公と民の医療施設の連携については、私立ボストン大の病院と公立病院の「ボストン・シティー・ホスピタル」が合併し、民間で非営利の「ボストン・メディカル・センター」が誕生した・・・・・



『公と民の医療施設の連携については、私立ボストン大の病院と公立病院の「ボストン・シティー・ホスピタル」が合併し、民間で非営利の「ボストン・メディカル・センター」が誕生した・・・・・米国の病院には、救急患者の受け入れを事前に決める権限はありません。理論上で満床の病院に搬送されたとしても、患者がERに到着すれば、病院側は治療を行わなければなりません。そうしなければ、法律違反になるのです。米国には「EMTALA」と呼ばれる法律があり、そこに「妊婦を拒否してはいけない」とはっきり記されています。 
 もし妊婦が危機に陥っているのならば、産婦人科医がいるとかいないとか、そういう問題ではありません。米国では、外科医や家庭医も分娩手術を行うことができます。時に医師は、特に医療制度の中での自分の役割が脅かされると、より生産的になる代わりに、医師不足などの問題を盾にしてしまいます。わたしは医師不足の問題ではなく、医師の信念、そして理念の問題だと思います。自分の行動で問題が解決されないのならば、なぜ医師の道を選んだのかという点まで見詰め直す必要があるのではないでしょうか(全米公立病院協会会長) 』 


  
米国から学ぶ公立病院改革 
12月5日 医療介護CBニュース 

米国の公立病院が赤字経営である背景の一つに「医療機関の連携不足」を挙げるラリー・S・ゲージ全米公立病院協会会長 
  
「徹底的に無駄を排除する『トヨタ方式』など、他の分野から学ぶ姿勢も大事だと思う。これまで日本の病院には、そういった柔軟な発想がなかったのではないか」―。11月に東京都内で開かれたシンポジウム「日米公立病院改革セミナー」で、全米公立病院協会(NAPH)のラリー・S・ゲージ会長は、こう厳しく指摘した。現在、日本で公立病院改革が叫ばれる中、米国では大学病院を中心に大胆な取り組みが行われている。このほど来日したゲージ会長に、米国の公立病院の現状などを聞いた。(敦賀陽平) 


―まず、先日のシンポジウムのご感想を聞かせてください。 

 日本の公立病院の4分の3が赤字ということを知り、多くの公立病院が赤字経営で苦しんでいる米国の事情に似ているという印象を受けました。国内の経済危機で税金が上げられず、支援もままならない点も似ていますね。米国では、医療サービスの削減だけでなく、最悪の場合、閉鎖を考えなければならない所もあります。合弁事業のパートナーや合併相手を探さなければならない病院もありますね。自力で持ちこたえている所もありますが、特に郊外の小規模病院では、他の病院に買収されるケースも目立ちます。 
 興味深いことに、全米病院連盟の最近の報告によると、2000年以後の数年間、米国の病院は近年まれに見る黒字経営だったそうです。もっとも、サブプライムローンの関係で経済情勢が悪化する前の話なので、現在と事情は異なりますが…。 

―米国の公立病院が赤字経営の背景には、どのような問題点があるのでしょうか。 

 これも日米の共通点だと思いますが、背景の一つに医療機関の連携不足の問題があります。米国のすべての病院ではありませんが、病院と医師、そして外来患者向け診療所の間で、システムを再構築する動きもあります。複数の病院がばらばらに運営するのではなく、一つの拠点病院と外来患者向け診療所、そして他の医療施設が協力し、電子カルテで情報を共有することで、患者が各医療施設を行ったり来たりしなくて済むようになるという取り組みです。 
 また、院内に目を向けることで解決する問題も数多くあります。患者がERに入れない場合、必ずしも医師やERの不足ではなく、おそらくベッドが足りないということです。患者が長期にわたって入院するため、医師は退院させることができずにいるのです。仮に早期に退院させたとしても、病室やベッドの清掃には時間がかかります。そこで、米国で最も革新的な病院システムの一つである「デンバーヘルスシステム」の出番となります。徹底的に無駄を排除する「トヨタ生産方式」を取り入れた結果、ERで次の患者にベッドが空くまでに必要な時間が4時間から22分に短縮しました。 
 国民が高齢化しているので、変化に合わせた医療制度をつくる必要があると思います。 


■DRG、メディケア制度の観点では成功 

 ―診療報酬に関して、日本では現在、DPCを導入する病院が増えていますが、米国のDRG(診断群分類別定額払い)の現状はいかがですか。 

 DRGは、患者が受ける治療の中の診断を特徴付ける一種の方法です。例えば、対象となるのは肺炎患者のグループ全体。高齢者向けのメディケア制度では、実際に価格を設定しており、特定の診断分類の中に入れば、その患者は入院することになります。サービス内容にかかわらず、1万2000ドルという病院が手にできる単一の費用があるのです。患者が受ける治療内容を特定していないが、その診断の患者がどのような治療を受けるかを想定してつくられているということです。複雑な診断などの理由で、患者が予想よりも重篤だった場合、割り増し料を要求することができます。 
 DRGは単なる支払いメカニズムです。他の目的で使用されていません。医師は「ICDコード」と呼ばれるシステムを利用していますが、これはDRGよりはるかに複雑です。返済目的のDRGは750診断群だと思いますが、医師が診断を特定するICDコードは9000以上あります。もちろん、どちらも定期的に改定されています。 
 日本のDPCがどのように導入されているのか分かりませんが、メディケア制度の観点では、一般的にDRGは成功していると言えます。病院側にインセンティブがありますから。患者がある診断分類に入り、それによって予想される入院期間が5日間だとすれば、それが病院側の収入となります。もし6日目になれば、病院側は医師に「あの患者はなぜまだ入院しているんだ」と告げることができます。「まだ患者の治療が必要だ」と医師が言えば、納得が行く答えはおそらく、「手が回らない」でしょうか。そうすると病院側は、例えば医師と口論になった場合、それが医師の給料に跳ね返ることもあり得るわけです。日本で同じような見方をするのか分かりませんが、それが米国のDRGの現状です。 


■米国で妊婦拒否は法律違反 

 ―医師不足について、日本政府は来年度の医学部の定員を700人増やす方針を打ち出しましたが、米国でもこのような取り組みは行われているのでしょうか。 

 米国政府も、医師不足解決に向けていくつかの役割を担っていますが、医学部の新設に関しては、地方の州レベルで行われることです。現在も、全米で医学部が新設されていますが、それは残念ながら非常に時間がかかるプロセスです。米国で医学部に入った学生が一人前の医師になるまで、おそらく10年はかかるでしょう。 
 医師不足には、地理的偏在の問題もあります。米国の中には、人口当たりの医師数が過剰な地域があり、例えば、ニューヨークやマサチューセッツ州のボストンの医師数は、テネシー州のメンフィスやコロラド州のデンバーの5倍ほどです。へき地に住む人々が増えるほど、問題はより深刻化するでしょう。 
 米国には、医学部を卒業した研修医の数を制限する支払いメカニズムのようなものがありますが、おそらくこれは緩和されるでしょう。このメカニズムが医師の急増を抑える、ある種の“パイプライン”になっているのですから。多くの米国の病院は現在、医師を本来の仕事に専念させるため、ナース・プラクティショナーなど医師以外のスタッフで問題の解決に取り組んでいます。 

 ―日本では最近、産科医不足やNICU(新生児集中治療管理室)の満床が理由で搬送を断られ、妊婦が死亡するケースが相次いで起こっていますが、こうした悲劇は米国にもあるのでしょうか。 

 いいえ。幸運にもそういったことはありません。日本で起こったことは、本当に悲劇だと思います。 
 米国のERが超満員であることも事実です。特にロサンゼルスのような大都市では、ここ3、4年、病院の閉鎖が続いています。開業中でも、ERを閉鎖してしまう病院があります。しかし、米国のシステムは万全です。政府や消防局などで機能している救急医療システムの中で、どこの病院のERが超満員かベッドが足りないのか、患者を搬送すべきでないのか、ということが分かるようになっています。 
 しかし、米国の病院には、救急患者の受け入れを事前に決める権限はありません。理論上で満床の病院に搬送されたとしても、患者がERに到着すれば、病院側は治療を行わなければなりません。そうしなければ、法律違反になるのです。米国には「EMTALA」と呼ばれる法律があり、そこに「妊婦を拒否してはいけない」とはっきり記されています。 
 もし妊婦が危機に陥っているのならば、産婦人科医がいるとかいないとか、そういう問題ではありません。米国では、外科医や家庭医も分娩手術を行うことができます。時に医師は、特に医療制度の中での自分の役割が脅かされると、より生産的になる代わりに、医師不足などの問題を盾にしてしまいます。わたしは医師不足の問題ではなく、医師の信念、そして理念の問題だと思います。自分の行動で問題が解決されないのならば、なぜ医師の道を選んだのかという点まで見詰め直す必要があるのではないでしょうか。 


日米の公立病院改革の現状などで議論(2008/11/17 キャリアブレイン) 

日本の医療関係者を対象とした「日米公立病院改革セミナー」(日米文化センター主催)が11月17日、東京都内で開かれた。全米公立病院協会(NAPH)のラリー・S・ゲージ会長の基調講演の後、全国自治体病院協議会の邉見公雄会長と総務省自治財政局地域企業経営企画室の濱田省司室長を交えたパネルディスカッションが行われ、3人のパネリストが日米両国の公立病院改革の現状などについて意見を交わした。 

基調講演でゲージ会長は、「米国政府が運営する大学病院が、内外からさまざまなプレッシャーを受けている」と説明。米国の公立病院が抱えている問題点として、▽医師など医療従事者の不足▽資金不足▽患者側がQOL向上を求める動き―などを挙げた。さらに、米国では毎年10万人の患者が医療過誤で命を落とし、特に大都市圏の大きな大学病院では、患者の待ち時間が長くなっている現状も指摘した。 
  
 その一方で、人材が多様化している大学病院を中心に、組織変革を行っている公立病院も数多く存在する。 
 ゲージ会長は、改革で生まれ変わった公立病院のシステムの一例として、「デンバー・ヘルス&ホスピタル・オーソリティ」について説明。この病院はコロラド州のデンバー市が運営していたが、半官半民の施設を造ってもよいという州法が成立したため、政府の管轄下にありながら、独立型の施設として生まれ変わった。その結果、人員全体の再編と5億ドルの新たな資金の調達を実現。運営に関しては、徹底して無駄をなくす「トヨタ方式」を取り入れるなどの組織改革を行い、全米のモデルケースになったという。 
 一方、公と民の医療施設の連携については、私立ボストン大の病院と公立病院の「ボストン・シティー・ホスピタル」が合併し、民間で非営利の「ボストン・メディカル・センター」が誕生した例などを挙げた。