数値目標を掲げることで、医師、職員に経営感覚が生まれた。旧志津川、歌津両町の合併で一部事務組合運営から町直営になったことも、身軽で主体的な病院経営を可能にした。



『 数値目標を掲げることで、医師、職員に経営感覚が生まれた。旧志津川、歌津両町の合併で一部事務組合運営から町直営になったことも、身軽で主体的な病院経営を可能にした。』 2008.06.29 河北新報  


足報ワイド/宮城・公立志津川病院が不良債務解消/住民理解、流出防ぐ鍵に常勤医8人に増加、収益向上 

 ピーク時の1994年度には10億円を超えた公立志津川病院(南三陸町志津川)の不良債務が、2007年度決算で全額解消される見通しだ。仮決算では約800万円の内部留保も見込まれる。自治体病院の経営が厳しさを増す中、医業収益を向上させ、不良債務を解消できた要因は何だったのだろうか。 

 「医者が居付いたことが大きい」。院長職務代理兼副院長の鈴木隆医師(55)=整形外科=は、こう話す。「人(医者)がいれば、救急対応や午後診療もできるし、在宅医療にも手を広げられる。医業収益は向上する」。多くの地方病院が医師不足に悩む中で、簡単なことではない。 

 一時は4人にまで減った常勤医師は現在、内科に4人、外科、整形外科、総合診療科、歯科口腔(こうくう)外科に各1人の計8人。独自のインターネット公募や町当局と一緒に進めた大学への地道な働き掛けが結実した。 

 06年9月に、この体制が整うと入院、外来とも増加に転じる。07年度は前年度に比べ、入院が636人、外来が1503人それぞれ増加。医業収益は仮決算で13億3600万円と前年度を7000万円上回った。 

 勧奨退職や期末手当の不支給、特殊勤務手当の廃止など厳しい自主健全化策を進めてきた志津川病院。医師の一定の充足は、病院経営を「削る」から「伸ばす」にシフトさせた。 

 数値目標を掲げることで、医師、職員に経営感覚が生まれた。旧志津川、歌津両町の合併で一部事務組合運営から町直営になったことも、身軽で主体的な病院経営を可能にした。 

 05年に前院長が退職して以来、病院を辞めた医師はいない。現場のトップに立つ鈴木医師は「医者が不満を持って辞めていくという事態を防ぐのがわたしの役目。それが持続的な医師確保につながる」と力を込める。現行規模の維持が病院経営の生命線という。 

 「医者は今やサービス業」との嘆きが、医師から聞かれるようになって久しい。患者の求めに応じて当たり前、少しでも落ち度があれば、突き上げられる。「来てやったのに、よそに回された」。患者のそんな声は疲れた体に追い打ちを掛け、不満も生む。 

 医師のやる気を持続させるためにも、住民にもっと病院の現状を知ってもらうことが必要だ。「地域に病院があることの大切さをもう一度考えてほしい」と鈴木医師。その声は、医師不足に悩む県内のほかの地域にも向けられている。(志津川支局・山形泰史)