独立行政法人として 2008年4月1日から立派にスタートした先例 山形県・酒田市病院機構・那覇市民病院 を 視察して欲しい・・・



『独立行政法人として 2008年4月1日から立派にスタートした先例 山形県・酒田市病院機構・那覇市民病院 を 視察して欲しい・・・        
  佐賀県立病院 好生館は独立行政法人化の流れだが、五百床を超える総合病院で同様の事例がなく、検証できないと 武廣 辰次さん(自治労県本部副委員長)は 発言しているが・・・情報入手が遅れている。 佐賀県立病院 好生館と武雄市民病院で医師が大量退職した問題は政治的側面が強く、病院改革の流れと分けて考えるべき。行政とのコミュニケーション不足で問題がこじれた。医療従事者や市民へのコンセンサスの取り方も課題に残った。 (岳 英樹 佐賀新聞報道部記者) 』 
  
    

日曜討論 地域医療を考えるシンポジウム 
2008.07.13 佐賀新聞   
  

〈地域医療を考えるシンポジウム〉 


 深刻化する医師不足と国主導で進む経営改革で、公立病院は岐路に立たされている。武雄市民病院の民間移譲問題などの激震が走り、市民の安心も揺らいでいる。医療や行政関係者らが公立病院の在り方を提言した「地域医療を考えるシンポジウム」(県地方自治問題研究所、自治労県支部主催)の要旨を紹介する。 



=基調講演= 松江総合医療専門学校校長・関龍太郎さん 


〈地域に根ざした医療-公立病院の役割と課題〉 


 現在の医師不足のきっかけは二〇〇三年に始まった臨床研修制度。医学部を卒業した医師の研修がフリーアクセスとなったことで都会の病院に集中し、大学病院の医師が不足した。その解消のため大学病院が派遣先の公立病院から医師を引き揚げ、医師不足が深刻化した。 

 一方、〇六年に始まった医療制度改革で、財政危機への対処策が強調され始めた。高齢化と高度医療化で医療費は膨らむのが当然だが、それでもなお医療費抑制の考え方が進んできた。一九九四年に立てた医療費の将来見通しは二〇二五年で百四十一兆円だったが、六十五兆円にまで圧縮するよう下方修正された。 

 医療費圧縮の手段で、最大の狙いは、病床数の削減と入院期間の短縮。受け皿として在宅医療の充実が求められるが、地域の実情としては難しい課題が山積している。入院させないための予防対策として、本年度から特定健診・特定保健指導がスタートしたが、なかなか進んでいない。 

 公立病院改革も医療費の問題の中にある。武雄市民病院が民間移譲で揺れているが、医療を公的に行ってきた意味を考えなければならない。 

 「公的に行う」とは、みんな平等に権利を享受できるということ。義務教育はいくら金がかかっても廃止にはならない。医療も同じだ。公的病院が果たしてきた役割を検証し、公的に地域医療を守ることを考えるべきだ。 

 各県で今年四月から保健医療計画が立案された。がん、脳卒中、心筋梗塞(こうそく)、糖尿病の四疾病と小児、周産期、救急、災害、へき地の五事業が中心。五事業は不採算部門も絡む重要な部門だが、これだけでいいのか。 

 例えば、佐賀県の計画では、患者が多い肝疾患は入っていない。計画にすぎないという面もあるが、医療政策の柱となる計画に盛り込まれていれば予算はつきやすい。公的経費を使うべき医療分野は何なのか、全体で考えるべきだ。 

 病院の運営形態については、これから動きが活発化してくる。武雄のような民営譲渡のほか、指定管理者、独立行政法人化、二次医療圏の見直し、病院の合併再編などがある。それぞれ長所と短所を検討しながら、みんなで合意できる道を探すしかない。 



■コーディネーター 

 徳光 清孝さん(県地方自治問題研究所研究員) 

■コメンテーター 

 関 龍太郎さん(松江総合医療専門学校校長) 

■パネリスト 

 古賀 義行さん(武雄杵島地区医師会長) 

 佐藤 敏行さん(県健康福祉本部長) 

 千住 豊子さん(県立病院好生館看護師長) 

 武廣 辰次さん(自治労県本部副委員長) 

 岳 英樹   (佐賀新聞報道部記者 

 徳光 地域医療や公立病院が直面する課題を浮き彫りにしたい。それぞれの立場から問題提起していただきたい。 


 古賀 武雄市民病院の民間譲渡はあまりに突然。国立療養所武雄病院から移譲を受け、十年間は市が運営する条件があるが、二年を残し譲渡方針を固めた。市民も、病院職員も、地元医師会も眼中になく、「医師確保が困難」「黒字化が見込めない」「救急医療の復活が困難」と理由づけ、強引な手法で進めている。 

 公立病院が財産か、それともお荷物か、分からないが、一度失えば戻らない。最初からしっかり議論されていないのが混乱の原因だ。 


 佐藤 国は医療に人も金も充てていない。抜本的な医師確保対策の必要性があるが、県単独では限界がある。県の医療資源を考える時、県西部や東部は隣県の医療資源も無視できない。県外の医療資源も活用したい。 

 県は奨学金制度や佐賀大医学部の推薦枠などで医師確保対策に取り組んでいる。とにかく医師を養成するのが大事だ。 

 県立病院好生館は独立法人化の方針。病院が機能を果たし地域医療に貢献するのは、人の集団の有機的な組み合わせで初めて成立し、運営形態で決まるものではない。 


 岳 好生館と武雄市民病院で医師が大量退職した問題は政治的側面が強く、病院改革の流れと分けて考えるべき。行政とのコミュニケーション不足で問題がこじれた。医療従事者や市民へのコンセンサスの取り方も課題に残った。 

 疲弊した医師が公立病院から立ち去るのを食い止めるには、コミュニケーションが重要。患者との関係も同様で、他県では患者らが自分にできることを実践する”病院サポーター”の動きも見られる。市民の手に医療を取り戻す取り組みとして注目したい。 


 千住 好生館は高度医療、専門医療、三次救急などの役割を担っている。高齢患者や重症患者が非常に多い中、三次救急の看護も求められ、激務となっている。 

 安全な医療を提供するには医師や看護師の数が重要。入院患者に「ブザーを押してもすぐ来てくれない」とクレームをもらうが、患者七人に対して看護師一人の体制になれば解決する。安全な職場環境が確保されなければ、高度な医療は提供できない時代になった。 


 武廣 公立病院改革ガイドラインで経営形態を見直すことが求められるが、職員の待遇や雇用にかかわる大きな問題。武雄市民病院も労使の協議はこれからだが、生活不安や雇用不安は残る。 

 好生館は独立行政法人化の流れだが、五百床を超える総合病院で同様の事例がなく、検証できない。一二年に新県病院が誕生するが、県が責任を持って新病院の運営を軌道に乗せるのが先だ。 


 関 命にかかわるすべてが医療の対象。地震や新型インフルエンザ対策など、総合的に点検すべきだ。公立病院改革ガイドラインはある意味、分かりやすい問題提起。多くの人に関心を持ってもらい、市民参加を促すことも重要だ。 


 徳光 会場からも意見や質問を。 


 会場 臨床研修制度はもう少し時がたてば、公立病院に医師が戻ってくるのだろうか。 


 佐藤 国の見直しがあるのではないかと思うが、医学部を出たばかりの若者は自分がどこに帰属するかということに頓着しない人が増えている。難しい問題だ。 


 会場 武雄市では市民による運動も盛んになってきた。今後の活動に知恵を貸してほしい。 


 古賀 まだ十分に議論が尽くされていないので、どう議論を持っていくかが重要。 


 徳光 武雄は、次のステップで監査請求もある。条例制定から公募、決定までの期間が短すぎ、どう考えても不透明な選考。条例では、正当な価値より低額で売却してもいいと読めるし、市民の財産を不当に安く売ることになる。 


 会場 経済は都市集中といわれるが、人の生死も都会が有利。地域医療をこれ以上崩壊させず、最低でも現状を維持してほしい。 


 佐藤 病院の勤務医が減っているが、開業医は増えている。地域の開業医をどう組み合わせるかという仕組みづくりは県の仕事。そのために公立病院はどんな形態であるべきか考えたい。 


 徳光 最後に、地域医療で公立病院への期待や課題を一言ずつ。 


 古賀 最近は病院の第三者評価がよく行われるが、公立病院も現場が率先し取り組んでほしい。良質の医療サービスを提供する視点が開ける。 


 佐藤 広域を見回し、県がどんな提案ができるか、検討会を設けたい。押しつけでなく、市町に提案を聞いてもらう形で、医療圏ごとに連携体制を構築するムードづくりをしたい。 


 岳 地域医療を後退させないために何ができるか、医療現場も、行政も、県民も、それぞれの立場で考えるべき。私たちマスコミも問題提起を続けていきたい。 


 千住 看護師不足も深刻。全国で年間12・4%の看護師が現場から離職している。女性が結婚、出産、育児をする中で仕事が続けられる支援体制が必要だと思う。 


 武廣 会場の意見を聞くと、むしろ労組の方がしっかり議論し学ぼうという姿勢が遅れていると痛感した。シンポジウムの意見を参考にしたい。 


 関 公的に取り組むべき医療とは何か、論議を深めてほしい。 


 徳光 医療費抑制が第一で、そのひずみが地域医療に出ている。地方から、国に対して政策転換を迫っていかねばならない。 


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=記者の目= 


〈本音で「連携」語ろう〉 


 四月から本紙企画「医療さが」で随時紹介している県保健医療計画。そこに最多登場するキーワードは、間違いなく「連携」だ。シンポジウムでも、何度となくこの言葉が飛び交った。 

 同計画は四疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞(こうそく)、糖尿病)と六事業(救急、災害、へき地、周産期、小児、在宅)が柱となっているが、まさに全編にわたって「連携」のオンパレード。 

 地域医療が直面する喫緊の課題に対し、「それは何とか連携でカバーします」と言っているが、具体的な形が見えてこないだけに、この耳障りのいいキーワードをかえって空々しく感じてしまう。これから公立病院改革で進められる運営効率化も、こうした連携を前提に乗り切ろうという、国の誘導意図も見え隠れする。 

 確かに、周産期や小児科の医師不足、救急医療体制の後退など、もはや連携なしには体制維持が難しい課題も多い。だったら本腰を入れて、話し合う時期だ。おそらく県や自治体、地元医師会を中心に具体的議論を進めるのだろうが、まだ本気が伝わってこないことがもどかしい。(岳 英樹)