち、交付対象は限られます(100億円10カ所、30億円70カ所との試算では80カ所)。 

地域医療の再生のために、何らかの補助金を付ける必要があるのであれば、より多くの医療圏、あるいは全医療圏を対象にする必要があるのではないでしょうか。 

また地域医療の再生という国の重要課題を補正予算で対応したのは、自民党の選挙対策。 
予算化するのであれば、本来なら、補正予算ではなく、当初予算で計上すべきです。 
もっとも、こうした予算が必要かは疑問が残るところです。 
  

――では地域医療再生計画は、すべて凍結すべきだというお考えでしょうか。 
財政支援すべき再生計画が出てくる可能性はないのでしょうか。 
  
全国から数多くの再生計画が出てくることでしょう。 
全国から出てきた再生計画は、「有識者による協議会」で審議し、基金の対象を決定することになっています。 

当初の予定通り10月16日までに再生計画を提出してもらい、すべてをオープンにする形で審議するという方法もあります。 
有識者による協議会のメンバーはまだ明らかになっていませんが、審議過程を国民にすべてオープンにすれば、いい加減な再生計画を出している都道府県がいかに多いかが、分かるのではないでしょうか。 

 ――その審議過程を明らかにすることで、都道府県の医療への取り組み姿勢を把握できるということですか。 
  
はい。審議の結果、結果的に公布対象がほとんどない、あるいはゼロという事態も想定されます。

 ――先ほど、「こうした予算が必要かは疑問」とおっしゃいましたが、地域医療再生のために特別な予算は必要ないということですか。 
  
ほとんどメディアに取り上げられておらず、あまり知られていないのですが、総務省は2008年12月26日に、「公立病院に関する財政措置の改正要綱」を出しています(総務省のホームページを参照)。 

公立病院には平均で年間約7億円、957病院あるので、総額約6700億円の財政支援措置が行われています。 
  
今回の改正により、2009年度から、公立病院と同等の医療機能を有する病院も、財政措置の対象になります。これを有効に使えば、公立か否かなど経営形態を問わず、地域に必要な病院の再編・充実が可能なはずです。 

また、よく「救急医療は不採算」と言われますが、交付税措置がなくても、診療報酬のみで成り立っている病院もあります。 
  
民主党は、社会保険病院、厚生年金病院の整理合理化を撤回するそうですが、確かにこれらの病院には経営状況がいい病院が少なくありません。 
民主党には、公立病院の改革も含め、総合的な観点から、地域医療再生のあり方を検討していただきたいと考えています。