『適切な受診」はなかなか進んでいない。医師不足が深刻な本県では、地域医療を守るために医師の負担をできるだけ減らすことが求められており、関係者は、県民の意識醸成を図っている 』

 

『適切な受診」はなかなか進んでいない。医師不足が深刻な本県では、地域医療を守るために医師の負担をできるだけ減らすことが求められており、関係者は、県民の意識醸成を図っている 』   
  
    

進まぬ機能分担受診 県内 大病院に患者集中 関係者、周知に懸命 かかりつけ医紹介も 
2008.09.29岩手日報  
  

 「かかりつけ医を持とう」「コンビニ受診をやめよう」―。医療関係者から、医療機関の機能に合わせた受診が叫ばれているが、大病院志向の患者は多く、「適切な受診」はなかなか進んでいない。医師不足が深刻な本県では、地域医療を守るために医師の負担をできるだけ減らすことが求められており、関係者は、県民の意識醸成を図っている。 

 本県は、十万人当たりの医師数が一八六・八人(二〇〇六年)。全国平均の二一七・五人と大きな差がある。医師不足が深刻な中、特に、勤務医の負担は増している。 

 盛岡市三本柳の盛岡赤十字病院(沼里進院長、四百六十四床)は、外来患者が一日平均約八百三十人。内科には、高血圧や糖尿病など、慢性疾患の患者も少なくないため、外来が夕方まで長引くこともしばしばある。 

 同病院には、数年前から「症状の安定した患者には『かかりつけ医』を紹介する」という医療機能分化を説明するポスターを張り出しているが、現場の医師からは「効果は薄い」との声も聞かれる。紹介状を書いても、戻ってくることも多いという。 

 一度に複数の診療科を受診できることや、「何かあった時に安心だから」というのが主な理由とみられる。 

 こうしたことから、同病院は今後、協力、連携している県内の病院、診療所のリストを張り出す。リストに載る病院、診療所側にも赤十字病院との連携を示すポスターを張り出すことで、患者に安心感を与える狙いだ。 

 全国的には、軽症などの患者が大きな病院へ集まるために負担が増し、心身ともに限界に達し辞めてしまう勤務医も少なくないという。コンビニ感覚で、休日や夜間に救急外来に飛び込む例も、勤務医が疲弊する一因だ。 

 兵庫県丹波市の母親たちは昨年、県立柏原病院で激務のために小児科医が辞めそうになった時に「県立柏原病院の小児科を守る会」を結成。「本当に必要な人が必要なときに診てもらえるように、コンビニ感覚での病院受診をやめよう」と呼び掛け、医師不在となる危機を脱した。 

 この動きは全国的にも注目を集め、同病院はホームページ(HP)で「日本全国の医療崩壊被害を防ぐ可能性もある」と紹介した。 

 本県では、本年度から五カ年の県保健福祉計画保健福祉編に、初めて「住民も医療の担い手であるという意識を持ち、適切な受診を行うことは重要で、地域医療を支える役割がある」という文言を盛り込んだ。 

 県内の約千五百医療機関の機能も初めてHP上で公表。「地元でもこの治療が受けられる」など、受診の参考にしてほしい考えだ。 

 県保健福祉企画室の野原勝企画担当課長は「安全で質の高い医療を守るためにも、医療機関の役割に応じた適切な受診を心掛けてほしい」と求める。 

〔症状が安定した患者に、かかりつけ医への受診を呼び掛けるポスター。医療関係者は「適切な受診」を訴えている=盛岡赤十字病院〕 

岩手日報社