栃木県塩谷総合病院 ・・・ 国際医療福祉大学・済生会宇都宮病院など 次々に引き受け辞退 ・・・県や市が乗り出すなら、 公開の委員会で引き受け条件を決定し、 全国に公募する方法が採用されるべきであった



『栃木県塩谷総合病院・・・ 国際医療福祉大学・済生会宇都宮病院 など次々に引き受け辞退 ・・・県や市が乗り出すなら 公開の委員会で 引き受け条件を決定し 全国に公募する方法が採用されるべきであった』  


栃木県議会予算委/厚生連理事長ら招致/塩谷病院融資で初の要請 
2008.12.13下野新聞   
  

 県議会予算特別委員会(野田尚吾(のだしょうご)委員長)は十二日、理事会を開き、塩谷総合病院(矢板市)を経営するJA栃木厚生連の鈴木宗男(すずきむねお)理事長ら幹部三人を参考人として招致することを全会一致で決めた。十八日に開く同委員会で、鈴木理事長などから意見を聞く。 

 県は同病院の運転資金として厚生連に三億円を無利子・無担保で貸し付けることを盛り込んだ二〇〇八年度補正予算案を、県議会十二月定例会に提出しており、同委員会は融資の妥当性などを調査する。 

 同委員会が参考人招致を行うのは初めて。野田委員長は同日、石坂真一(いしざかしんいち)議長に参考人招致決定を報告した上で、議長名で鈴木理事長に出席要請を通知した。 

 厚生連は経営悪化から昨年末、同病院の経営撤退を決めた。県は現在、譲渡先の仲介作業を進めているが、厚生連からの要請を受け、赤字経営が続く同病院の運転資金として三億円を貸し付ける方針だ。厚生連は三億円について「来年三月まで病院を経営できる最低限の金額」としている。 

 野田委員長は下野新聞社の取材に「三億円を支出することになれば県として責任が生じる。県議会も責任を果たすため、関係者から事情を聴きたい」と、参考人招致の理由を説明した。 


JA栃木厚生連が健診撤退 今年度限り、病院経営悪化で /栃木県 
2008.12.12 朝日新聞  
  

 経営移譲問題が難航する塩谷総合病院(矢板市)の経営母体・JA栃木厚生連(鈴木宗男理事長)が、下野市の農村健康管理センターで行っている健康診断事業から今年度限りで撤退することが11日、わかった。同センターは県内準大手の健診機関で、運営費は厚生連が経営する3病院の利益などで賄われてきた。その一つ、塩谷総合病院の経営悪化で事業継続が困難になった。(井手さゆり) 


 同センターは厚生連の石橋総合病院と同じ敷地にあり、農協職員の健診のほか、企業や市町に出向いて従業員や住民の健診も請け負っている。07年度は合計1万2708人が利用。08年度は下野、真岡、那須塩原、藤岡、都賀の5自治体の住民健診も担っている。 

 厚生連によると、同センターの収支は08年度上半期(4~9月)は1400万円の黒字だったものの、通期では約3千万円の赤字を見込んでいる。健診のほとんどが春先に集中し、下半期は収入がないためだ。 

 センターの運営費は、市町や企業から支払われる健診の委託料のほか、JA栃木中央会などからの助成金、厚生連が経営する3病院の利益などが充てられる。「健診事業自体は通常でもほとんど利益が出ないが、病院経営が順調なら問題なかった」(厚生連幹部)という。 

 しかし、塩谷総合病院の経営が極度に悪化し、経営移譲問題が浮上。同病院の赤字は今年度上半期だけで4億2千万円にのぼった状況を受け、厚生連の経営管理委員会は10月、健診事業からの撤退を決定し、現在、関係市町や企業に伝えている。厚生連は「かつては農村部の健診を一手に担ってきたが、自治体が健診を行うようになって社会的な使命も終えた」と説明する。 

 健診事業撤退に伴い、下野市は来年度、同センターに委託していた健診を近隣の病院や、県内最大手の健診機関・財団法人県保健衛生事業団に振り替える方針。同市では年間35回実施する健診のうち今年度は14回を厚生連に委託、旧石橋町の住民を中心に約2千人が利用していた。 

 真岡市も今年度39回実施した成人健診の約3分の1を厚生連に委託し、約千人が受診していた。来年度はもう一つの委託先である同事業団に引き受けてもらうよう調整中という。 


 ●「塩谷」年10億円赤字 理事長の見通し「譲渡無理なら閉鎖も」 

 塩谷総合病院を運営するJA栃木厚生連の鈴木宗男理事長が11日、宇都宮市内で記者会見し、同病院の赤字は今年度上半期だけで4億2千万円にのぼり、年間では10億円近く見込まれることを明らかにした。県からの無利子融資は厚生連側が要望したが、これまでその理由を公の場で説明したことはなかった。 

 理事長によると、運営する三つの総合病院や看護専門学校などの今年度上半期の収支は3億1800万円の赤字。下都賀、石橋両総合病院は計7600万円の黒字といい、塩谷総合病院の4億2千万円の赤字が大きな要因という。原因について、鈴木理事長は「個人の経営能力に不足があったという自覚はある」と自らの経営責任に言及した。 

 経営難に陥った理由については、医師不足による患者数の減少のほか、92年に同病院の新築費などとして約80億円を投じた負担の重さを挙げた。計画通りの収益が上がらず、97年度末には債務超過額が15億円を超えたという。 

 一方で04年度まで30人近くいた塩谷総合病院の常勤医は05年度から20人前後に減り、現在は12人になった。この影響で、07年度は05年度に比べて年間患者数が外来は延べ約1万9千人、入院は延べ約2万4千人減少する悪循環に陥り、医業収益は7億円以上減った。JA栃木厚生連は現在、39億円の負債を抱え、今年3月末以降の退職者109人への退職金未払い額も4億3千万円に達している。 

 県が3億円を無利子で貸し付ける議案を12月議会に提出したことに関し、鈴木理事長は「病院譲渡までどうしても経営を続けないといけない。ぜひ理解頂きたい」と強調。県には10月、10億円の融資を要望したことも明らかにし、3億円は「最低限必要な額だ」と話した。 

 県が主導する病院の譲渡先探しについては「交渉をお願いしている立場」とだけ語った。09年3月までに移譲先が決まらなかった場合の対応については「可能性という話ならば、(塩谷総合病院の一時閉鎖も)除外はできない」と述べた。 


塩谷総合病院は、矢板、さくら、塩谷、高根沢の2市2町でつくる塩谷医療圏の医療を支える病院だ。住民はその行く末に不安を抱いている。 

 県の保健医療計画は県内を10救急医療圏に分ける。塩谷総合病院は、塩谷医療圏でさくら市の黒須病院とともに「2次救急輪番制病院」に位置づけられ、地域医療を支えてきた。 

 救急医療は、比較的軽症な「初期(1次)救急」、入院が必要な「2次救急」、命にかかわり早期、高度な治療が必要な「3次救急」に役割分担されている。2次救急輪番制病院は、入院が必要な患者を、交代で責任を持って受け入れる病院のことで、県内に27カ所ある。 

 経営母体のJA栃木厚生連の説明によると、04年度から新卒医師が研修先を自由に選べるようになったことなどの影響を受け、医師不足が深刻化。07年12月、JA栃木厚生連が経営から撤退する方針を固めたことが公になると、医師の減少に拍車がかかった。現在、同病院の常勤医は12人。02年度の29人と比べると、半数以下に減った。 

 この影響は救急搬送にも出ている。塩谷広域行政組合消防本部によると、同病院への07年度の搬送数は621人。04年度の1187人からほぼ半減した。一方、塩谷医療圏から大田原赤十字病院などがある県北医療圏への搬送数は約1・5倍、済生会宇都宮病院などがある宇都宮医療圏へは約2倍に増えた。隣接圏の負担増や、搬送に時間がかかることが問題になっている。 

 ベッド数は一般250床、療養50床、診療科の数は約20--。塩谷医療圏内最大の総合病院の今後に住民の不安は募る。 

 矢板市片岡の男性(79)は眼科、内科、脳神経外科、妻の女性(75)は眼科に通っている。近所の人がマイカーで病院までの送り迎えをしてくれているという。女性は「この病院がなくなると一番近くて大田原赤十字病院だけど、そこまでの送迎は頼めない。夫の足が悪いので電車で行くのは無理。タクシーで往復1万5千円もする。診療代より高くてとても通えない」と嘆いた。 

 泌尿器科に入院する夫(88)の見舞いに来る矢板市の女性(80)は、息子に仕事の合間を縫って送り迎えしてもらっている。「今は近いから息子も毎日送り迎えしてくれているが、大田原や氏家までは無理だと思う。この病院がなくなると困る」と話した。 


 ◆キーワード 

 <JA栃木厚生連> 正式名称は栃木県厚生農業協同組合連合会。出資金5億1千万円を、県内各農協が負担している。県内で塩谷総合病院(矢板市)、下都賀総合病院(栃木市)、石橋総合病院(下野市)などを運営している。 

 上部組織は、全国厚生農業協同組合連合会(JA全厚連)。大正時代に島根県で、医者のいない農村に低価格の医療を提供する活動をしたのが事業の始まりとされる。1948年に農業協同組合法にもとづく全国組織になった。08年5月現在、傘下には119病院と60診療所がある。 


 ■塩谷総合病院の経営移譲問題を巡る主な動き 

07年12月
JA栃木厚生連が、09年3月で塩谷総合病院の経営から撤退する方針を決め、意向を県に伝える 
08年 2月 塩谷医療圏の2市2町の首長らが、県と厚生連に存続の署名を提出 
5月 県などが仲介役となった経営移譲交渉で、移譲先を国際医療福祉大学に絞る
8月 国際医療福祉大学が移譲の引き受けを辞退。県は済生会宇都宮病院との交渉に転換
9月 塩谷総合病院などの元看護師らが厚生連に未払い退職金の支払いを求め提訴
12月 県が、運転資金3億円を厚生連に無利子で貸し付ける予算案を12月議会に提出