福島県南相馬市  非常事態宣言を発し、市立小高病院の存続に向けて手を打ち始めた。一方、伊達市は市立梁川病院を廃止する・・


『福島県南相馬市  非常事態宣言を発し、市立小高病院の存続に向けて手を打ち始めた。一方、伊達市は市立梁川病院を廃止する・・地域医療に果たす役割は終わったと仁志田昇司市長が明言。50ある病床すべてが、厚生労働省が廃止方針を打ち出している「介護型」の療養病床であることに加え、外来患者が10年前より半減。昨年7月には常勤医が1人になっていた。 』 

自治体病院、未来は 存続へ、医師優遇策 南相馬・小高病院 /福島県 
2008.09.11朝日新聞   
  

 経営難や医師不足に悩む県内の自治体病院のなかで、病院の将来像を鮮明にしようという動きが出てきた。南相馬市は「非常事態宣言」を発し、市立小高病院の存続に向けて手を打ち始めた。一方、伊達市は市立梁川病院を廃止する方針だ。それぞれ地域のニーズを踏まえたうえでの決断だが、退院を求められる患者の受け皿整備といった課題も浮かび上がる。 


 小高病院は、一般病床48に「医療型」と「介護型」の療養病床51を併せ持つケアミックス型病院。内科、外科、眼科、放射線科、リハビリテーション科の5科で4人の常勤医がいる。だが今後、2人が退職する見込みで当直が回らなくなるため、今月から市医師会所属の開業医の応援を得ている。 

 こうした方針の源には、市の市立病院改革プラン策定委での議論がある。策定委は同病院を「急性期医療と在宅医療の中間を受け持つ病院」と位置づける。公立と民間の医療機関の役割を明確化して連携を目指すうえで、国の政策では減るとみられる「中間」の役割は堅持しなくてはならないという考えだ。 

 策定委は民営化や第三セクターでの運営の可能性なども議論しているが、常勤医が最低3人は必要とした。これらの議論を踏まえて市は「非常事態宣言」に、増員の呼び水となる医師の待遇改善を盛り込んだ。9月定例市議会で市は、特殊診療手当と医学研究手当の支給限度額引き上げや退職手当の増額などの条例改正を提案する。 

 一方、市立総合病院で、紹介状のない患者の初診料を現行の約4倍の1500円に引き上げる条例改正案も提出する。「コンビニ受診」をなくし、「かかりつけ医」への受診を促すためという。 


 ○廃止へ、受け皿不安 伊達・梁川病院 

 「老人は死ね、ということなのでしょうか」。母親(86)を見舞うため梁川病院に来た息子の会社員(56)は、ため息をついた。ほとんど寝たきりで認知症もある母親は介護施設を転々とした末、06年11月に入院。会社員は「常に次の受け入れ先を探していた。ここは期限がないので、喜んでいたのですが……」。 

 「地域医療に果たす役割は終わった」。仁志田昇司市長がそう明言した梁川病院。50ある病床すべてが、厚生労働省が廃止方針を打ち出している「介護型」の療養病床であることに加え、外来患者が10年前より半減。昨年7月には常勤医が1人になっていた。 

 国見町の藤田総合病院も近く、市内で今年度、新たに三つの診療所ができ、仁志田市長は「周辺の医療機関が充実している」とも言う。しかし、療養病床を持つ病院は伊達郡内でも梁川病院を含め3カ所だけ。介護施設は入所待ちのところがほとんどだ。 

 伊達郡医師会の菊池重幸会長は「病院の役割終了」に理解を示しつつ、「療養型の患者さんにとって数少ない受け皿だった。医師会としての対応を考えたい」と話す。 

 療養病床について県は、06年10月現在で民間病院も含め県内に4797ある病床を、2200にする目標を定めている。退院を求められる患者について厚労省は、介護療養型老人保健施設などの受け皿施設に移らせる計画だ。 

 ただ、受け皿施設が新設される見通しが立つ前に、病床の廃止が実現してしまう可能性もある。新たな施設に移っても「そこで必要な医療ケアが受けられるか」といった患者の不安をどう解消するかなど、課題は山積している。 


 ◆キーワード 

 <県内の自治体病院> 06年度末の決算値によると、県内の市町村が運営する11病院の赤字額の合計は、02年度末の3倍超にあたる26億5千万円で、8病院は経常赤字だった。もともとの高コスト体質に、診療報酬のマイナス改定や勤務医の流出なども加わって経営難が加速。資金を援助する自治体の財政にまで影響を与え始めている。 

 総務省は昨年12月、「公立病院改革ガイドライン」を策定。「黒字」化を達成するため、病院の再編や診療科の削減などを求めている。 


 【写真説明】 

 小高病院(写真上) 年間外来患者数:4万4562人  市からの繰入金(損益ベース):9700万円 ▽梁川病院(同下) 年間外来患者数:2万996人 市からの繰入金(損益ベース):9500万円 (06年度市町村公営企業年報から作成)