公立病院の経営幹部の間からは直営でも工夫次第で経営改善はできる。安易な独法、公設民営化が行き着くのは民間譲渡だが、民間では、不採算医療は守られない・・・・



『公立病院の経営幹部の間からは直営でも工夫次第で経営改善はできる。安易な独法、公設民営化が行き着くのは民間譲渡だが、民間では、不採算医療は守られない・・・・しかし民間の特定医療法人の多くは三次救急など不採算医療を担って利益を出している。公立病院並みの税金投入を民間病院にしたら二次救急を担当できると言う反論に 公立病院の経営者は応えてもらわねばならない』 


【しんぶん副読本】変革迫られる公立病院の経営 11月9日 効率優先には反発も 
2008.11.09 産経新聞  
  

 公立病院に独立行政法人化や運営の民間委託の動きが広がっています。人件費などのコストが高く、非効率とされる行政直営方式を転換して経営改善するのが狙いです。しかし、効率優先の改革に住民らの反発もあり、自治体は公的医療の確保と健全経営の両立へ難しい判断を迫られています。 

 「独立行政法人に移行し柔軟で弾力的な経営を行う方が、その役割を的確に果たしていける」。今年3月、神奈川県の松沢成文知事は県立の6病院を平成22年度に独法化することを正式表明しました。改革の焦点は足柄上病院(松田町)です。県西部の1市5町で唯一の総合病院で災害拠点病院にも指定されていますが、10年以上赤字続き。最近は医師、看護師不足の影響もあり、経営悪化がさらに深刻になっていました。 

 同病院に対して県が特に問題視するのは、収入の77%にも達する高い人件費の割合で、「独法なら年功序列の給与体系をなくし、給与を切り下げられる」と、改革のコスト削減効果を強調しています。これに県の職員組合側は「給与カットは看護師などの人材確保をさらに難しくする」と反発。直営の維持を求める約5万人の署名を集めました。連動する住民グループも「公立病院は採算が取れないのは当たり前で、直営でないと維持できない。独法では赤字病院が切り捨てられる」と不信感を強めています。 

 もともと公立病院は、不採算を理由に民間病院が進出しない地域や分野の医療を担うことを目的に自治体が開設してきました。民間病院が増え、病院全体に占める割合は1割程度となりましたが、僻地(へきち)医療拠点病院では7割、災害医療センターでは4割と、今も不採算分野で果たす役割は大きいのです。しかし赤字は不採算とされる範囲を超えて膨らんでいきました。総務省によると、全国957公立病院の約7割が19年度決算で赤字を計上。単年度の赤字総額は2006億円に上り、累積赤字は初めて2兆円を超えました。 

 原因とされるのが高コスト体質。全国自治体病院協議会の調査では、公立病院のベッド100床当たりの月間収入は約1億2700万円。民間病院より約1000万円少ないが、給与費は民間より約800万円も高く、薬品など材料費や委託費も民間を大きく上回っています。 

 総務省は「高コストの原因は、硬直的な給与体系や、予算、契約面への制約」と行政直営の弊害を強調。昨年策定した指針で、民間手法を活用した経営形態の見直しを検討するよう求めました。自治体財政健全化法では、20年度決算から公立病院の決算も自治体財政の健全性を計る指標に加えられます。財政破綻した北海道夕張市の二の舞いを回避しようと、多くの自治体は指針に従い見直しに着手しましたが、一方で、直営維持を表明する自治体も少なくありません。 

 公立病院の経営幹部の間からは「直営でも工夫次第で経営改善はできる。安易な独法、公設民営化が行き着くのは民間譲渡だが、民間では、不採算医療は守られない」と非直営方式の拡大に警鐘を鳴らす声がある一方で、その経営の難しさを「綱渡りと飛び石の連続」と例え、不安を訴える声もあります。 

 ■地方独立行政法人 16年に施行された地方独立行政法人法に基づき、地方自治体が直接実施する必要はないが、民間に委ねては確実に実施されなくなる恐れのある事業を効率的・効果的に行わせるため、自治体が設立する法人。病院やバスなど公営企業、試験研究機関や大学などが対象となります。職員の定数条例などに縛られる直営方式と比べ、人事や物品調達といった面で自律的で柔軟な運営が可能に。ただ3~5年の中期目標や中期計画は議会などの承認が必要です。