焼津市立総合病院の夜間当直は外科と内科、小児科の医師計三人が翌日午前八時半まで診察に当たる。満足に睡眠も取れないまま、翌日の勤務に就くこともあるという。しかし入院が必要な患者はそのうちわずか一割程度だ。・・

          
『焼津市立総合病院の夜間当直は外科と内科、小児科の医師計三人が翌日午前八時半まで診察に当たる。満足に睡眠も取れないまま、翌日の勤務に就くこともあるという。しかし入院が必要な患者はそのうちわずか一割程度だ。・・同病院は四月から、緊急性の低い患者が時間外診療を受けた場合、診療費に上乗せする「時間外加算」に保険を適用しないことにした。緊急性が認められなければ、患者は診療代(会社員は三割負担)に加え、これまで七割が保険料で賄われていた時間外加算(時間帯によって六百五十円-四千八百円)が全額自己負担となる。 
 この結果、導入から三カ月で時間外の患者数は前年比で36%も減少した。』 
    

 ニュースを問う 藤川大樹 (焼津通信部) コンビニ受診で疲弊する医師 救急医療守るのは住民たち 「入院必要」約1割 時間外は自己負担 
2008.07.13中日新聞   
  

 いま、地域の救急医療体制が崩壊の危機にある。コンビニ店に行くような感覚で、夜間や休日の時間外外来を利用する軽症患者が後を絶たず、医師たちが疲弊しているためだ。静岡県内の病院では、時間外受診を減らすため、軽症患者から診療費に上乗せする「時間外加算」を実費徴収するところが出てきた。患者側も「地域医療を守る」という意識を持つことが大切だ。 

 三月下旬の焼津市立総合病院。午後五時十五分から夜間当直が始まると、次から次へと患者が訪れた。心肺停止や交通事故による大けがなど、一刻を争うような重篤の症状とは限らない。 

 「三番の診察室までお願いします」 

 数人の患者が待ち合わせる廊下にアナウンスが響くと、作業着姿の男性が診察室に消えた。数分後、腕をまくって出てきた男性は「持病があって定期的に注射しなきゃいけないんですよ。夜は比較的すいているし」と口にした。 

 病院によると、ほかにも安易な利用が多い。救急車で来院して「子どもが指先を少し切ってけがをした」。急ぎではないのに「薬が減ってきたから処方してほしい」「数日前から腹が痛くて」。 

 救急室長を務める富田守医師(49)は「何日も前から症状があるのになぜ昼間に来ないのか、と尋ねると怒り出す患者もいます」と話した。 

 同病院の夜間当直は外科と内科、小児科の医師計三人が翌日午前八時半まで診察に当たる。満足に睡眠も取れないまま、翌日の勤務に就くこともあるという。しかし入院が必要な患者はそのうちわずか一割程度だ。 

 「軽症患者の対応に追われると、中核病院が担うべき緊急患者に十分対応できなくなる恐れがある」と太田信隆院長は言う。 

 やむを得ず、同病院は四月から、緊急性の低い患者が時間外診療を受けた場合、診療費に上乗せする「時間外加算」に保険を適用しないことにした。緊急性が認められなければ、患者は診療代(会社員は三割負担)に加え、これまで七割が保険料で賄われていた時間外加算(時間帯によって六百五十円-四千八百円)が全額自己負担となる。 

 この結果、導入から三カ月で時間外の患者数は前年比で36%も減少した。富田医師は「循環器科の休診が重なったことも多少影響していると思うが、大幅に減っているのは確か。医師側にも空き時間ができ、病棟を見に行ったり、食事を取ったりすることができるようになった」と効果を実感している。 

 この動きは近隣市にも広がり、静岡県中部の志太榛原地域にあるほかの三公立病院(島田市民、藤枝市立総合、榛原総合)も順次、取り入れた。 

 だが、患者にとっては実質的な「値上げ」になるため、トラブルも懸念される。 

 焼津市立総合病院では、トラブルを未然に防ごうと、患者からの問い合わせがあった場合、看護師が電話で症状を聞き、簡単なトリアージを実施。軽症患者には、一次救急医療を担う近隣の志太榛原救急医療センターや当番医で受診するよう勧めている。 

 それでも窓口で時間外加算を告げられ、受診せずに帰っていくケースは月に四十-五十件に上る。今のところ大きな問題は起きていないが、受診後に「こんなに高いのか」と不満を口にする患者は少なくないという。 

 医師たちには、「本当は病院を頼ってきてくれた患者全員を診てあげたい」という気持ちも当然ある。同時に、患者にも医療現場を取り巻く過酷な状況を知ってほしいというのが心底からの願いなのだ。 

 兵庫県立柏原(かいばら)病院で、休止の危機にあった小児科を守ろうと母親たちが立ち上がり、「コンビニ受診を控えよう」と訴え、存続につなげた。ここに地域医療を守るヒントがある。病院に要求や不満を投げ付けるだけでなく、私たちも「今、何ができるか」を考えていかなければならない。