麻酔医が公立病院を立ち去る原因は給与が低いことが 主な原因ではない。 麻酔医にとって仕事内容、給与で魅力のない公立病院の官僚経営だったことではないか。

『麻酔医が公立病院を立ち去る原因は給与が低いことが 主な原因ではない。 
麻酔医にとって仕事内容、給与で魅力のない公立病院の官僚経営だったことではないか。』 


麻酔医らが専門診療所 国も驚く試み、提携進む 
2008.11.15 共同通信   
  

 「手術管理の要」といわれる麻酔医の不足が深刻だ。手術を受ける患者の管理で長時間拘束され、当直も重なる。 


そんな厳しい勤務実態を打開しようと、千葉県の船橋市立医療センターを飛び出した元勤務医らが麻酔科専門の診療所「船橋メディカル・クリニック」(船橋市、院長境田康二(さかいだ・こうじ)医師)を設立、麻酔医の“出張業務”を始めた。 
「聞いたことがない」と厚生労働省も驚く試み。過酷な現場は変わったのか。 
  

▽36時間勤務 
  
医療センターが重症患者の受け入れ可能な三次救急医療施設に指定されたのは、境田医師が赴任する一年前の一九九四年。手術件数は増え続け、ここ数年は年間二千八百件前後で推移している。 
  
「このまま自分たちがつぶれてしまうかと思った」。ピーク時だった九〇年代。境田医師はある夜、当直を挟んで三十六時間連続の勤務を終え、院内のソファに座り込んだ。仮眠もろくに取れず、昼食はわずか十分。二十日間出ずっぱり。 
この月の当直は月八回に上った。 
  
「これだけの人数で十年後、仕事の質を維持できると思いますか」。境田医師は歴代院長に何度も増員を迫ったが受け入れられなかった。 


 ▽最後通告 
 十年が過ぎた二〇〇六年六月。「増員が認められないなら麻酔科の医師全員が辞職する」。 

最後通告のつもりで市の対応を迫った境田医師ら。だが公務員の定数制限を理由に増員は見送り。そこで浮上したのが専門の診療所構想だった。 
  
「当直と手術前後の重症患者の管理などあらゆる麻酔業務を引き継ぎ、報酬は原則、麻酔一件ごとに算出することを条件に出した」と境田医師。 
交渉は成立、〇七年四月、麻酔医七人から成る診療所が誕生した。 
  
▽変わる職場環境 
 医師免許取得後二年間の臨床研修必修化で、大学病院が医師を相次いで引き揚げ、地域の医師不足は加速した。「余力があるうちに地域医療を守る新たな仕組みが必要だった」 
  
兼業を禁じる公務員時代にはできなかった、近隣病院への応援出張も可能に。 
医療関係者向けに心肺蘇生(そせい)法の講習会を開くなど活動を展開、「麻酔医としての幅が広げられる」と新たに三人がクリニックに加わった。 
  
東京医科歯科大大学院の川淵孝一(かわぶち・こういち)教授(医療経済学)は「外科手術があって初めて成り立つ麻酔医は個人開業が難しく、燃え尽きてしまう勤務医も多い。医師が団結し在籍した病院に損害を与えることなく、フリーで活躍できる場をつくったことは画期的」としている。