看護の力で地域を支える・・・・ワシントン州カークランド市にある公立病院エバーグリーン医療センター付属



『看護の力で地域を支える・・・・ワシントン州カークランド市にある公立病院エバーグリーン医療センター付属の看護師電話トリアージ「エバーグリーン・ヘルスライン」は、92年に同医療センターの地域住民サービスの一環として設立されまた, 当初は6、7人のスタッフで家庭医や専門医、健康教室の紹介などを行うサービスが主体であったが、看護師に対する医療相談が増え始めたため、93年から3交替24時間体制で電話トリアージを行うプログラムとなった。 
08年現在、スタッフは約60人、そのうち電話トリアージ専門の登録看護師(日本の正看護師に相当)は40人いる』       
     
  
    

米国で広がる電話トリアージシステム/看護の力で地域を支える  1/臨床積んだナース対応/ITと訓練で患者の信頼 
2008.08.22環境新聞社   
  

 「トリアージ」という言葉が日本のメディアで報道され、ある程度知られるようになったのは、おそらく2005年4月25日に起きたJR福知山線脱線事故くらいからではないでしょうか。あの時、あの現場に駆けつけた医療者たちは、事故にあったけが人を緊急度によって「トリアージ」しました。その様子はテレビ番組でも報道されましたので、「治療や搬送を緊急度の高い人から優先的に行うために、緊急度によってけが人を選別していくこと」  この狭義での意味が日本では一番広く知られているように思います。 

 この短期連載では、医療におけるトリアージを、災害時だけではなく、もう少し広い意味で捉えてほしいと考えています。その先進的な取り組みとして、アメリカで近年広がっている、看護師による電話トリアージシステムについて紹介します。患者の「選別」ではなく「仕分け/相談」と理解されています。 

 アメリカでは看護師による電話トリアージは、かなり以前から行われてきました。医療における人的、時間的、経済的資源の制限は、何も災害時だけではなく、今や恒常的な医療現場の問題となってきているために、看護師電話トリアージの重要性や需要はますます高まり、病院や保険会社でも活用されるようになってきています。24時間体制で行っているところが多いのですが、時間外や休日だけを対象としたサービスもあります。 

 アメリカにおける電話を使った患者支援の内容は、主として次の3通りに分けることが出来ます。 

 (1)電話により、患者の現在の症状を把握して、その症状を緊急度に応じて仕分けし、次にとるべきステップについての助言,医療施設の紹介など、適切な支援と助言を提供する。 

 (2)慢性疾患の患者の疾患管理を行い、出来るだけ長期間にわたって在宅で症状をコントロール出来るように、症状の継続的把握と適切な助言を提供する。 

 (3)転倒した時の緊急連絡から不安や寂しさへの対応まで、事前に登録した患者データを下にして、独居在宅生活を続ける高齢者や障害者を支援する(在宅生活継続的支援)。 

 一番一般的な電話トリアージは上記(1)の内容ですが、アメリカでも慢性疾患とともに生きる高齢者、独居高齢者、老々介護がますます増えている現在、(2)、(3)の業務への需要も高まってきています。 

 私が、今年の2月と5月、2度にわたって取材したワシントン州カークランド市にある公立病院エバーグリーン医療センター付属の看護師電話トリアージ「エバーグリーン・ヘルスライン」(以下ヘルスライン)は、92年に同医療センターの地域住民サービスの一環として設立されました。当初は6、7人のスタッフで家庭医や専門医、健康教室の紹介などを行うサービスが主体でしたが、看護師に対する医療相談が増え始めたため、93年から3交替24時間体制で電話トリアージを行うプログラムとなりました。08年現在、スタッフは約60人、そのうち電話トリアージ専門の登録看護師(日本の正看護師に相当)は40人います。 

 電話はまず、受付スタッフにより看護師へのもの(ナースコール)か、それ以外か(医師や健康教室の紹介かなど)を判断します。ナースコールであればすべてセンター側からかけ直すことになっています。看護師は7時~15時30分の日勤に4人、15時~24時の準夜勤に5人、そして20時30分~翌7時までの深夜勤に2人が配置されています。深夜にかけて配置が多くなるのは、この時間帯に最も多く電話がかかってくるためです。 

 それぞれの看護師は写真のように個別のブースで、緊急度の高い順に電話をかけていきます。最も高い緊急度とされた場合は5分以内にかけ直すのが規則です。そして、エビデンスに基づいた500ほどのガイドラインが組み込まれたコンピュータソフトを使用し、患者の症状を判断していきます。 

 同センターでは、ヘルスラインに出る前の看護師に対する訓練に十分に時間をかけています。コンピュータを使いながらの6週間のフルトレーニングの中心となるのは、実践と同じコンピュータソフトを使いこなすこと、画面から情報を探しながら自然に会話しているように相談者と話すコミュニケーション術、緊急を要するケアに関するアドバイスのプロセス、主要なガイドライン内容(トップ10ガイドライン)に関する徹底指導などです。その後は、実際の電話応対現場で、熟練したプリセプター看護師について2~3週間の臨地訓練を受けます。 

 さまざまな領域での相談が寄せられるために、同医療センターでは幅広い臨床経験を持つ看護師の雇用に努めており、最低5年の臨床経験を雇用基準としています。臨床ガイドラインの入ったコンピュータソフトを使用するとは言え、対面での助言ではないために、適切な判断をするためには臨床経験が不可欠だからです。そして、判断に迷った時には、必ずより重い症状を念頭においた助言をするように徹底した指導が行われています。患者と看護師の両方を守るために重要なことだとされています。 

 電話トリアージの最も重要な意義は、不安を抱える患者に安心を与えたり支援すると言うことです。幅広い臨床を積んだ看護師の応対にこだわるのもそのためであり、その結果が医療費の削減にもつながるのです。この順序を間違えないように理解することが大切なのです。 

(医療福祉ジャーナリスト・早野真佐子)