長野県立5病院 独立行政法人化 デメリットとして強いて挙げるものはありません・・・岩嶋敏男・長野県県病院事業局次長













『長野県立5病院 独立行政法人化 デメリットとして強いて挙げるものはありません・・・岩嶋敏男・長野県県病院事業局次長』 





地域医療をどうする(20)=岐路の自治体病院(4) 県立病院独法化 積極的な県、戸惑う現場 

2008.12.16 信濃毎日新聞  

  

 「単刀直入に聞くが、独立行政法人化で危惧(きぐ)されることは本当にないのか」 



 「デメリットとして強いて挙げるものはありません」 



 十一月中旬、下伊那郡南部五町村の保健医療協議会が県立阿南病院(阿南町)で開いた地方独立行政法人(独法)化の講演会。地元首長や診療所医師からの質問に、講師の岩嶋敏男・県病院事業局次長はそう言い切った。 



 県が二〇一〇年四月の移行を図る県立五病院の独法化。岩嶋次長は、新法人は県が100%出資し、病院運営に必要な費用も県が交付する―として「独法化は独立採算の『独立』ではなく、行政組織から独立して医療を提供するための組織」と説明した。 



 だが、地元町村などには、独法化が不採算部門の切り捨てにつながらないのか―といった懸念が少なくない。講演を聞いた伊藤喜平・下条村長は「聞こえはいいのだが…」とうなった。 



   ■   ■ 



 総務省は〇七年十二月にまとめた「公立病院改革ガイドライン」で、独法化を自治体病院の経営改善に向けた有力な「選択肢」に挙げた。 



 今年九月には、県の行政改革を話し合っていた行政機構審議会が、県立病院の独法化が「最もメリットが大きい」と答申。県はこれを受け、検討を具体化させている。 



 県が最大のメリットとするのは、地方自治法や地方公務員法など公立病院特有の制約を受けなくなり、独自の判断で人事や予算を決められるなど「経営の自由度が格段に高まる」(勝山努病院事業局長)点だ。例えば特定の診療科の医師を確保するため、思い切って給与を引き上げるといった手段も可能になる―とする。 



 焦点の一つは病院職員の身分。引き続き公務員となる「特定地方独立行政法人」と、非公務員になる「一般地方独立行政法人」があるが、県は「公務員型だと給与や勤務条件などが県職員に準じることが想定され、柔軟性に欠ける」(病院事業局)とし、非公務員型とする方向で検討している。 



 ただ、これまで都道府県立病院で独法に移行したのは大阪、宮城、岡山、山形の四府県だけ。いずれも〇六年度以降で、効果や評価の検証はこれからだ。 



 「非公務員になると、(事実上の)民間病院になってしまうのではないかとか、県民に不安がある」。長野県と同じく一〇年四月の独法化移行を検討している山梨県では横内正明知事が十一月の記者会見でこう表明し、従来検討していた非公務員型から公務員型への転換を打ち出した。 



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 長野県は独法化に向け、病院職員への説明会をこれまでに延べ十三回開催。十月には医師や看護師らも交えた検討チームを立ち上げ、新たにつくる人事給与制度などの具体化に向けた作業を始めた。 



 これに対し、病院職員らが加わる県職員労働組合は「経営効率が優先される独法化では地域住民の命は守れない」と主張。十月下旬から県立病院のある地域などで独法化に反対する署名活動を始め、既に三万人余を集めたという。高橋精一委員長は「数年後に独法化が失敗したと分かっても、元には戻せない」と慎重な議論を求める。 



 「独法化で何がどう変わるのか、いいのか悪いのかも正直よく分からない」(南信の県立病院事務職員)といった戸惑いにどう応えていくのか。村井知事は今月上旬、県会一般質問の答弁で「職員の声も良く聞き、丁寧に検討を進めたい」と強調した。