総務省の「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」メンバーで、島根県立中央病院の中川正久院長は「地域医療確保のために交付税措置してもいい、というのが総務省の考えで、(措置の)基準をつくりたい。

『 総務省の「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」メンバーで、島根県立中央病院の中川正久院長は「地域医療確保のために交付税措置してもいい、というのが総務省の考えで、(措置の)基準をつくりたい。ガイドラインで淘汰(とうた)される病院も出るが、病院のモチベーションが上がるいいきっかけになったのではないか』        
     
  
 08記者リポート:福井 公立病院改革 一律のガイドラインに賛否 /福井 
2008.11.24毎日新聞   
  

 ◇赤字解消へ企業努力も根底に慢性的医師不足 

 公立病院が抱える問題や地域医療への取り組みについて病院関係者らが検討する「全国自治体病院学会」が10月16、17の両日、福井市であった。参加者からは恒常的な医師不足や自治体の財政難で病院が住民に十分な医療を提供することが困難になっている現状が次々と報告された。国の政策で利益主導型の民間病院並みの経営が求められる中で、公立病院が存続する方策を探った。【菅沼舞】 

 ◇全国で75%赤字、不良債権も増加 

 □自治体病院の現状 

 県や市町村の地方公営企業が経営する病院は地域の基幹的な医療機関と位置づけられ、採算面などから民間の医療機関では提供できない医療も行う。全国で667事業957病院(07年度現在)あり、そのうち赤字を計上している事業数の割合は07年度75・1%だった。06年度は953億円だった自治体病院の不良債権総額は07年度には1186億円に膨らみ、深刻な資金不足がうかがえる。 

 総務省の「公立病院改革懇談会」は、公立病院が経営難に陥った背景に経営感覚の欠如や高コスト体質などがあると指摘。07年に公立病院改革ガイドラインを発表し、全国の自治体に▽経営の効率化▽再編・ネットワーク化▽経営形態の見直し――を柱とする改革プランの08年度中の策定と、具体的な数値目標の設定を求めた。 

 □とまどう関係者 

 異なる地域でそれぞれ違う事情を抱える病院に一律のガイドラインを適用することについて、医療関係者からは当惑する声も聞かれる。福井県は県内公立9病院のうち、4病院が黒字だ。県医務薬務課の担当者は「順調な経営の病院でもわざわざプランを作らないといけないのか」と話す。広島国際大学の谷田一久准教授(医療経営学)は、学会で「(ガイドラインで)根性論をいくら言ってもいじめになる」と異議を唱えた。 

 一方、総務省の「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」メンバーで、島根県立中央病院の中川正久院長は「地域医療確保のために交付税措置してもいい、というのが総務省の考えで、(措置の)基準をつくりたい。ガイドラインで淘汰(とうた)される病院も出るが、病院のモチベーションが上がるいいきっかけになったのではないか」と話している。 

 □コスト削減 

 認知症専門の福井県立すこやかシルバー病院(伊藤達彦院長)は、独自の工夫で経費削減に取り組み、経営健全化に成功している。06年度から指定管理者制度に移行したため、県からの繰入額は4500万円減となったが、清掃や警備、医療機器のメンテナンスにかかる管理委託費を見直しコストを削減した。 

 人件費を削る代わりに業績手当を給付するほか、徹底した在庫管理や節電・節水など、きめ細かい努力を積み重ね、06年度は6300万円、07年度は6400万円の経常黒字となった。 

 しかし、こういった例はまれだ。診療報酬が主財源となる公立病院では、慢性的な医師不足が経営に影響する。特に地方病院は、医師の大都市への流出や人口減による医業費減で経営難に陥りやすいという。 

 □医師不足対策 

 学会では、地方病院の医師不足の対策も話し合われた。福島県立医科大医学部の葛西(かっさい)龍樹教授は、開業医を「家庭医」として再教育することで眠っている人材を活性化し、医師不足を補う取り組みを紹介した。 

 「家庭医同士や病院で24時間患者に対応できるネットワークを作って症例の8割に対応する。残り2割の重症者は地域の拠点病院に集約することで病院の負担を軽減でき、医療崩壊の防止につながる」と説明する。 

 また、福井県立病院救命救急センターの林寛之医師は「救命救急センターで雑多な症例を経験できると分かれば研修医は集まる」と提案した。