公立病院改革セミナー講演要旨(高知市)』(下)「絵に描いたもちにならない改革プラン策定のために」 長隆氏(総務省公立病院改革懇談会座長)  独立法人化が最後の道  医療センター 経営見直しを


『公立病院改革セミナー講演要旨(高知市)』(下)「絵に描いたもちにならない改革プラン策定のために」 長隆氏(総務省公立病院改革懇談会座長)  独立法人化が最後の道  医療センター 経営見直しを 
尚『公立病院改革セミナー講演要旨(高知市)』(上)は→こちら  
                  
2008.07.18高知新聞   
  

 今回の総務省の公立病院改革ガイドラインは経営効率化、再編・ネットワーク化、経営形態の見直しが三本柱。世間では(三年以内の経常黒字化など)数値目標ばかりがクローズアップされ、「経済最優先の改革」という批判もあるが、決してそうではない。医療の質を高め、医師を確保するにはどうすればいいか。改革を「絵に描いたもち」にしない具体例を紹介したい。 

 佐賀県では今年六月、県内に十ある自治体病院の再編・ネットワーク化に関する検討会が設置され、統廃合案を策定する方針を確認した。富山県の氷見市民病院は昨年、富山大の医師引き揚げで崩壊状態になったが、私が委員長を務めた経営改革委員会の答申に基づき、今年四月には金沢医大を指定管理者として公設民営化。収支均衡を達成し、医療の質も確保できた。 

 千葉県館山市の医師会立病院である安房地域医療センターも千葉大の医師引き揚げで昨年秋に破たん。公募により、亀田総合病院という大規模病院が引き受けてくれ、わずか三-四カ月で二次救急医療が復活し、小児科もスタート。収支も均衡し、毎年二億円を超える赤字を出していた病院が半年で黒字化できた。 

 こうした事例は、多くの都道府県で医師会や病院団体の合意なく計画だけをぶち上げて計画倒れに終わることへの警鐘になるのではないか。三年以内の経常黒字化は無理だと言う人もいるが、改革をやる気がないと言わざるを得ない。 

  ▼PFI中止は歓迎 

 私は滋賀県の近江八幡市立総合医療センターの「あり方検討委員会」の委員長も務めた。旧病院時代は税金投入もなく、自治体立優良病院として自治大臣賞も受けたほど。それが病院PFI(民間の資金・ノウハウを活用した病院整備・運営手法)を導入した途端に収支が悪化し、今年三月には八億円を一時借り入れしなければならない事態に陥った。 

 検討委として一月に提言をまとめたが、PFI契約を解除して(医療周辺業務を一括受託しているPFI事業者への)ペナルティーが十億掛かるのなら払えばいいじゃないかというのが私の意見。九十九億円の金利収入を上げた者は誰かを裁判で明らかにした上で、十億円の損害賠償支払いについて市民の判断を仰いではどうかとまで考えている。 

 今回の改革ガイドラインでもPFIについて厳しく、否定的な意見を書かせてもらっているので、今、全国のPFI計画が相次いで中止されていることは歓迎したい。 

  ▼交付税手厚く 

 自治体病院の収支を三年以内に均衡させる手段として総務省が示したのは、非公務員型の地方独立行政法人にするということ。自治体病院を救う最後の道だと私は言いたい。 

 独法化しても交付税が減らされるわけではなく、経営形態を変更するよう努力した病院には交付税措置を手厚くするだろう。それは今年六月に総務省が示した財政支援措置を見ても明らか。ガイドラインでは病床利用率が三年連続で70%未満の病院は病床を削減するか、診療所化するという厳しい方向性を示しており、減った病床分の交付税を努力した所に回す-交付税措置があれば雇用も確保していけると考えている。 

 高知医療センターの場合、意思決定が遅く、改革がろくに進まないことが多い一部事務組合(県・高知市病院企業団)を解散し、独法化するのが経営の根幹から見てもよろしい。独法化した上で、PFI問題を協議するのがベストの選択だろう。 

 この独法化は評判が良く、ほとんどの公立病院は独法化に収斂(しゅうれん)されていくと思う。高知医療センターは経営形態の見直しに速やかに取り組むべきだ。議会も問題を真剣にとらえ、改革ガイドラインと財政支援措置を勉強してほしい。 

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 おさ・たかし 早稲田大卒。公認会計士。総務省公立病院改革懇談会座長のほか、同省地方公営企業経営アドバイザー、全日本病院協会参与など。