患者のための病院 を目指した独立行政法人化・・那覇市立病院・・・・・〇六年には中森看護部長を副院長に起用。


『患者のための病院 を目指した独立行政法人化・・那覇市立病院・・・・・〇六年には中森看護部長を副院長に起用。同年の診療報酬改定で手厚い看護体制を敷く病院への報酬増が決まると、中森副院長が「市の定数条例に縛られたままでは必要な看護師数を確保できない」と主張し、独法化への道筋を付けた。 
・・・・職員が非公務員の独法なら従来より柔軟な病院運営が可能になる。中森副院長は「公立病院では医師や看護師に公的医療を支える使命感があっても、役所体質や年功序列主義に阻まれてきた。病院は職員ではなく患者のためのもの」という』 
    

連載/地域はいま 揺れる公立病院 4/那覇市立病院(沖縄)/脱「役所」、独法化選ぶ 
2008.08.19東奥日報社   
  

 強い日差しが照り付ける那覇市立病院の玄関を入ると、案内カウンターで中森えり副院長兼看護部長がにこやかに患者と応対していた。「ここにいると患者の生の声が聞ける。職員の意識改革の一環なんです」 

 同病院は四月に地方独立行政法人となった。自らも案内役に立つという与儀実津夫院長は、堅実経営が続く中、あえて経営形態の変更を決断した理由を「いい医療を維持するため」と説明。その底流に「職員一丸で進めてきた長い改革の実績があった」と振り返る。 

▼開院から赤字続き 

 同病院は一九八〇年の開院から赤字続きだった。当時を知る幹部は「職員は経営に無関心で診療報酬の仕組みすら知らなかった」と話す。 

 九四年度、累積赤字は約六十一億円に。危機にひんした病院は経営健全化対策室を設け、医師や事務など職種を超え編成したグループごとに全国各地で優良な経営を続ける病院を視察。そこから「住民にいい医療を提供する」という原点に立ち返る。 

 職員の意識改革とコスト削減を徹底しながら、九九年に同じ敷地内にある夜間・休日の救急診療所を統合。二〇〇四年からは医師らの「負担増を覚悟した」提言により、住民の要望が高かった二十四時間の小児科診療にも取り組んでいる。 

 この結果、二〇〇〇年は年間約三万人だった診察時間外の患者は〇五年までに倍増。一日の外来患者も同時期に約九百人から約千二百人に伸び、収支は黒字に転じた。 

▼患者のための病院 

 〇六年には中森看護部長を副院長に起用。同年の診療報酬改定で手厚い看護体制を敷く病院への報酬増が決まると、中森副院長が「市の定数条例に縛られたままでは必要な看護師数を確保できない」と主張し、独法化への道筋を付けた。 

 職員が非公務員の独法なら従来より柔軟な病院運営が可能になる。中森副院長は「公立病院では医師や看護師に公的医療を支える使命感があっても、役所体質や年功序列主義に阻まれてきた。病院は職員ではなく患者のためのもの」と言う。 

 生後十カ月の娘を抱いて会計を待つ主婦(38)に病院の感想を聞くと、「夜中の発熱でも必ず小児科の先生が診てくれるから安心」との答えが返ってきた。 

●地方独立行政法人 

 試験・研究や公営企業など「自治体が直接実施する必要はないが、民間に委ねた場合に実施されなくなる恐れのある」事業を自治体から分離、独立した法人格を与えた組織。単年度予算主義に縛られない予算執行や個人の業務実績、社会情勢を考慮した人事、給与制度など、自律的で弾力的な運営が可能になる。病院の導入例は大阪府立病院や宮城県立こども病院など。