鹿児島大学の選択と集中に 対応できた鹿児島県立鹿屋医療センター


『鹿児島大学の選択と集中に 対応できた鹿児島県立鹿屋医療センター』 


連載[かごしま医療過疎-拠点の苦悩]5(完)・試み/地域連携で診療カバー  
2008.07.19南日本新聞   
  

 医師不足による診療科の休診・縮小が相次ぐ鹿児島県内の県立病院。救急医療に欠かせない診療科まで休診するケースも出ている。鹿屋地区は医師不足の県立病院に、周囲の民間病院から必要に応じて医師が駆けつける体制をとって窮状をしのぐ。 

 同地区の“拠点”となる県立病院は、鹿屋市の県民健康プラザ鹿屋医療センター。鹿児島大学医局の引き揚げによる集約のため、二〇〇六年七月から整形外科が休診することになった。 

 地元医師会などは困惑した。特に「多発外傷」への対応が危ぶまれたからだ。交通事故などで頭や胸、手足など体の複数の場所にけががおよぶのが多発外傷。生命にかかわるケースが多い。外科や脳神経外科、整形外科など複数の診療科の連携は欠かせない。 

 鹿屋医療センターは、大隅地区で唯一この三つの診療科をそろえていた施設だった。 

 「それぞれの病院が連携して不足する診療科目をカバーし合えないか」。休診を目前にした同年四月、センターの中尾正一郎院長(60)は大隅地区救急医療座談会で消防や地域の病院長らを前にこう切り出した。 

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 鹿大整形外科の医師集約は、鹿屋医療センターと肝属郡医師会立病院(錦江町)からそれぞれ医師二人を引き揚げ、新たに鹿屋市の小倉記念病院に二人、曽於郡医師会立病院(曽於市)に一人を派遣するという大隅半島の配置再編だ。 

 地元では、多発外傷が発生した場合、センターと外科を持つ大隅鹿屋病院、整形外科の小倉記念病院の三病院のどこかが患者を受け入れる。不足する診療科は徳田脳神経外科を含めた他病院から医師が駆けつける取り決めがなされた。 

 休診から二年。対応に困った事例はないという。 

 昨年五月、小倉記念病院の整形外科医小倉雅理事長(52)はセンターに出向き、右足部が壊死(えし)した閉塞性動脈硬化症患者の手術を執刀した。それ以降も、同病院は数回、センターに応援を送っている。鹿大が選んだ集約先から、休診となったセンターを支援したかたちだ。 

 小倉理事長は「医師やスタッフ、設備が限られた大隅地区では、協力し合わないとやっていけない」と話す。 

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 鹿屋医療センターは、日常的な診療は地域開業医に任せ、二次救急や高度医療を担当する「二カ所主治医制」を九年前から実施してきた。 

 「民間との競合を避けセンターがサポーターに徹してきた」と中尾院長。多発外傷での連携も「これまでの素地があってこそ、スムーズに導入できた」という。 

 鹿屋市医師会の池田徹会長(61)は「専門医が少ない大隅半島で、すべてをカバーできるとは思わない。だが、なるべくほころびが出ないよう地域全体で対処するしかない」と語る。 

 医師不足の抜本的解決策が見えない中、県立病院だけでの対応には限界がある。「自分の病院のためだけに医師を探し全国行脚するより、まずは地域医療の空白をどうするかだ」と中尾院長。 

 「限られた医療資源」をいかに活用するか。手探りの試みがすでに始まっている。=おわり= 

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 「かごしま医療過疎」では救急医療や高齢者医療、医療格差など鹿児島の現場が抱えるさまざまな問題を取り上げていきます。ご意見や体験談は下記の社会部取材班まで。 

【写真説明】救急外来で、地域の医療機関から搬送されてきた患者を診る医師ら。地域連携の重要性は高まっている=鹿屋市の鹿屋医療センター