都道府県と政令指定都市が直接運営する二百二十九の公立病院のうち三割に当たる六十八病院が経営形態を変更・・・山が動き出した。医師確保と財政再建は両輪である



『都道府県と政令指定都市が直接運営する二百二十九の公立病院のうち三割に当たる六十八病院が経営形態を変更・・・山が動き出した。医師確保と財政再建は両輪である』 


公立病院3割が直営見直し 独法化など計画・検討 
2008.10.25 共同通信  
  都道府県と政令指定都市が直接運営する二百二十九の公立病院のうち三割に当たる六十八病院で、経営改善に向け自律的な運営が可能となる地方独立行政法人化や運営の民間委託など直営方式からの転換について計画・検討されていることが二十五日、共同通信社のアンケートで分かった。 
  
独法化など民間手法を活用した経営効率化に対しては「へき地医療など不採算部門の切り捨てにつながる」との慎重論も根強いが、全国で千近い 

公立病院の約七割が赤字を抱える中 
、総務省が有効な改革策として推奨。今後、県立病院など地域医療の拠点で採用が広がれば、市町村を含めた公的医療機関の改編にも影響しそうだ。 
  
アンケートでは、すでに全病院を独法化などで非直営化した大阪、岡山、福岡の三府県以外の都道府県と政令市に、地方公営企業法に基づき直営している二百二十九病院の経営形態の見直しについて聞いた。 
  
このうち秋田県など八都県市の十八病院は、二〇一〇年度にかけ独法化や民間医療法人への運営委託などを計画。 
岐阜県など十四都道府県市の五十病院も、非直営化を含め見直しを検討している。二病院の独法化を計画している福岡市は「人事や予算の制約をなくし、市の担う医療を安定、効率的に提供するため」としている。 
  
一方、徳島県など二十八道県市の百八病院は「直営を維持する」方針。 
愛媛県は「不採算部門も担う県内各地の中核病院として直営が適当」、西日本の県は「直営でないと業務の監視に不安がある」と話す。 
その大半は特別職の事業管理者に人事や予算権限を委ね、直営でも経営の独立性をある程度備えた「地方公営企業法の全部適用」を採用。近年、経営改革の一環として移行した病院も多い。 
  

ただ、総務省は全部適用の経営改善効果を「限定的」とし、効果がない場合はさらに独法化などの検討を求めており、「当面は成果を検証したい」(青森県)など、将来の見直しに含みを残すコメントも目立った。 
 その他の十八県市の五十三病院に関する回答は「未定」などだった。 


迫られる医療、経営の両立 効率優先に住民の反発も 
2008.10.25 共同通信   
  
 公立病院に独立行政法人化や運営の民間委託の動きが広がっている。 
人件費などのコストが高く非効率とされる行政直営方式を転換して経営改善するのが狙いだが、効率優先の改革に住民らの反発も。 
九月には直営での再建を目指した千葉県銚子市の市立総合病院が休止に追い込まれており、自治体は公的医療の確保と健全経営の両立へ難しい判断を迫られている。 
  
▽切り捨て 
 「独立行政法人に移行し柔軟で弾力的な経営を行う方が、その役割を的確に果たしていける」 
 今年三月、神奈川県の松沢成文知事は記者会見でこう強調し、県立の六病院を二〇一〇年度に独法化することを正式表明した。 
  
改革の焦点は足柄上病院(松田町)だ。 
県西部の一市五町で唯一の総合病院で災害拠点病院にも指定されているが、十年以上赤字続き。最近は医師、看護師不足の影響もあり、経営悪化がさらに深刻になっている。 

 同病院に対して県が特に問題視するのは、収入の77%にも達する高い人件費の割合で、「独法なら年功序列の給与体系をなくし、給与を切り下げられる」と、改革のコスト削減効果を強調する。 
  
これに「給与カットは看護師などの人材確保をさらに難しくする」と反発しているのは神奈川県職員労働組合総連合。 
これまでに直営の維持を求める約五万人の署名を集めた。連動する住民グループの元公務員の男性(65)も「公立病院は採算が取れないのは当たり前で、直営でないと維持できない。独法では赤字病院が切り捨てられる」と不信感を強めている。 
  

▽高コスト体質 
 もともと公立病院は、不採算を理由に民間病院が進出しない地域や分野の医療を担うことを目的に自治体が開設してきた。 

民間病院が増え、病院全体に占める割合は一割程度となったが、へき地医療拠点病院では七割、災害医療センターでは四割と、今も不採算分野で果たす役割は大きい。 
  

しかし赤字は不採算とされる範囲を超えて膨らんでいった。総務省によると、全国九百五十七公立病院の約七割が〇七年度決算で赤字を計上。単年度の赤字総額は二千六億円に上り、累積赤字は初めて二兆円を超えた。 
 原因とされるのが高コスト体質だ。全国自治体病院協議会の調査では、公立病院のベッド百床当たりの月間収入は約一億二千七百万円で、民間病院より約一千万円少ないが、給与費は民間より約八百万円も高く、薬品などの材料費や委託費も民間を大きく上回る。 
  

▽綱渡り 
 総務省は「高コストの原因は、硬直的な給与体系や、予算、契約面への制約」と行政直営の弊害を強調。昨年策定した指針で、民間手法を活用した経営形態の見直しを検討するよう求めた。 
  
自治体財政健全化法では、〇八年度決算から公立病院の決算も自治体財政の健全性を計る指標に加えられる。財政破たんした北海道夕張市の二の舞いを回避しようと、多くの自治体は指針に従い見直しに着手したが、一方で、直営維持を表明する自治体も少なくない。 
  
徳島県の塩谷泰一病院事業管理者は、職員の意識改革で無駄を省いて公立病院の経営を立て直した経験を基に「直営でも工夫次第で経営改善はできる。安易な独法、公設民営化が行き着くのは民間譲渡だが、民間では、不採算医療は守られない」と非直営方式の拡大に警鐘を鳴らしている。 
  
岩手県藤沢町で、高い医療水準を維持しながら開設から十五年間、黒字を続ける国保藤沢町民病院の佐藤元美院長は、その経営の難しさを「綱渡りと飛び石の連続」と例える。踏み外せば、銚子市立総合病院のような破たんが待っている。