公立病院がガイドラインに即して改革を進めれば存続が困難になるはずはないが, 聖域に挑戦できず財政破綻すれば, 国鉄の民営化とほぼ同じ道を歩む事になろう・・・

 






 




『公立病院がガイドラインに即して改革を進めれば存続が困難になるはずはないが, 聖域に挑戦できず財政破綻すれば, 国鉄の民営化とほぼ同じ道を歩む事になろう・・・ 

受け皿として社会医療法人が, 市場から返済不要の良質な資金を導入して, 地域医療を立派に担うことが出来る。 

20年前の日本経済新聞の拙稿が今日の事態を予想していたことに感慨深いものがあります。地方債が先細りしても来年度から病院債起債が地域医療を再生して経済成長の牽引車になって行くことでしょう』(長 隆) 





〔特集〕病院経営も透明性が問われる時代 

医療無残 

2008.08.26 エコノミスト   

       

特集 医療無残 



医療法人の格付け 

病院経営も透明性が問われる時代 



医療法人による格付け取得が始まっており、病院も経営の透明性や健全性が問われる時代が来た。 



よしだ のりお 

吉田 法男 

(日本格付研究所医療格付グループ・チーフ) 



 2004年、医療法人にも「医療機関債」の発行が解禁され、市場から直接金融による資金調達ができるようになった。 

  

医療機関債とは、医療法人が発行する私募債と考えればよい。 

加えて、この4月から社会医療法人への移行を目指す動きが本格化している。 



社会医療法人は、僻地医療や小児救急医療を担う新たな医療法人形態であり、収益事業を行うことも、社債を発行することもできる。 

  

この「社会医療法人債」は医療機関債とは違って公募債であるため、外部監査が義務づけられている。このため、医療機関の経営の健全性に一層光が当たるようになっている。 



「非営利=非効率」ではダメ 



 現在、金融庁が指定した5つの指定格付け機関による格付けを公表している医療機関は12法人。うち、当社による格付けが8法人。 

  

医療機関は非営利法人であり、特殊な指標、会計制度の違い、主務官庁の存在などの業種特性がある。 

また、医療制度や医療を取り巻く環境の変化が、経営に大きな影響を及ぼすことも考慮しなければならない。 

  

実際に格付けを行う際は「定性的分析」「定量的分析」そして「制度・環境要因分析」の視点から、総合的に格付けを行っている。 



定性的分析とは、診療・経営方針や医療の質の確保、中期経営計画、投資・資金調達などであり、 

定量的分析とは機能性、収益性、生産性、財務指標などだ。そして制度・環境要因分析とは、地域医療計画、地域連携、2次医療圏における位置づけなどが、評価における重要な点になる。 

  

医療機関が格付けを行うメリットは何であろうか。 



一般的には、情報開示や経営の透明性が挙げられるが、医療機関が自ら医療機関債などを発行しない場合でも、銀行から借り入れを行う際に公的に認められた第3者機関による返済能力の評価を提示でき、信用力を上げることができる。 



また、格付けを取得するときは内部管理体制なども評価されるため、経営の透明性向上にもつながる。長年取引がある銀行以外からの借り入れも行いやすくなるほか、資金調達コストの削減に役立つ。 

  

実際に格付けを公表している医療機関はまだ12法人にすぎないが、社会医療法人債の発行など、医療機関の公的性格はこれまで以上に強まっていくことは間違いない。 



非営利性・公益性の徹底とともに、効率的で透明な医業経営の実現は必要であるが、「非営利=非効率」であってはならない。医療機関にも、透明な経営の実現が問われる時代になっているのである。 


















































(ご紹介 新刊)



病院の資金調達なるほどQ&A  
   ←リンクしてます  



医療法改正によって認められた社会医療法人債の内容、発行の手続き・注意点をわかりやすく解説し、併せて従来の資金調達との違いや債券の発行に伴う格付けの役割まで言及。 



・東日本税理士法人[編]/日本格付研究所[編] 

・発行日:2008/07/30 

・A5判/228ページ 

定価:2,730円(税込) 

  

効率的医療経営へ「病院債」を 

‐長期資金、安定的に 固定費削減も‐                  








長 隆



















日本経済新聞「経済教室」1988年2月18日掲載 



・日本の医療機関を取り巻く環境は今後、自由化、多元化、多様化の方向に向かい「競争原理」の導入が進む。これに合わせて医療経営の理念を明確にする為に、医療法の改正が必要である。 

・医療機関の会計制度には問題が多く、このままでは医療法人の育成、病院新増設の規制という国の方針も、国民の医療費負担の軽減にはつながらない。 

・医療法の改正によって医療機関に企業体としての意識をもたらし、ムリ、ムダ、ムラのない効率的な医療経営を目指すべきである。 

・さらに、効率的な医療経営のためのファイナンスとして、「病院債」の発行を提案したい。 



損益計算書提出も義務化を 

 高齢化社会を迎えつつある今日、日本の医療需要は増加の一途をたどる傾向にある。これからは、必要な医療資源をより効率的に活用しなければ、国民が負担する健保、税金は際限なく増大していくだろう。 

  そうした医療資源の効率的活用の一環として、現在考えられているのが医療法人の育成である。例えば六十年十二月、衆院社会労働委員会は医療法人の育成について対策を講ずる決議をした。また六十年の改正医療法では、診療所についても医療法人化の道が開かれ、六十三年一月一日現在、四十七都道府県で七百二十三件認可されている。 

  法人化は、医療機関経営の安定と近代化につながるとの観点から、積極的に推進すべきものとされているわけである。しかし、日本の医療をみると、法人化は必ずしも医療資源の効率的活用に結びついていないのが実情である。このままでは総医療費の抑制に効果があるかどうかも疑わしい。 

  そこで以下、この問題と関係が深い医療法の「会計に関する規程」を中心に取り上げ、日本が高齢化社会に向けて取り組むべき課題を明らかにしたい。 

  医療法は、医療機関の管理と医療資源の確保、その体制整備などを目的としており、いわば医療の基本法である。二十三年に施行されて以来、何度か改正を重ねてきたが、一貫して変わっていないのが医療公経営(非営利経営)という前提である。医療機関は国家財政と同様の考え方、つまり「支出が先にあってその後収入が確保される」という論理が相変わらず前提になっている。 

  この前提が変わらないまま、競争原理が導入されればどうなるか。例えば現在、総医療費抑制の有効手段として、地域医療計画による病院の新増設規制が始まったがこうした物理的規制は、短期的には駆け込み増床などによってかえって総医療費増加につながる懸念さえある。 

  医療法の五十二条は、民間の医療機関が毎会計年度終了後、二ヶ月以内に財産目録、貸借対照表及び収支計算書を作成し、保健所に提出する事を義務付けている。ところが、収支計算書とは資金繰り表のことであり、経営の成績を示すものではない。 

  例えば、医薬品の仕入代金の支払期限を一ヶ月延長すれば、収支計算上は収支が改善されたことになる。しかしこの場合、収支が改善されたからといって、経営成績が改善されたとは言えないのである。つまり、収支計算書だけでは、医薬品の仕入代をどれだけ支払ったかはわかるものの、医薬品を実際にどれだけ使用したかは明らかにならない。 

  もし収支計算書に加えて、損益計算書の提出も義務付ければ、医薬品の実際の使用量はもとより、毎月の医療行為も明示されることになる。医療機関の医療行為の総量(企業の売上高に相当)が把握できるわけで、同じ医療行為に無駄ない費用がかかっていないかがチェックされ、同時に、医師や看護婦など一人当たりの収入もわかるので、人件費のムダも排除できる。さらに診療科目別の採算も明らかになるというメリットもある。 

  損益計算書の提出を求めない限り、本当の経営成績をつかめないのは当然のことで、一日も早い医療法の改正が望まれる。そうすれば、医療機関の経営も国の予算のような発想から脱却し、経営体としての意識を持つ環境が整うだろう。 

  一方、公的病院は収支計算書さえも提出を義務付けられていない。これでは民間医療機関との公正な競争は望めない。官民の病院に対し、ともに損益計算書も含めて提出を求めることで、正しい経営成績を開示し、お互いが競争しながら国民の批判に耐える経営体質になってもらわなければならない。 





ムリ・ムラ・ムダ排除の努力を 

 もちろん医療法を改正し、損益計算書の提出を義務付けるようにしたからといって、医療機関の効率的な経営がすぐに実現する、というわけにはいかない。医療機関自身がムリ、ムラ、ムダのない経営のために、全ての面で十分に検討をし、それを実施する必要がある。  医薬品の在庫管理一つを例にとっても、人手不足などを理由に医薬品卸業のセールスマンにまかせ、その結果、過剰な在庫を抱えている病院を数多く見かける。 

  患者によって、どのような薬品が必要かは違ってくるので、できるだけ多くの在庫(備蓄)が在った方が良いという考え方もあるが、現在では大半の医薬品は、特に都市部では毎日のように回ってくる卸業者を通じていつでも入手できる。手に入りにくい一部の医薬品は別としても、効率的な在庫を目指さないと、いわゆる在庫金利だけでもその負担は重くなる。 

  例えば総収入が年間十億円の医療機関では、医薬品代は平均三億円程度だがその医薬品の在庫期間を四ヶ月間とすれば金利だけで五百万円かかる計算になる。このようなムダな在庫をなくす為、東京都内の十の病院グループ(年間医療収入計二百億円)は、毎月末、医薬品の棚卸を実施し、適正在庫管理の手法とされるABC管理を導入している。 

  ここでは消費する医薬品の正確に基づいてA、B、Cに三分類し、需要に応じて発注形態を変えている。これにより「この量まで減らない限り新たな発注はしない」といった適正購入のシステムが確立している。 

  スーパーなど流通業では一週間に一回、全店員を動員して商品を一斉に棚卸することも珍しくない。商品を現金と同様に考えることが、トップから末端まで徹底している。医療機関も固定費化されがちな医薬品代を完全に流動化させることが望まれる。 

  診療報酬が十分に上がらず、経営が苦しくなる中で、医療機関は必要利益を確保するために、規模の拡大を目指す傾向が見られる。しかし、規模拡大による収入増加を百とした場合、人件費や在庫金利といった固定費も六十程度増えるというケースが多い。規模を拡大すればするほど、逆に必要利益は確保しにくくなり、しかも医療費そのものは際限なく増加し、国民に重い負担となってのしかかってくる、という不幸な結果につながりかねない。規模の拡大よりも、まずムダな固定費を削減する努力をすべきである。 





損益計画もたてやすい 

  医療経営の安定化と効率化のための方法として「病院債」の発行を認めることも有効だと思う。病院経営者は最低限必要な増改築もままならないのが実情である。そのためにムリな借金をして規模を拡大し、利益を追求するという行動も誘発する。営利企業に認められている「私募債」の発行が、病院にも認められてよいのではないだろうか。 

  ここでいう病院債は、証券会社を経由せずに発行病院(医療法人)の特定の取引金融機関に直接依頼して発行するものをいう。病院債のメリットとしては次のようなことが考えられる。 

・比較的多額の長期安定資金を調達することが出来る。 

・資金調達コストは発行時に固定され、その後は変動しない。従って損益計画がたてやすい。・受託銀行が手続きを一括して行うので、個別の借入より手数が軽減される。・増資(持分の定めのある医療法人に限る)の場合と違って、購入者は単に投資目的のために病院債を保有するので、病院の経営には何ら関与しない。 

・「病院債発行病院」ということで対外的信用度評価がさらに強固なものとなり、病院のイメージアップにつながる。 

  

 米国では病院の資金調達手段として病院債(免税債=Tax Exempt Bond)が、免税、低利の魅力から一九七〇年代以後、活用され始めた。免税債を購入した人の受け取る利子は連邦所得税法上、非課税とされ、さらに多くの州で住民税も非課税となっていた。 

 このため、米国の病院が発行した免税債額は八十三年が百億ドル、八十四年百一億ドル、八十五年百二十億ドル、八十六年(見込み)百億ドルと、ここ数年、常に百億ドル以上の規模となっている。 

 八十六年度の税法改正により、公共目的以外に発行される債券からの受取利息が課税対象となり、しかも所得税の最高税率五〇%から二十八%に引き下げられたことから、投資家にとって税制上のこの魅力は低下した。しかし、低利安定資金としてのメリットは依然として残っているため、米国では規模の大きな病院が病院債により資金調達する傾向は今後とも続くと予想されている。 

 日本で病院債を認める場合、将来的には非課税債にまで発展させることが望ましいが、当面は国の財政に負担をかけない課税病院債としてスタートさせるべきであろう。金融機関にとっても、金余り現象が続く中で、潜在的資本需要が極めて旺盛な病院への投資は魅力的なものとなる。 

 医療機関の資金調達手段としては、現在禁止されている株式発行なども考えられる。株式発行や配当を認めることによって、資本の論理を導入すべきだとの意見もあるが、医療をもうけの対象としてとらえることは、医療法上も国民感情からも望ましくないだろう。病院債の導入により、効率的な医療経営、国民の医療費負担軽減のためのファイナンスを期待したい